『中央公論』「時評2005」原稿・#4
■ 雪斎が幼少の頃に見たテレビ画面の光景で忘れられないものがある。それは、一面の雪が積もっていた林に囲まれた一軒の綺麗な家を巨大な鉄球で壊しているというものであった。「雪」「綺麗な家」「鉄球」と来れば、ピーンと来る人々もいるであろう。それは、「連合赤軍あさま山荘事件」を伝える報道であった。
■ 雪斎が幼少の頃に見たテレビ画面の光景で忘れられないものがある。それは、一面の雪が積もっていた林に囲まれた一軒の綺麗な家を巨大な鉄球で壊しているというものであった。「雪」「綺麗な家」「鉄球」と来れば、ピーンと来る人々もいるであろう。それは、「連合赤軍あさま山荘事件」を伝える報道であった。
■ これからの数日、雑誌『論座』に寄稿する原稿を仕上げる手前、当ブログへのエントリー執筆を中断する。10日頃に再開するけれども、中断前に「論壇」の意味について少し記しておくことにしよう。
■ 昨日の東京は、雪が降った。札幌にいた頃、朝方の横殴りの雪が降っているのを目にするたび、「また、雪かよ…」とうんざりしたものであるけれども、今日の雪には、「おおっ、雪だ」と快哉を叫んでしまった。ところで、雪に因んだ歌で有名なのは、『雪山讃歌』(西堀栄三郎作詞・アメリカ民謡)であろう。
雪よ岩よわれらが宿り
おれたちゃ町には住めないからに
おれたちゃ町には住めないからに
シールはずしてパイプの煙
輝く尾根に春風そよぐ
輝く尾根に春風そよぐ
けむい小屋でも黄金(こがね)の御殿
早く行こうよ谷間の小屋へ
早く行こうよ谷間の小屋へ
雪斎は色々な映画を観てきた。大概の日本人は、2月26日という日付を見れば、「2・26事件」を連想するだろう。篠田正浩監督作品『スパイ・ゾルゲ』でも、「2・26事件」の一日は描かれている。石原良純さん演ずる決起将校が朝日新聞に乱入し、「奸賊、朝日新聞を討つ」と叫んだシーンには、雪斎は、父君である石原慎太郎都知事の顔を思い浮かべながら、苦笑してしまった。しかし、「2・26事件」を扱った映画で忘れられないのが、森谷司郎監督作品『動乱』(出演・高倉健&吉永小百合/東映/1980)年)である。
■ 昨日夕刻、外務省で研究会に加わる。参集したのは、雪斎の他に、東京大学のT先生とK先生、全国紙のY記者、外務省からT審議官、Ⅰ政策調整官などの方々である。この顔触れからすると、雪斎の「軽輩」ぶりが余計に目立つような気がするけれども、何事も「修行」である。
■ 近年、「セレブ」という言葉を、頻繁に耳にしている。一般的には、「セレブな奥様の優雅な生活」というような言葉で使われる。女性誌や民放のワイドショーなどは、そうした「セレブな女性」を取り上げていたりする。ただし、そうした女性が「人間として立派な女性」であるかは、別の話である。
「邦に道あるに、貧しくして且つ賤しきは恥なり。邦に道なきに、富みて且つ貴きは恥なり」。
『論語』(巻第四・泰伯第八)には、このような一節がある。一昨日の当ブログでも言及した渋澤青淵翁の書『論語と算盤』にも、この一節は紹介されている。雪斎は、このところ「フジ・ライブドア」戦争を扱ったエントリーを書いているけれども、それは、経済社会の有り様もまた、公共政策の重要な一テーマであるからに他ならない。
雪斎は、ホリエモンさんにおける「政治的な賢明さの欠落」には率直に耐え難いものを感じてはいるけれども、ホリエモンさんに類する若手の人々が経済社会の地平を切り拓き、大きな資産を築こうと目指すのは、大いに奨励されるべきであると考えている。
■ 雪斎は、政治学徒であるけれども、大学院修了後の一時期、「会社専務取締役」の肩書を持っていたことがある。しかしながら、雪斎は、その年の秋、細川護煕連立内閣が登場したときに、「血が沸き立つ想い」を抑えられず、永田町に飛び込んだ。その当時の雪斎の相棒(現在の雪斎の経済・財政問題指南)は、「お前には、永田町が一番、似合っているよな…」と送り出してくれた。だから、雪斎は、純然たるアカデミズムの徒ではない。雪斎は、「政治の現場」と「ヴェンチャー・ビジネスの雰囲気」を体験するという道草食いの日々を送った人物である。
雪斎は、ライブドアの堀江貴文氏、即ちホリエモンさんには、悪意を持ってはいない。というのも、「ビジネスの世界で成功したい」という願望は、たとえ一瞬であったとしても、雪斎も抱いていたからである。ただし、ホリエモンさんに関して残念に思うのは、彼がたとえば渋沢青淵(栄一)の著した『論語と算盤』のような書を真面目に読んでいたようには見えないということである。
■ ライブドアのニッポン放送株買収に際して、実際の資金を提供したのは、リーマン・ブラザーズという外資系証券会社であったことが、至る所で伝えられるようになっている。
ところで、ニコロ・マキアヴェッリの『君主論』には、次のような誠に興味深い記述がある。
「君主が国を守る戦力には、自国軍、傭兵軍、外国支援軍、混成軍とがある。傭兵軍および外国支援軍は役に立たず、危険である。…勝ちたくないと思う人は、せいぜい外国の支援軍を利用するとよい。外国支援軍は、傭兵軍よりも危険度が高いのである。しょせん、この兵力であれば破滅は必至であろう」。
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