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February 16, 2012

「永遠の青年」の政治

■ 今年の大河ドラマは、『平清盛』である。人気はなさそうである。清盛が権力を握った後の風景が、どのように描かれるかが、雪斎の注目点であるけれども、おそらく、そのあたりの視聴率は、低いだろうなと思う。
 日本における「龍馬人気」というのは、「判官びいき」のヴァリエーションなのであろう。「九郎判官の物語」からすれば、清盛は、「旧体制の首魁」でしない。
 考えてみれば、義経と龍馬というのは、似ているのである。
 ◇ あまり恵まれない出自
 ◇ 彗星のごとく登場、時代を動かす華々しい活躍
 ◇ 悲劇的な死
 ◇ 「永遠の若さ」が保証された存在
 逆にいえば、義経や龍馬の死の後に、「体制」を築いた頼朝、あるいは大久保利通や木戸孝允の印象は、誠によろしくない。「体制を作った人々」というのは、大久保を除けば、大概、老いて畳の上で最期を迎える。ドラマには、絶対になるまい。フィデル・カストロよりもチェ・ゲバラのほうが人気が高いのは、そうした事情であろう。
 だから、二十歳前後の青年が、龍馬に憧れるのは、自然なこおとである。ただし、四十歳も過ぎた大人が、龍馬に自分を仮託するのは、「大人のランドセル」を見せつけられているようで率直に気色悪い。

 そもそも、政治は、「成熟」を必要とする営みである。 「ここでは、もう戦士に用はなくなった。われわれが取り引きをする。老人の仕事だ」とは、デーヴィッド・リーン監督の映画『アラビアのロレンス』劇中の有名な台詞であるけれども、政治は、「老人の仕事」という側面を色濃く持つ。だが、こういうことは、『職業としての政治』にも書いている政治の「イロハのイ」である。

 ところで、昨日、橋下徹市長の「船中八策」を批判した。
 ただし、雪斎は、橋下市長のことを最初からネガティヴに観ることはない。
 左派系の人物には、「橋下嫌いが多そうであるけれども、そうした左派系の橋下批判には、あまり建設的なものはない。「ハシズム」なる批判は、「こっぱずかしい」代物である。
 税制や社会保障を除けば、彼の政策志向は、雪斎が考えているものと大分、近似している。
 外交における「日米豪同盟」 にも賛成する。
 だが、そうであればこそ、このたびの「船中八策」は、余計なネーミングをせずに、きちんと練り上げて出すべきだったと思う。こういう政策文書は、「整合性」が肝であって、それがなければ、総てがおかしなものになる。

 政治家の資質の一つは、家康の「啼くまで待とう不如帰」よろしく、「待つ」ことである。
 これは、チャーチルにもド・ゴールにも、共通する資質である。
 雪斎が橋下市長の同じ立場ならば、次のようなことを考える。十年ぐらい「待つこと」に徹する。その十年の中で、次のようなことを手掛けようとするであろう。
 ① 「風」に左右されない政治基盤を築く。「期待」よりも「実績に」よる支持に転換する。
 ② 最低でも関西圏での「大阪維新の会」の圧倒的な地位を確立させる。
   行く行くは、ドイツ・バイエルン州におけるCSU(キリスト教社会同盟)のようなポジションを取る。
 ③ その一方で、「永田町」における提携の軸を確保する。CSUにとってのCDUに相当する勢力を確保する。
 ④ 関西の財界を総て味方にする。当然、関西家材の底上げという実績が必須である。
 ⑤ 同世代の「霞が関」の官僚層に味方を作る。十数年後には、彼らは、局長級になっている。
   橋下市長は稲門で学生時代の友人が「霞が関」に多くいるようには思えないから、この点での意識的な努力が要る。
   この場合、「脱藩官僚」群に近づきすぎると、具合の悪いことになる。

 橋下市長には、「政策ブレーン」ではなく、「政治の指南役」は、いないのであろうか。
 吉田茂における古島一雄のような存在である。もしL、大阪人脈でいえば、たとえば塩川正十郎元蔵相のような人物を「指南役」に据えているのならば、少しは安心できるのだが…。

 □ 「国会議員が去る案出す」既成政党と対決姿勢鮮明
       2012.2.15 07:02 (1/2ページ)[west政治]
 橋下徹大阪市長率いる地域政党「大阪維新の会」が次期衆院選の公約として策定を進める「維新版・船中八策」の骨子に対し、中央政界から批判的な受け止めが相次いだことについて、橋下氏は14日、「今の国会議員で日本を変えられなかったのだから、国会議員が去っていくような案を出さないと日本は変わらない」と反論し、既成政党との対決姿勢を鮮明にした。
 橋下氏は「首相公選制や参院廃止は、国会議員は絶対認めない。既存の仕組みでやってきた人は、船中八策は受け入れられない」と指摘。「ここまできたら、いろんなことに配慮して調整するような状況ではない。船中八策でいけるかどうかの一点で進んでいく」と述べ、他党との連携はあくまで政策での一致が条件になるとの見解を示した。

 こういうところを言っているところを見ると、「もう手遅れかもしれない…」と思う。「敵」を演出する姿勢は、小泉純一郎元総理の真似かもしれないけれども、小泉元総理は、「抵抗勢力も協力勢力だ」と煙に巻く老獪さを発揮し、実際には党内にも官僚にも「敵」を決定的に作る振る舞いを避けた。橋下市長は、「敵」を不用意に作っている感がある。この先、どうするつもりであろうか。

 二日、へヴィーなエントリーを書いてしまった。雪斎には、ツィッターは合わない。  


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Comments

うん、雪斎さんは言葉の一つ一つに責任を持とうとする方ですしね
ツイッターとの相性は最悪に近いんじゃないでしょうか

Posted by: 村好 | February 16, 2012 at 08:25 PM

喉に刺さった骨。

府政、市政に関しては多くの点で共感していたが、それでも以前から気になっていたことがあった。
それが「反自由主義」的思想。
これで一挙に興醒めた。
16日もtwitterで、「年金についても、人生うまくいって資産が形成できた人には、まずはその資産で老後を過ごしてもらう。そのためのリバースモーゲージ。年金は、資産が形成出来なかった人のまさに保険です。現役世代のフローにはなるべく課税せず、しかしお金を使うごとに消費税を課す。直接税から間接税へ。

殆んどの国民の資産形成はうまくいった為出来たのでは断じてない。しかるにその汗の結晶の資産を「人生一代限りの資産。一生涯で稼いだものは使い切る。」リバースで使い切れ、と。

この骨、どうも一番ナイーブな箇所の突き刺さったよう。

Posted by: 素浪人 | February 17, 2012 at 12:16 AM

今回のエントリーに賛同いたします。

橋下さんは出自は弁護士と芸能人で、知名度をいかして大阪府の立て直しをしようとしているかに見えました。

最初の段階はドバドバと流れる財政赤字をカットすることで、これは成功したかに見えます。これだけでも相当大変な事だったと思いますが、残念ながらそれだけでは赤字を減らしただけです

次の段階は今よりもっと難しくて、増税と金になる事業を育成して雇用と収入を作らねばなりません。

維新の会とやらが成長戦略なるものを作成していましたが、ざっとみたところまだ生煮えでこのままでは雇用は生まれそうにありませんでした

こういう事こそまともなブレーンが必要だと思っていましたが、どうもそういうメンバーが集まっているようにも見えません。

と、思っていたら大阪市長に立候補したり、怪しげな政党を作ろうとしたり、どんどん明後日の方向にむかっているようです。

アメリカの大統領ばりに、知事として辣腕をふるい名声を築いてから総理を目指すという道をたどって欲しかったのですが、このままでは東国原さんの二の舞じゃないでしょうか。

Posted by: stratosphere | February 17, 2012 at 06:06 AM

“橋下市長には、「政策ブレーン」ではなく、「政治の指南役」は、いないのであろうか。”

彼の弱点はまさにそこにあるような気がします。
(この年代の政治家の皆さんにも共通するんじゃないでしょうか)
必要以上敵を作り、自分ののどに自ら刃を向けるような行為を知らず知らずのうちにとっていることに・・・。

破壊者でいいんだったら別にかまわないんでしょうけど。

Posted by: sakura | February 20, 2012 at 08:27 AM

プライムニュースに出てた時、藤原帰一氏が、橋下氏をして「勝てない喧嘩はしない、頭の良い人だ」といってたのが印象的でした。私は次の選挙で大々的に国政進出などということはせず、せいぜい推薦を出すかどうかとか、関西圏にとどめるんじゃないかな、という印象を持ってます。今回の「船中八策」にせよ、話題になっただけ万々歳という感じじゃなかろうか。

ただ、リーダーの政治経歴という点では、たとえばフランスなどはまさに地域や官界に少しずつ根を広げていって、場合によっては何十年もかけて基盤をつくって、大統領の座を手に入れるというケースが多いですが、アメリカなんかだと、昨日までは本当に誰もしらなかったような田舎の知事が、あれよあれよと大統領有力候補になって当選してしまったりします。もちろんそれを支える政党というシステムがあるから機能している面はあるのですが、日本の場合はどうでしょうか。細川首相のような例もありますが、意外と地方からの勢力拡大という例はないですよね。このあたり、今後どうなるか、興味深く見ています。

Posted by: kky | February 24, 2012 at 02:24 AM

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