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November 10, 2011

農産品の「競争力」

■ TPP論議が最終局面である。
 雪斎は幾度でも書くけれども、自由貿易論者である。
 だから、各国とのFTAやEPAの締結が進まないのには、内心、忸怩たる思いを抱いていた。
 とはいえ、TPPの議論は、率直に「あほらしかった」と評する他はない。
 反対派は、中長期的に「勝てる産業」を養成するための構想を何ら示していない。
 だが、推進派は、短期的に、影響のショックを低減する方策を全然、示していない。
 どちらも、「論じ方」が安直なのである。
 滑稽であるのは、こぶしを振り上げて悲憤慷慨してみせるけれども、それで「何かを頑張っている」ように勘違いしている政治家が多いということである。マスターベーションに頑張っている姿を見せつけられるのは、率直に気色悪いものだといういかない。

 下の原稿は、『世界日報』に載せた原稿である。

 □  日本農産品の「競争力」の虚実
 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への参加の是非は、十一月中旬のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議までに落着すべき議論として、野田佳彦の判断を待っている。野田は、過去の言動から判断する限りは、交渉への参加に踏み切る政策志向を持っているであろうけれども、民主党内では党を二分する議論が続いている。こうした自由貿易の枠組を考える際、当然のように問われるのは、コメを初めとする日本農産品の「競争力」の扱いである。日本農産品が「世界を相手にした土俵」で闘えないというのは、自明のことのように語られているのである。
 現在、二〇一一年九月時点でコメの相対取引価格は、最も高額な新潟・魚沼産コシヒカリで玄米一俵(六〇キログラム)当たり二万二千七百円、宮城産ひとめぼれで一万五千八百円といった水準である。最も安価なのは、福島第一原発事故の影響を被った福島産コシヒカリを除けば、青森産つがるロマンで一万三千三百円という水準である。この価格水準は、国際価格の六倍という水準であり、五〇〇パーセントの高率関税によって維持されている。TPPのような枠組で国際価格に沿ったコメが流入すれば、価格という観点からのみ考える限りは、日本のコメが「世界を相手にした土俵」で闘える可能性は、率直に乏しい。それ故にこそ、コメを初めとする日本農産品の「保護」が唱えられたのである。
 しかし、「世界を相手にした土俵」が国内であるか海外であるかによって、競争の条件が変わってくる事実は、冷静に留意されるべきであろう。
 先ず、日本国内で海外農産品を迎え撃つ場合には、日本の消費者が何を選択の基準にするかを考慮に入れる必要があろう。筆者は、相当に徹底した「コメ・ナショナリスト」である。筆者は、時折、進呈される新潟産や岩手産を除けば、普段は故地である宮城産のコメしか食しない。故に、筆者には、「安いから」という理屈で外国産のコメを食しようという感覚はない。コメを含む農産品は、他の産品とは異なり、人々の健康に直接の影響を及ぼす。農産品の「安全」や「品質」は、「価格」以前に問われるべき競争力の条件である。しかも、デフレーションの最中であるとはいえ相応の豊かさを手にした大方の日本の人々が、何よりも「価格」を重視した消費行動を取るとは考えにくい。こうした事情を考え併せれば、日本農産品が日本国内市場で競争力を失うという議論は、説得性に乏しいといわねばなるまい。
 次に、日本の農産品で海外市場に斬り込む場合には、その価値を広く人々に周知させる努力が伴わなければならない。目下、たとえば中国のような新興国では、コメ、牛肉、果物といった日本の農産品は、富裕層向けに売られ好評を博している。こうした富裕層は、割高な日本農産品を手にしつつ、「安全」や「品質」を重視する趣向を満たしているのである。もし、「安全」や「品質」の水準が維持された上で、日本のコメの「価格」が下落して富裕層だけではなく庶民層にも手が届くようなものになったら、どういうことになるか。多分、日本のコメを売るための海外市場は劇的に拡大する。これは、昔日のラジオやテレビの普及の過程で起こったことと同じである。「日本の農産品を海外に普及させる」という発想は、今後の農業を展望する上では大事なものであろう。
 もっとも、コメを含む日本の農産品が「世界を相手にした土俵」で闘うだけの競争力を持つためには、次に挙げる二つの条件を満たす必要がある。第一は、前に触れた「安全」と「品質」の管理を徹底させ、その認証を厳格に行うことである。たとえばフランスのボルドー・ワインは、第一級から第五級に至る格付けが与えられ、その格付けの認証が、「安全」と「品質」の裏付けになっている。日本の農産品も、こうした認証の仕組に依りながら、その魅力を世界に伝えるべきではないか。第二は、世界中の人々に日本農産品に対する「憧れ」の感情を植え付ける努力は、意識的に続ける必要がある。富裕層に日本農産品の声望を定着させるのは無論、庶民層には、その魅力を周知させることである。たとえば農林水産省が世界中にある大使館や領事館を拠点にして日頃から「日本農産品の魅力」を伝えるというのは、一考に値しよう。
 こうした競争力の確保のための対応は、自由貿易の枠組に関わる前提である。「勝てない」という意識ぐらい、生産性に乏しいものはない。

 昨日のニュースで伝えられたところによれば、、「韓流のコメ」が入ってくるらしい。それでクッパや参鶏湯をくうならばまだしも、まともにあいてにするものではあるまい。
 「やはり、スシは、日本のコメで味わわないとね…」。
 今、世界中でスシが食されるようになっているのだから、こういう宣伝を全世界でやってっもらいたいものである。イスラム圏には、牛丼や親子丼を普及させるぐらいのことは、考えてもらいたいものである。やることは、幾らでもある。

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Comments

TPP反対派は、具体例を挙げて、「メリットが無い、デメリットに対してメリットが小さいからやめろ」と言ってるのです。
それに対して
>反対派は、中長期的に「勝てる産業」を養成するための構想を何ら示していない。
からダメだ、というのは意味不明な主張です。

損な事に対しては「それは損だ」で十分なはずです。
「損な事に反対するなら得する方法を提案せよ」とは理不尽でしょう。

それと政治はことに経済は主義でするものではありません。

Posted by:   | November 10, 2011 08:22 AM

雪斎先生に怒られることを覚悟してコメントを投稿させていだきます。

私は現在、東北~東海の農産物、北海道~東海の海産物を買わないようにしています。実は、日本の農業が誇ってきた「安全」「品質」に懸念を持っているためです。具体的には、放射性物質の家族への長期的影響(数十年単位)を懸念しています。

そのため、現状のままで安い米国や豪州産のコメが入ってきた場合には、安全・品質が許容できるのであれば、家計にもありがたい外国産を選択すると思います。

政府は、被災地を三度苦しめています。一度は震災復興の遅れ、二度は放射性物質による被曝の放置、三度は放射性物質のリスクを生産者・消費者双方に押し付けて放置していることです。

政府が、放射性物質の緩い暫定基準値と被曝限度を定めたので、私は東北~東海の農産物の安全・品質に疑問を持つようになりました。もちろん、東北であっても秋田県のように放射性物質がほとんど降下していない地域があることは、文部科学省の調査から知っています。しかし、基準値が緩く、産地や測定値が細かく記載されていないので、店頭にある農産物が安全か否かを判断できません。そのため、サブプライムローンや毒入り冷凍餃子事件のように「見えない危険は、とりあえず避ける」という選択をしています。

政府が緩い基準で出荷を認めたことにより、リスクは消費者に押し付けられ、消費者がリスクを避けようとする結果、生産者がリスクを引き受けさせられています。(スーパーの野菜棚を見ると、その傾向が読み取れます)

政府は、来年4月から暫定基準値を5倍程度厳しく(新基準)するそうです。すると、いま店頭にある農産物には、新基準では出荷不能となるものが含まれている可能性があります。ならば、消費者は、ますます見えない危険を避けるために選別を強めることになります。

民主党政権が、本当に国民の「いのちを守りたい」、「正心誠意」な政治をしたいのなら、科学的に安全で消費者が信用できる暫定基準値を早急に定めて、基準値を超える農産物・海産物は厳しく出荷停止にして生産者に十分な補償を迅速に行い、さらに農地の除染を徹底すべきでしょう。生産者が胸を張って出荷し、消費者が安心して買える環境を整えなければ、「安全」「品質」は今後も疑われることになります。

(加えて、安全を確保して原発稼働再開を早め、企業活動を活性化させて「雇用」を守り、震災復旧を早めるべきと思います。)

TPPとは間接的な関係しかありませんが、日本の農産物の「安全」「品質」が揺らいでいる現在、一日も早く信頼を回復しなければ、今後、TPPによって競争にさらされる日本の農業(特に東北~関東の農業)への影響は大きいように思います。さらに、韓流のような作為的なキャンペーンを(日本の農業にネガティブな方向で)張られた場合、その影響は甚大であると思っています。

不快に思われましたら本当に申し訳ありません、深くお詫びいたします。

Posted by: いしかわ | November 10, 2011 12:31 PM

そういや、TPPで問題になる農業って、実は主に米・小麦なんですよね。葉物野菜なんかはあからさまに非貿易財ですし、お茶なんかは輸出産業だし。農協の中でも足並みが乱れる部分もあるのかも知れません。

ところで、与太話ですが。米を小麦クラスにまで世界的に普及させて、生産量<需要量な状況を作り出してあげると、日本のお米も売れるというか、海外のお米が安価でなくなって日本に入ってこない事になるのかな。そのときには、日本で食うのに足りないくらい、輸出するようになってるかも。
そして、デフレ下で貧乏飯を食ってる人は、日本の米が食えない事を嘆いてデモをはじめるみたいな。他のことでは反応の薄い日本も、食い物の事になるとやけに本気なデモになりそうな悪寒。

Posted by: 通公認 | November 13, 2011 09:42 PM

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