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April 10, 2011

 「君の明らかなる所以の者は、兼聴すればなり。其の暗き所以の者は、偏信すればなり」。

■ 「君の明らかなる所以の者は、兼聴すればなり。其の暗き所以の者は、偏信すればなり」。
             ―『貞観政要』「君道第一」
 『貞観政要』を読み始める。
 といっても、明治書院から出ている上下二巻で九百ページ、二万円近くという代物である。
 「明君」と「」暗君」の違いは何か。
 「明君」というのは、「様々な人々の意見をちゃんと聴くことのできる君主」である。
 それは、君主自身ぼ明晰さということとと重ならない。
 「暗君」とは、「一方に偏った議論だけを信じ、他を受け付けない君主」である。
 それは、君主の知的能力云々の問題ではない。

 現在の日本の不運は、この『貞観政要』の定義における典型的な「暗君」を宰相にしているということであろう。
 とにかく、この宰相には、「自分の気に入らないこと」を避ける姿勢が目立つ。
 色々な会議を立ち上げ、色々な人々を次から次へと内閣参与に迎えるという姿勢には、「自分の気に入ったことを言ってくれる人々」を探そうという心理が働いているのではないか。
 それを「偏信」というのである。
 震災翌日あたりの段階から、菅直人の政策対応にかみついていたけれども、残念ながら、雪斎の批判は、間違っていなかったようである。『中央公論』最新号をめくったら、「政治災害」という評が目に入った。合点が行った。
 週明けで震災一ヵ月である。

 ■ ところで、昨日のエントリーの補足である。
 昔、何かに折に、「電気を使い続けたれば、原発に依存するしかないでしょう…。私も外にでて仕事をしたいので、エレベーターやエスカレーターは、これから、ばんばん、つけてもらう必要があります」と語ったら、
 「あなたのような人は、別に外を歩く必要がないでしょう…」と反応した御仁がいた。
 「『障害者は隅に引っ込んでいろ…』ということか」と怒りを覚えたが、反論するのも阿呆らしいので止めた。
 そういう御仁の類は、今でも確かにいる。
 これから、当分、こういう御仁の類が、至る処に増殖しそうである。
 「脱・原発」を唱えたければ、「何が安定した代替手段か」の見通しぐらいは、出してもらいたいものである。
 多分、「代替案」として考えられるのは、大別して三つであろう。
 ① 自然エネルギー(太陽光、風力、地熱、潮力…)
  / これで必要とされる電力供給をカヴァーできるのか。
  / 気象状態次第の「給電」は、安定度において相当に疑わしいのではないか。
 ② 火力(石油・石炭・LNG)
  / 実質上、「温室効果ガス」削減を棚上げにした選択であるけれども、それでいいのか。
  / 資源調達の点で、外部環境に相当に左右される恐れがある。
 ③ 海外からの購入
  / 他国とは具体的にどこのことか。
  / 「ニュークリア・フリー」な電気だけを融通してもらうということができるのか。
  / 「海底に送電線を敷く」コストは、どのくらいか。
  / 「火力」以上に、電力供給が他国の都合に振り回される恐れがあるけれども、それでいいのか。
 「代替案」として最もありえそうなのは、②であろうと思う。資源調達の観点では、日本国内の炭鉱も復活である。東シナ海のガス田権益も断固として守らなければなるまい。炭鉱やガス田周辺の環境も悪くなるし、「温室効果ガス」は排出されるが、背に腹は代えられまい。「脱・原発」の論理を詰めれば、そういうことになる。雪斎は、「安定した電力供給」が担保されることが大事なので、ほかの点には目をつむるが・・・・。

 
 とにもかくにも、「偏信」は、恐ろしい。

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Comments

国連が釘を刺しているので、京都議定書も25%削減の撤回も難しそうですね。環境大臣も強硬に反対しているようです。

 正直所感としてかつて戦争へひた走っていった様な空気と似ていると思います。「鬼畜米英」が「脱原発」に変わっただけの。長期的なロードマップも示せず、あるいは嘘と妄想にまみれた実現不可能なものを振りかざしているだけで、ただ「原発やめろ」と騒ぐだけ騒いでいる様は、碌な戦争計画もなく暴れて、完膚なきまでに叩きのめされたかつての日本のようです。
 日本人はリスク管理ができない、とよく欧米から言われますが、それが今回の原発事故の件でも、またその後の異様な「脱原発」ムードでも散見されるのが残念でなりません。

Posted by: 25%削減とはなんだったのか | April 10, 2011 at 11:37 AM

 遅ればせながら、教授昇任おめでとうございます。さらなるご活躍を期待しております。


 私も「脱原発」が一時の熱病に終わってくれることを願っています。電気エネルギーの生産に必要な手段は時代とともに移り変わってもよいと思いますが、現状人類に原子力は絶対に必要なものとなっていますから。

Posted by: お父ちゃん | April 10, 2011 at 03:59 PM

2万円ですか~

私は山本七平氏の「帝王学 「貞観政要」の読み方」を読みました。
明治書院の方は私には手に余るレベルです。

Posted by: ino | April 10, 2011 at 08:23 PM

①新聞を見ても全く分からなかったので、Yahoo!知恵袋に「今回の震災の政府に於ける意思決定体制を教えてください」と質問を出したら、一通だけ回答が来た。「民主党は同好会のノリでポコポコ会議を作るので誰もどこで何を決めるのか分からない。」と。諦めて質問を削除した。
毎日新聞10日付にようやく「官邸チーム乱立」で対応組織の概略が分かった。体制そのものを見れば、問題解決型の体制になっていないことは一目瞭然である。
今の状態であれば、“藩主押込め”にでもならない限り、日本の最大不幸は除去できないのだが、民主党という政党自体に自浄能力があるのか疑わしい。もはや「暗君である」事は公知の事実になりつつある、と思う。
②生活水準の向上が人類の希求であろう。それが実現できるかどうかはエネルギーの確保に係っている。「安全な原子力」を追及し、万が一の対策を徹底する。冷静・論理的に進めるだけの話であり、宗教や教条主義は徹底的に廃除すべきである。こんな言わずもがなの事まで言わなきゃならないのは、これまでの原発の推進でしっかりした議論がなされてこなかったからだが、それは今回の教訓を活かしてしっかりやる。このままでは、原子力利用まで「憲法、自衛隊、安保」と同じような迷走にならないかと危惧するが、日本人は知恵で乗越える、と信じたい。

Posted by: ノノサン | April 10, 2011 at 11:16 PM

 最近では政権が何を考え、何をしているのか、まったくニュースがなくなりました。
 自衛隊、警察、消防、各自治体、国民、米軍の動きは目覚ましいものがありますが、肝心の政権中枢が機能停止をしているように思えます。
 自ら多くの会議を立ち上げて、混乱し、統御不能になっているのであれば、組織を率いる指導者としては能力が足りないと言わざるをえません。
 プライドが高く、自分は常に正しいと信じ、自らの非を認められない人は、行き詰ると周囲に当たり散らし、しまいには自分の属する組織をも壊そうとします。
 現政権がそのような行為に出るのではないか危惧しています。

Posted by: いしかわ | April 11, 2011 at 08:03 PM

いつも勉強させていただいております。
自然エネルギーですが、地熱、潮力は論外として、風力や太陽光についても正直難しいのではないでしょうか。大規模な風力発電は低周波の問題から人家のそばに立てることができず、また落雷や台風の問題があります。太陽光については風雨、黄砂などによる発電機表面の透明度の低下が大きな問題になります。ただ今年の夏における電力不足に対しては一種の”電池”として日中の電力需要をカバーしうるのではないかと考えます。

話は変わりますが、韓の韓非、斉の孫臏、障害を持っていても活躍した人は多い。特に韓はさげすんだ韓非に師事した秦に滅ぼされた。韓鑑遠からずといったところでしょうか。

Posted by: 吉田 | April 11, 2011 at 08:55 PM

原発にシフトしたことは産油国情勢を安定させうる行使可能な軍事力、あるいは産油国情勢が不安定でも安全に輸送船舶を航行させることが可能な抑止力、これらを日本が単独で持ち得ないことと切っても切り離せないと思います。

Posted by: bb2 | April 12, 2011 at 01:48 AM

 「王様」は官僚が嫌いです。自分の部下なのに、お前たちは大バカだと平気で口にします。でも、都合が悪くなると官僚を利用しようとします。

 王様は軍隊を知りません。最近まで最高指揮官が誰かも知りませんでした。でも、災害がおこると、軍隊なのだから働けと彼らを酷使しています。食料も物資も休養もねぎらいも十分なく、彼らはもうヘトヘトです。

 王様は自分で指示するのが大好きです。でも実務には疎いので、何を指示したらいいのか分かりません。国民には家から出るなと命令しておきながら、食事も与えずしばらく放置していたこともあります。

 王様は人を集めるのが大好きです。でも、人を集めすぎてしまって、何をさせたらいいのか分からなくなって混乱しています。

 王様はパフォーマンスが大好きです。被災者を救うために決めなければならないことが山積しているのに、なぜか何度も被災地を見に行ったりします。

 王様は野党が嫌いです。国民や被災者にとって有益な案でも、野党の提案ならひとまずお断りです。でも、自分ではいい案が出せないので、こっそり採用したりします。

 王様は根回しが嫌いです。仲間になろうと話をもちかける相手が、野党の党首という難しい立場であることなど考えず、電話一本で済まそうとして(わざと?)失敗します。

 王様は増税をしようとしています。国民は必要だと思っていても、何となく乗り気ではありません。王様はこれまで失敗ばかりでしたし、王様が変わるのも遠くないように思えるからです。

 自身は、指導者として十分にその責をはたしていると思っているのかもしれません。しかし、自分より有能な部下を用いることができず、敵ばかり作って味方を増やせず、知見が十分ないものまで自分で仕切ろうとして失敗する姿は、私には「裸の王様」に見えてなりません。痛いです。

Posted by: いしかわ | April 20, 2011 at 07:14 PM

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