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April 19, 2011

「世良周蔵」の再来

■ 朝日新聞「ウェブ論座」に下記の原稿を寄せた。
 ● .「白河以北一山百文」の地の「復興」とは?
 だが、自分の原稿よりも、朝日新聞の小出清人記者が書いた記事が目を引く。
 ● 東北はまたも「中央」の踏み台か――維新以来の怨念の歴史
 一部を引用する。

  「そうか、あいつは敵か。そうか……」
 福島県出身の友人が、酒を飲んだときに小さく漏らすようにいった。冗談のようでもあり、半ば本気のようでもあった。
 菅直人総理は、選挙区は東京だが、生まれ育ったのは山口県である。高2の時に父親の転勤で東京に転居したとしている。もともと「長州の人」なのである。
 福島県、つまりざっくりいって江戸時代の会津藩は、幕末から維新の転換期、大変な目に遭わされた。長州と薩摩を中核とする官軍は、徳川慶喜の降伏(大政奉還)後も責め手を緩めず、江戸を火の海にはしなかったものの、幕府側に立つ諸藩を「賊軍」と決めつけ倒滅戦に動いた。その最大の犠牲者が会津藩だった。会津の苦難は白虎隊をはじめ多くの書物に記されている。
 もう150年前のことじゃないかというなかれ。やられた側はその時の恨みを忘れない。先祖の苦難は親から子に伝えられ、いや、教えられなくても、自然と意識の下に刻印されるのだ。

 記事に紹介された「奥州の怨念」を雪斎は理屈の上では肯定しない。
 国民の中に「断絶」を作るような議論を雪斎は悦ばない。
 だが、感情の上では、雪斎は、この「奥州の怨念」のことをヴィヴィッドに理解する。

 現在の「白河以北」において、菅直人の評判は、世良周蔵に類するものかもしれない。
 世良は、幕末の長州藩士で、官軍参謀だった。
 江戸城無血開城後、何とか穏便に済ませようとした奥州諸藩に高圧的に接し、「奥羽皆敵」という密書を官軍本陣に送った。
 このことが奥州諸藩を激高させ、彼は、福島宿で遊女と同衾中ところを仙台・福島両藩士に捕縛され、斬首された。
 後日、官軍は、世良の斬殺に対する報復を口実に、奥州に攻め込んだ。

 そして、此度は、菅直人の「無能」が、「白河以北」の地を痛めつけるわけである。
 菅直人は、自分の内閣を「奇兵隊内閣」と呼んでいた。
 なるほど、そういう感覚である。
 それならば、「奥州の怨念」などは、本当のところは判るまい。
 現在のように、拙劣な対応が続くと、それ自体が「意図せざる悪意」のように映ってくる。

 「復興」の文脈で何よりも先に出てきた話が、何故、「財源」論なのか。
 そういう議論は、重要なことであるとはいえ、「先に出てくる話」ではない。
 「復興のビジョン」が先にあって、それに応じた費用が出てきて、そのあとに出てくるのが、「財源」論なのではないか。

 前に触れた記事で、小出記者は、「あいつは敵か…」という奥州人の菅直人に対する慨嘆を「冗談のようでもあり、半ば本気のようでもあった」と評した。
 菅直人と世良周蔵を並べた雪斎のエントリーで示したのも、 「冗談のようでもあり半ば本気のようでもある」議論である。

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Comments

菅直人政権は、西日本出身者で固められているので、東日本にそれほど興味が無く、今回の大震災で動きが遅いのでは無いかと思って、閣僚の出身地・選挙地盤を調べたことがあります。
すると、西日本と東日本がほぼ半々で、差はありませんでした。
ただ、西日本の人間は、東日本を差別する意識は平然とあるのは事実でしょう。かつて、サントリーの佐治某が、東北熊襲発言で不買運動を起こされたように、根っこは深いんですよ。
因みに、栃木県以北では基本的に部落問題は存在していないと思います。差別が無いだけ、良い土地がらなんじゃ無いでしょうか。
因みに私は道産子ですが、開拓の頃、北海道で戸籍を作り直せば、部落民でも平民になれたと聞いたことがあります。

Posted by: ぐりぐりももんが | April 19, 2011 at 12:41 PM

もう何かと言えば民主党ですね。

そもそも「構造改革」「増税なき再生再建」だの言って何かと言えば「財源」と言ってきたのは自民党政権でしょう。ひたすら辞任しろと騒ぎたて、果ては菅のせいで震災の被害は拡大しただの根拠のない発言ばかり。

谷垣さんならできましたか?麻生さんならできましたた?福田さんならできましたか?安倍さんなら出来ましたか?

むろん答えはNOです。

こんな災害に、しかも原発事故まで絡んでいる人類史に残る災害を電光石火で対応できる人間などいませんよ。海外の批判とてCO2対策で原発を推し進められた事がひっくり返りそうなのであわてて「悪いのは日本の管理で、原発は危険ではない」と言っているにすぎない。

べつに菅さんが好きなわけでも何でもありませんよ。しかし原発の開発も強引に推し進めてきた果てに、事故が起きたら途端に「民主党が・・・」と朝から晩まで言い続けるしかない谷垣自民党を観てますます失望させられます。

Posted by: ペルゼウス | April 19, 2011 at 04:06 PM

冗談でも、‘世良周蔵’は挙げて欲しくありません。私は、母が実家が米沢(米沢生まれ)で、曾祖父母まで遡ると5/8は山形出身です。
 私は道産子ですし、今更薩長土肥などと申しません。また安倍元総理再登場を熱望しますが、総理には嫌悪感が高まるのみです。それでも、彼は仮にも我々愚民が政権をとらせた与党党首、総理と我慢しているところに、テロを想起する叙述は再考願います。

Posted by: アル中やもめ | April 19, 2011 at 09:27 PM

「復興構想会議」で雪斎さんは

>菅直人内閣発足以降、このメンバー選択には、久々に得心が行った。たまには、肯定的なことも言わせてもらいたいと思っていたところである。

と書かれましたが、その議長の第一声が“財源=税金”であった事に私もとてつもない違和感を覚えました。しかもどう見ても、メンバーに経済学者はいない。慶応の清家さんは経済だが労働経済学専攻で財政ではない。議論もなしに政治学者が税の論議をするか!
新聞情報では、下部の部会に財務省出身のが1名いるとのこと。メンバー選定の意図がミエミエ。
しかも、会議はどういう位置づけなのか。その答申はどう扱われるのかという事になるとはなはだ心もとない。会議が答申した内容の実行は、結局受け取り手の裁量に任される。実行が担保されない会議とはなんなのでしょう?

最高指揮官というのは、様々な資質が要求されるが突き詰めてしまえば、マッキャベリの通り、可愛がられるか怖がられるかのどちからです。それができる本質は「人の気持ち」が分かるという事に尽きるのではないでしょうか。
もう充分に見定めはできたと思います。

非常時にトップの交代はないという意見もありますが、八甲田山の2つの雪中行軍隊を比較して、非常時に愚劣なトップでは、全滅は免れない。
ときは今・・・内閣不信任案ではないでしょうか

Posted by: ノノサン | April 19, 2011 at 10:39 PM

原発事故や東京都知事が無神経に震災を「天罰」にたとえたことなど、会津と奥州に"ばちかぶらせ"て江戸の平和が守られたかつての歴史が繰り返しているようにすら見えます。

Posted by: うおずみ | April 21, 2011 at 12:25 PM

初めまして。
パラオ共和国よりお便り申し上げます.
先生が、執筆された新南洋戦略論を拝読致しました。 私は、南・西太平洋それぞれの地域で20余年、過ごしております。 平和で静かな島々で見てきたのは、中国の台頭による外交情勢の変化です。この地域での日本のプレゼンスは、段々と薄くなりつつあり、日本の政治家、外務省は、もちろん国民が、目にすることのないところで、老獪な外交手段による中国の覇権が、着実に広がりつつあります。この状況が深刻化するのを回避し、この海域、日本にとってのシーレーンを護持していくためには、先生の新南洋戦略論に基づく政官民による行動が絶対に必要です。今、本当にそれが求められています。

Posted by: Takahiro Oitate | April 22, 2011 at 01:47 PM

ある編集者の紹介で、今日先生のブログをのぞきました。もしよろしければ、私のブログを覗いてください。出来ましたら、メールをいただければ幸いです。

Posted by: 考悟堂 画餅 | May 04, 2011 at 07:26 PM

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