「政官関係」の機微を心得ぬ人々
■ 雪斎が仕えた愛知和男代議士の先代は、愛知揆一である。
吉田茂の「書簡集」や佐藤栄作の「日記」には相当な頻度で名前が出てくる。
「先代は凄い方だった…」とあらためておもうl。
その愛知が最も精力的だったのが、佐藤栄作内閣の外務大臣だったころである。
当時、警備の前線指揮官だったのが、佐々淳行さんである。
次のようなエピソードがある。
その日は、料亭で朝食をとっていた。
佐々さんも、警備の打ち合わせの都合のためにか、同席していた。
食事中、緊急事態が発生して、佐々さんが中座して、前線にでなければならくなった。
愛知は、料亭の女将さんに、「至急、握り飯を作って、(佐々さんに)持たせるように…」と指示した。
ところが、女将さんが事情を察知できずに、「まだまだ先がありますので…」と応じてしまった。
愛知は、「これから、前線に出る人を、空きっ腹のままにできるか」といって、女将さんを叱りつけた。
佐々さんは、愛知の剣幕に慌てて 愛知に礼を言いつつ、卓の上にあった茶碗を急いでかき込んで、外に出たそうである。
雪斎は、このエピソードを佐々さんから直接に聞いた。
愛知の心遣いが、佐々さんには嬉しかったようである。
「政官関係」といっても、「人間」と「人間」の関係である。
政治家の方も、「諸君らの努力は絶対に無駄にしない…」という姿勢を示す必要がある。
片や、官僚の方は、「この方向で行くのなら…」と政治家の判断に信頼を寄せる必要がある。
今、「尖閣ビデオ」のリークの話で盛り上がっているけれども、問われるべきことの本質は、こうした「人間関係」が出来上がっているのかということである。
政治家は、官僚の仕事を尊重していない。
自分の「思い付きを通すことが、「政治主導」の趣旨だと勘違いしている。
多分に海保が危険を冒して撮った「情報」も生かそうとしない、
官僚は、政治家の仕事に信頼を置いていない。
だから、情報リークという話が出てくる、
これが現在の「尖閣ビデオ」に絡む「政官関係」の風景であろう。
民主党の政権運営からは、往時の愛知と佐々さんが紡いだような「人間関係」の機微が伝わってこない。
「倒閣テロ」、「クーデター」、果ては原口一博によると、「国家への反逆」だそうである。
彼らは、どこまで情けない言葉遣いをして、自分を貶めれば気が済むのであろうか。
「一度、自分の顔を鏡に映して、じっと見てはいかがかな…」。
雪斎は、そう思う。
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Comments
大変勉強になりました、ありがとうございました。
ふと、何かの本で読んだ、人を率いる者に必要な資質は「智・仁・勇」という言葉が頭に浮かびました。智なく、仁なく、蛮勇のみをふるう今の政権では誰もついてこないですね。
仮に、映像をリークしたのが海上保安庁の職員であれば、その職員や上司に対して組織上何らかの処分をすることにはなります。しかし、将に将たるはずの首相や大臣が兵にすら軽んじられる現状は、末期的としか言いようがありません。
Posted by: いしかわ | November 07, 2010 07:12 PM
そのとおりだと思います。
民主党に代わってから、方針が定まらない政権にサジを投げたのでしょうか・・財務省では予算編成を行う気というか、本気度が数年前に比較し、恐ろしく低下しているように感じました。
Posted by: SAKAKI | November 07, 2010 09:03 PM
どういう連想かと思われそうですが、塩野七生女史の「神の代理人」の中にあった法皇が新教徒達の危うさを語る所を思い出しました。後はアレッサンドロ六世とサヴォナローラの話を。人間が日々誘惑と戦いつつも負けてしまう事を、己もそうであるが故に許し認めるルネサンス人達の視線を。人の機微を理解しない、というかどうもあの方達は理解したくないのではとも思えますが? そんなのをトップに戴く羽目になった官僚達にちょっと同情したくなってきました。頭が悪い上に勘違いした学級委員の群れに見えてきます。少なくともまともな大人に見えない。
> 「一度、自分の顔を鏡に映して、じっと見てはいかがかな…」。
>雪斎は、そう思う。
これは無理だと思います。自省する能力を欠いているのではと思える面々ばかりですから。自省するためには品性と知性が必要です。20歳過ぎても共産主義にかぶれない程度の。
Posted by: almanos | November 08, 2010 09:48 AM