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October 10, 2010

劉曉波氏の「位置」

■ 中国共産党政府の「悪手」が生んだ結果であろうか。
 

□ 劉氏の平和賞受賞を歓迎=「中国の発展に貢献」―国連人権弁務官
    時事通信 10月9日(土)1時0分配信
 【ジュネーブ時事】ピレイ国連人権高等弁務官は8日、中国の民主活動家、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞が決まったことについて、「中国での人権擁護家の重要な役割が認識されたことを歓迎する」と評価、同氏の活動の成果が中国の前進に貢献するとのコメントを発表した。 

 実は、中国政府が賞選考に際して圧力をかけたという報が流れた時、雪斎は、「これは逆効果だ」と思った。「尖閣」以来、、中国は、「粗暴な列強」と認識されているところがあるので、中国も、その「粗暴」ぶりにものを言わせて、選考委員会を屈服させようとしたところが、上手くいかなかったわけである。尖閣で日本を屈服させたと思いこんで、次の瞬間には、深い穴に落ちたわけである。なるほど、世の中は、上手く出来ている。
 その後も、情報遮断などというを平気でやっている。
 ますます、「中国異質論」は沸騰するであろう。授賞式にむけて、どういう動きがあるかが見物であろう。
 

□ <ノーベル平和賞>「反体制派」過去に多数受賞
           毎日新聞 10月9日(土)0時57分配信
 歴代のノーベル平和賞受賞者には、国家権力や政治体制に異議を唱え、抵抗運動を繰り広げてきた「反体制派」の系譜が存在する。
 1960年には、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)政策に抵抗したルツーリ・アフリカ民族会議(ANC)議長が受賞。ソ連(当時)の物理学者で民主化を求めたサハロフ氏(75年)▽ポーランドの自主管理労組「連帯」を率い、政府に抵抗したワレサ氏(83年)▽チベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世(89年)▽ミャンマーの民主化運動指導者、アウンサンスーチー氏(91年)--らが有名だ。
 ルツーリ氏はアパルトヘイト終結前に事故で死亡。サハロフ氏は流刑処分などに遭ったが、ゴルバチョフ政権によって処分解除となった。ワレサ氏は90年に大統領に就任。ダライ・ラマはチベットの現状を世界にアピールし続け、アウンサンスーチー氏はミャンマー軍事政権によって自宅軟禁されている。【服部正法】
 
 この記事を観れば、現在の中国共産党政府は、昔日のソヴィエト共産主義体制、ポーランド共産主義体制、ミャンマー軍事政権、アパルトヘイトを続けた南アフリカ政府と同じ程度の代物だと認定されたということである。此度の劉曉波の受賞には、そうした意味がある。こうした過去の反体制派活動家の先々を考えれば、劉曉波は、もし共産党体制が動揺し崩壊するようなことがあれば、その国際的知名度によって、「21世紀の孫文」のように語られるのであろう。
 前世紀の日本には、孫文を支援した宮崎滔天や梅屋庄吉のように、中国の「体制変革」に手を貸した壮士はいたのであるけれども、現在の日本には、そうした人物はいるのか。
 ところで、日本政府は、どうしているのか。
 
□ 「人権について評価」=首相、劉氏の受賞に   
       時事通信 10月8日(金)20時54分配信
 菅直人首相は8日夜、中国の民主活動家、劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞したことについて、首相官邸で記者団に「普遍的価値である人権についてノーベル賞委員会が評価したと受け止めている」との認識を示した。
 記者団が「中国の人権状況にどのような変化を期待するか」と質問したのに対しては、「ノーベル賞委員会がそういう評価をして、そういうメッセージを込めて賞を出したわけだから、そのことをしっかりと受け止めておきたい」と述べ、中国国内での人権状況の改善に期待を示した。
 
 日本政府も、もう少し明瞭に劉曉波に対し祝意を表明し、その釈放を中国共産党政府に要求するくらいのメッセージを出したほうがよかったのではないか。こういうところで煮え切らない態度をとると、日本も、人権認識において結局、中国と同じ程度の国家であるという印象を広めかねない。菅直人も仙谷由人も、「反体制」を標榜した時代があるのならば、もっと劉曉波に対する連帯を表明したほうがいいのではないか。こうしたところが、日本の「なんちゃって反体制派」の甘いところであろう。
 日本の近代は、「脱亜入欧」の歴史である。それは、法の支配や基本的人権といった西洋由来の価値意識を
自分のものにしようとしてきた軌跡だったということである。その意味では、日本は、「極西」の国である。この根本を忘れてはならない。
 ただし、幾度も書くけれども、批判されるべきが中国共産党政府であって一般の中国国民ではないということは、強調に値する。雪斎は、日本のナショナリズムが沸騰して、この区別ができなくなるような事態を何よりも危ぶむ。その意味でも、現在の菅内閣の対応は、愚劣であろう。
 最近、興味深いサイトを見つけた。
 「中国嫁日記」 という漫画家のサイトである。
 このサイトに寄せられるコメントを観れば、日本人は、まだまだ、「平衡感覚」を働かせている。結構なことである。

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Comments

囚人がノーベル平和賞を受賞したのは、ナチスドイツ以来初めてです。

Posted by: 炎暑雪国人 | October 10, 2010 05:58 PM

管首相のコメントは、意味不明ですね(笑)芯がないですよ。

 我が従兄も中国人妻です。
 イモトアヤコ似の美人で、隣村でやや名の知れたノギャルです。いろいろ聞いてみると面白い。

「中国で何やっていたんだ?」
「父は人民解放軍です」
「???」
「村はみんな軍の人で、麦を作っていました??」

 てな具合でした。

 勇敢?な人民解放軍の血を引く彼女も、
「日本が本当に民主主義なら、、劉暁波氏の釈放くらいはコメントすべきでは」・・とノギャルらしい金髪を揺らしてつぶやいていました。


 

 
 
 


 
 
 

Posted by: SAKAKI | October 10, 2010 08:32 PM

それは違うんじゃないですか。雪斎さんらしくもない。
中国の民主化など断じてさせるべきではありません。もし中国が民主化したら、日本の価値などゼロです。あるいみ欧米諸国の有史以来の野望が達成されるわけで、日本は用済みとして切り捨てられ、世界は中国をわが仲間としてより大切な国と考えるだけです。

また中国が混乱すれば朝鮮半島の力が増します。それこそ半島統一、日本への攻撃、韓日併合となりはしませんか。雪斎さんの考えは甘いというか、「なんちゃって保守」ではないでしょうか。

バランス感覚とは中国の民主化は許してはならないと言う事ではないですか。今回の騒動を奇貨とし、中国共産党にお前の立場は守るから、今後はは我々の利益も考えてくれと。

この件では中国が北朝鮮にとっている態度が一番正しいと思いますよ。なるほど、中国は北を支持している。しかし一方では北朝鮮を批判する映画の撮影も特殊なルートで許可している。当然です。北が強くなりすぎても困る。弱くなりすぎても困る。素晴らしいバランス感覚ではありませんか。
まず、日本への協力として「シーシェパード」など日本人へ攻撃をかける環境団体の人間の逮捕、反日を掲げる集団への諜報工作活動の実施を求めるべきです。これは先手を取られる可能性もあるので、民主党政権は新たなる日中友好を迫るべく交渉を始めるべきです。

Posted by: ペルゼウス | October 11, 2010 09:24 AM

 どういう訳か、日本の市民運動家とか平和団体、人権団体等のいわゆる「サヨク」は、中国韓国の人権絡みだと舌が重くなる様ですね。自国の問題にはすべって自爆するくらい饒舌なのに。あの方達はどうも、人権思想とか左翼思想を「それを信仰していれば他より一段上になれるアイテム」と見ているとしか思えない。アイテムが無いと落ちると思い込んでいるから、アイテムに見苦しくしがみつく行動を取る。先の大戦云々もそういうアイテムなのでしょうねぇ。切実な過去を自己を優位にする為のアイテム扱いする事はかなり失礼な行為と思わない辺りが何とも。指摘したら切れて襲いかかってきそうですが。
 与党の腰の引けぶりを見ると、野党共同で「劉曉波氏の平和賞受賞を祝う決議」を出したらどうするのでしょうねぇ。安部前首相や麻生前首相に提出していただいて、与野党それぞれの民度を見るという手もありますけど。
 「中国嫁日記」見ました。幸せそうな夫婦生活を読むと独り身の侘しさが身に染みます。なぜか読んでいる内に「月の光 Astral Project」という漫画を連想しましたけど。尖閣諸島とか平和賞とかそういう大きな上の方の問題の世界と、「中国嫁日記」の様な手で触れて息が感じられる世界を対比しているからかもしれませんが。

Posted by: almanos | October 11, 2010 02:16 PM

過去のエントリーにコメント失礼いたします。
中国民主化が成った暁には、果たしてあの国は統一を保っていられるのかどうかと思います。
ソ連然り、東欧諸国然り、民主化は自然なパトリオティズムを呼び起こすでしょう。中国の五星はそれぞれの国に戻ろうとする、そういう力が働くのではあるまいかと期待します。
中国政府はそれを最も恐れるでしょうが、民衆の安寧を願うなら無理な統一こそが全ての歪みの元凶と観念するべきではないかと思います。
中国には公徳心が無いものかと日頃大変残念に思っていましたが、劉暁波氏の言説に触れ、まだ捨てたものではないと感じました。まともな日中関係を築く為にも、日本は中国の民主化を支援すべきでしょう。

Posted by: 桃枝 紫 | November 02, 2010 07:04 AM

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