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October 12, 2010

今後の中国のイメージ

■ 既に色々なところで指摘されているけれども、中国共産党体制の行く末は、次の三つに大別される。
 ① 中国共産党体制が継続する。
 ② 中国が「普通の民主主義国家」に変貌する。
 ③ 中国全土を支配する「統治能力」を持った政治勢力が登場せず、分裂と混沌の状況が出現する。
 雪斎が判断する限り、①と②にも、それぞれ次のようなのパターンがある。
 ①については、「対外態度」で二つのパターンである。
  ⅰ 現在の方向の継続、「覇権主義傾向」の加速、対外摩擦の激化
  ⅱ 「しおらしい」方向へ変化
 ②については、「国内体制」と「対外態度」で四つのパターンである。
  a 中国共産党の「昔日の自民党」化 一党独裁から一党優位へ
ⅰ、「民族主義傾向」の加速、対外摩擦の激化
  ⅱ 対外協調を旨とする「しおらしい」方向
  b 中国共産党とは全く別の政治勢力による支配
ⅰ 「民族主義傾向」の加速、対外摩擦の激化
  ⅱ 対外協調を旨とする「しおらしい」方向
 こうしたシナリオの中で、どれが最も可能性が高く、そして日本にとって望ましいのか。

 結論からいえば、③は最も歓迎すべからざるシナリオである。
 中国全土が分裂と混沌の状況になるのは、ひとつの統一王朝の崩壊の後には、絶えず見られた風景である。
 現在の共産党体制が「王朝」の類と考えれば、この後もという類推は成り立つ。
 だが、現在の中国には、「核」がある。誰によって管理されているのかが判らない「核」とは、戦慄すべきものである。ソヴィエト連邦崩壊後、カザフスタンやベラルーシのような旧連邦構成国に残された「核」をロシアに集約する過程が、かなり危なっかしいものであったということは、忘れてはならない。
 中国が「普通の民主主義国家」になれば、対外的に協調するとは断言できない。国際政治学の世界では、「デモクラティック・ピース」論というのがあるけれども、これが今後の中国に通用する確証はない。「ナショナリズムの中和」が今後の中国で、どれだけ進むかが注視の材料になるであろう。故に、②には四つのパターンを設定した。
 この中では、日本を含む西側世界の基準からすれば、受け容れやすいのは、②-b-ⅱのパターンであろう。だが、今後の中国で、「中国共産党とは全く別の政治精力」が十数億の民を束ねるまともな「統治能力」を発揮できるのか。できなければ、中国は、③の方向に向かうことになる。西側世界にとっての「最良のパターン」は、「最悪のパターン」の入口になるとも考えられる。
 故に、日本にとって最も有難いのは、②―a―ⅱのパターンか、さもなければ①―ⅱである。とはいえ、そのパターンが登場する契機が何であるかは、定かではない。劉曉波のノーベル平和賞などをてこにして、中国共産党政府の「変化」を促すというのが穏当な対応であろう。
 こうしたことは、きちんと考えておく必要がある。
 

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Comments

> 現在の共産党体制が「王朝」の類と考えれば、この後もという類推は成り立つ。

中国国内でご指摘の類推を出した結果、逮捕された方がおられるそうです。
 現実味がある未来としては③ではないかと。で、「国内状況」で二通りに分かれる。
ⅰ 名目上の統一政府として共産党政権が存続し、実態は各地方軍閥の群雄割拠となる。

ⅱ 名目上の統一政府が存在しない状態での各地方軍閥の群雄割拠となる。
 
③-ⅱは悪夢ですから、最悪でも③-ⅰとなる状態を目指すべきでしょう。核兵器については、発射コードを誰が握っているか? 後、核を使用可能な状態にメンテナンスを行う能力を維持できるか? も考慮に入れるべきでは無いでしょうか? 核兵器は核物質の半減期の問題があって、定期的に爆発できるものを造れるかを確かめて交換しないとならない。③となった場合、核技術者を日米でリクルートして運用能力を奪う事と、各地の勢力から使えなくなった核を買うオプションを準備する事で対処できると思います。
 ②―a―ⅱが最も日本にとってありがたい形ですが、そこに至るまでに③の状態が避けられないでしょう。③が起きる事を前提に今後の対中政策を練る必要があると思えます。

Posted by: almanos | October 12, 2010 at 01:21 PM

こんにちは。

大いに勉強になります。
注意深く、冷静に中国を見ていきたいと思います。

Posted by: よんちゃん | October 12, 2010 at 02:34 PM

こんにちは。
中国が「普通の民主主義国家」になっても、国際協調的な国家になるとは断言できないとのことですが、しかし軍事的な脅威は大きく減ずると楽観することはできないのしょうか?
デモクラティック・ピース論は根拠が不確かなものですが、とはいえ、国内の対外強硬世論に敏感な共産党一党独裁体制が多党制・民主主義体制に取って代えられたら、おそらく周辺国への脅威度は大きく減ずるでしょうし、台湾海峡が有事になるということも想定しにくくなるのではと思います。
それとも、仮に民主化しても、「民族主義的傾向」が加速すれば、日米の軍事的脅威になる事態は十分に考えられるのでしょうか?(つまり、②―a―ⅰや、②―b―ⅰのような方向へ傾く可能性は十分に大きいのでしょうか?)

Posted by: amyu | October 12, 2010 at 03:26 PM

仮に③になってしまい、彼の国々における核のトリガーが大分軽くなった場合、日本としては核武装による牽制を考えるべきでしょうか。それともこれまでのように、アメリカ等の核の傘を利用すれば何とかなるのでしょうか。
雪斎様の意見をお聞かせください。

Posted by: eim | October 13, 2010 at 10:56 PM

すでに自活巨大利権集団となっていると噂される軍が、管区ごとに割拠して軍閥化し覇権を競う、という「いつものパターン」ではないでしょうか?

それぞれの"共和国"が外(外国)との協調能力を競争するようになることと、中華世界内の各国に互いの核による恐怖の均衡が成立すれば、暫く安定したアジアということになるのかもしれません?
むしろ、その平和のうちに中華世界はアジア全域に滲むように広がり、次の統一希求の時代、中華住民暮らす地は国内でなければならない、としてさらに国境線が拡大した大帝国が誕生することもありえるかもしれません。

Posted by: KU | October 16, 2010 at 10:31 PM

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