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May 04, 2010

普天間移設決着への三つのハードル

■ 普天間移設に関する案件は、何を以て、「落着」と呼ぶのか。
 本日、「五月末決着」を目指す鳩山総理が沖縄を訪問するようであるけれども、その決着のイメージは、あいまいである。
 これは、次のように考えられよう。
 要するに、「東京都江東区から神奈川県鎌倉市に転居することを決めました」と表明するだけでは、「転居」をしたとはいえない。「転居をした」というためには、東京の旧宅から総ての家財道具を持ち出し、鎌倉市の新宅に運んだ上で、公共料金の解約や住民登録移転などの手続きを総て済ませた状態にしておく必要がある。
 普天間移設に関しては、三つのレベルの「未決着」がある。
 ① そもそも、「新宅」がどこになるかが決まっていない。
 ② そもそも、「新宅」が出来上がっていない。
 ③ そもそも、「新宅」への移転に関わる「御挨拶」の手間と費用が、どの程度になるかが判らない。
 この三つのレベルの「未決着」状態を処理することが 普天間案件における「決着」を意味する。即ち、三つの「ハードル」があるわけである。

 現在、「五月末決着」が喧伝されているのは、せいぜい①のレベルの話である。家族の中に、「駅に近いところがいい」とか「海に近いところが…」という話が色々とあって、ようやく話がまとまったところが、うるさい祖父さんが、「カネを援助するのだから、こっちにしろ…」と無茶を言って、家族の中で揉めているという風情であろう。
 どこに転居するかが決まっても、まだ家を建てるというステップが残っている。つまり、②のレベルの話である。まず。「きちんとカネを工面できるのか」という話が出てくる。検討されている「くい打ち桟橋案」や「メガフロート案」であれば、かなり割高なものになると見積もられている。しかも、それらは、安全保障施設としては脆弱であるし、
維持管理コストも高い。そうした割高な案は、片方で「事業仕分けだ、節約だ」と呼号する民主党内閣の基本政策方針とは、どのように整合するのか。、「新宅」の建設作業が円滑に進むのかという疑問もある。「新宅」を建設する場所が、日照権その他の理由で元々の住民の歓迎されざるところだったら、どうするのか。新基地建設が大々的な公共事業ならば、成田空港や諫早湾干拓と同じような抵抗に直面しないとも限らない。まさか、建設予定地に警備員を四六時中、貼り付かせて工事を進めるわけにもいくまい。
 また、めでたく「新宅」が完成しても、周囲の住民に「仁義を切る」ことは、「新宅」で住み続けるためには、大事なステップになる。ましてや、これだけ色々なところ振り回した挙句の話であるから、「住めるようになったから、あとは知らない…」とふんぞり返るわけにもいかない。
 雪斎は、結局は、従来案と呼ばれる線に近いところで落着jさせるしかないのであろうと観ている。もし、そうであるとすれば、他の政策領域では、沖縄を徹底して優遇する姿勢を示さないと、埒が開かないであろう。沖縄は、大学進学率、県民所得、失業率などの統計では、全国最低の域に留まっている、「沖縄の負担」を口にするなら、こうしたところを、きちんと考えておく必要があろう。沖縄にある企業の法人税、個人の所得税はゼロにするとかぐらいのことは、考慮してもいいかもしれない。
 だから、普天間基地移設案件が、「五月末」で落着できるという議論の仕方は、そもそも、おかしい。
 だとすれば、この件は、鳩山総理がどうしようと、以降の内閣もまた、この案件の政治上の負担からは、逃れられない。だが、この負担から逃げれば、普天間は固定されるのである。
 ところで、こういう記事が出ている。、
 

□ 民主チーム 公約に「日米同盟深化」盛り込みへ
                産経   2010.4.29 01:30
 民主党の参院選マニフェスト(政権公約)を検討する同党外交安保作業チーム(安住淳座長)は28日、「日米安保条約改定50年を踏まえ、日米同盟の深化の協議を進める」との表現をマニフェストに盛り込む方針を固めた。日米関係冷え込みが指摘される中、「日米同盟を最重視する姿勢」(作業チームの1人)を強調するねらいがある。
 衆院選マニフェストにあった「緊密で対等な日米同盟関係をつくる」との基本方針は維持する。普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題には触れない。
 対中関係は、信頼関係の強化を掲げる一方、中国の急速な軍事力強化を注視する姿勢を記す。オーストラリア、インドとの防衛関係強化を新たに盛り込む方針だ。
 また、「国際的なテロ対策などに積極的に貢献するため、自衛隊の活動のあり方について検討を行う」との文言を盛り込むが、これは国連平和維持活動(PKO)への自衛隊の参加5原則の緩和が念頭にある。
 この記事の伝える通りならば、今夏の参議院選挙での「外交安保マニフェスト」は、昨夏の衆議院選挙のときのものに加えれば、一段も二段も、「きちんとした」ものになりそうである。ただし、「普天間移設問題には触れない」とあるところに、民主党の空気がうかがわれる。おそらくは、民主党議員の中でも外交安保に見識を持つ人々は、「もう、この件には、おさらばしたい…」と思っているであろう。この案件に足を取られている限りは、内治・外政の。両面で、民主党内閣は、巨大な荷物を追い続けることになる。ソ連共産党政権末期の「アフガニスタン」、ケネディ・ジョンソン両民主党政権下の「ヴェトナム」のようにである。だが、民主党には、この案件には、きちんと向き合ってもらう必要がある。
 ソ連にとっての「アフガニスタン」を収束させたのは、実質上、ソ連共産主義体制を終わらせたミハイル・ゴルバチョフだったし、往時の米国における「ヴェトナム」を収束させたのは、リチャード・ニクソンによる「政権再交代」のあとの共和党政権だった。
 まさか、この案件の決着が、民主党内閣でできずに、自民党を含む他の枠組みでの内閣の手に委ねられるということは、ないであろうな。

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Comments

鳩山日本国首相、曰く

「当時(衆院選時点)は海兵隊が必ずしも抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった」

「学べば学ぶにつけ、(海兵隊の部隊が)連携し、抑止力が維持できるという思いに至った」

「現実に日米の同盟関係、近隣諸国との関係を考えた時に、抑止力という観点から(国外移設は)難しいという思いになった」


・・・・・

Posted by: 素浪人 | May 04, 2010 at 11:34 PM

いつも激しく頭を上下させながら読ませていただいています。

民主党鳩山政権は、ようやく「確かな野党」が知っておくべき基礎知識を得つつあるというレベルなんでしょうね。

僕は、簡単に見捨てて次に走る人が大嫌いな性分なので、自民から離党した人も、鳩山を見捨てる人も、せっかく目の前に反面教師がいるというのに、そこから「なんら教訓を得ずに脊髄レベルで反応している人たち」だと判断しています。せっかく、教訓が目の前にあるのに、何故同じ間違いを犯そうとするのか。人って(政治じゃなくて)面白いですね。

Posted by: 通行人 | May 05, 2010 at 01:23 AM

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