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November 07, 2009

「自分で食えない国」の分際

■ 日本の食糧自給率は、現在、どの程度なのか。
 大体、40パーセントである。
 先進国中、豪州が240、フランスが130、米国・カナダが120前後という水準であるけれども、他の国々は100を割り込んでいる。それでも、ドイツが90、英国70という水準であるから、日本に比べれば誠に高い水準である。
 それならば、日本は、自給できない60パーセント分を、どこから補っているのか。
 全輸入量の2割強は米国だが、これに中国、オーストラリアが続く。
 詳しく見ると、トウモロコシは9割強、大豆は7割、小麦は5割強が、米国からの輸入に頼った状態である。

 

 雪斎の日頃の「親米派」言動には辟易する向きもあるらしい。
 だが、「親米派」批判に走る人々に共通するのは、「自分が普段、食べている食料は、どこから来ているのか」ということを真面目に考えない態度であろう。食料調達の面で、米国は、現在でも、日本にとっては「気を遣わなければならない国」の筆頭である。「東アジア共同体」でイメージされている国々が、日本の食い扶持を保証してくれるのであれば、雪斎も、それを推し進めることには賛成するけれども、そもそも中国自体が今では「食料輸入国」である。韓国も、食料自給率は、50パーセントぐらいである。「自分で食えない国」同士で組んで、どうしようというのであろうか。
 安倍晋三内閣期だったと思うが、日米同盟に併せて、日豪「準同盟」への動きが加速されたけれども、これは。「自分で食えない国」としての日本の立場からすれば、まことに合理的な話であったのである。
 そういえば、フランスは、自給率130パーセントで、自分のところの食い扶持を他国に頼る必要のない国である。だからこそ、シャルル・ド・ゴール以来の対米「自主独立」外交というものを展開できた。ド・ゴールが晩年を過ごしたコロンべ・レ・ドゥ・ゼグリーズという村は、パリから東に260キロ離れたところにあるのだが、そこに至るルートには、見渡す限りの田園風景が広がっているのである。フランスは、田園の中に都市が散在するというイメージの国である。戦時中、パリが陥落したしたところで、普段の国民生活には余り関りがなかった伝えられるのも、そうしたことが反映されているのであろう。
 「自主独立」を叫びたければ、「力」の裏付けがいる。米国の対外姿勢には、「ランボー」並みの荒っぽさが漂っているけれども、そもそも米国は、現時点でも食料・資源、人口増加の裏付けを持った国であるから、そうした荒っぽさに頼ることができる。
 しかも、そうした「「力」の 条件は、年々、日本から失われている。
 もし、雪斎が「愛国の至情」を全く持たない輩ならば、ある程度の富を手にした後で、食料・資源に恵まれた国に移住することを考えるであろう。それが究極の「「自衛」策である。
 

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「国内政治」カテゴリの記事

Comments

そう仕向けてきたのはそのアメリカですよ。

そんな事アメリカの当時のプロパガンダ映画でも取り上げています。アメリカの農産物を売りつけてゆくことで利益を図る事がちゃんと告げられている。

いわゆる「親米派」の人たちがそこを考えた上で行動しているのならともかく、富国強兵どころか、アメリカに日本を売り渡す事で糊口をしのごうとするから問題なのです。一体今まで日本の外交の多極化にどれほど努めてきたのですか。アメリカにのみ頼るしかないような国にしてきた。それはアメリカにしてみれば友人でも何でもなく利用できる人間だから利用してきたにすぎない。用が済めばポイです。

>「愛国の至情」を全く持たない輩ならば、
>ある程度の富を手にした後で、食料・資源に
>恵まれた国に移住することを考えるであろう。>それが究極の「「自衛」策である。

いや、それでは自衛策にすらなりません。
「国から逃げてきたジャップが何を言う」でカネも巻き上げられて命も危うくなるのがオチです。松井やイチローがいるじゃないかとおっしゃるでしょうが、あれはかつての敵国でも寛大にたたえるアメリカを演出する手段として利用されている(むろん当人の実力もあるけど)ので、「親米派」の人たちを受け入れるほど甘くはないですよ。

Posted by: 竹内です | November 07, 2009 at 11:44 AM

食糧自給率と外交方針の間にどれだけ因果関係があるかは一概に言えませんが、そういった視点から国際政治や外交関係を眺めてみるのも面白いですね。
国力というとよく軍事力や経済力が挙げられますが、自国民をどれだけ自力で養えるかというのも無視し難い要素かもしれません。
そういった点から、鳩山首相の提言している「東アジア共同体」を見てみると、確かに一体どうするつもりなんだろうというのはあります。特に、「東アジア共同体」に関しての正解な定義が無いのが気になります。
現状をきちんと把握せず、明確な目的も無しに、何か凄そうなことを言って、アジアでのリーダーシップを執っていこうという感じがして、現政権の外交・安全保障政策については不安を覚えます。

Posted by: アップル | November 07, 2009 at 12:00 PM

 食料自給率に限った話しではないと思うんですよね~。鉱物資源しかり、おカネや物資全般の「富」しかり

 どうして日本が先の大戦をやろうと思ったか「結局、石油で鼻っ面を叩かれるのが、我慢ならなかった」と対談で言ったのは秦郁彦さんだったか半藤さんだったか。
 前提条件として今の日本は他国にケンカを売れないってことを理解したくない威勢がよくて声の大きな人がネットには多いのは、敗戦から3代変わって日本が1等国で当たり前という常識が染みついた世代(自分もその世代ですが)が多いからなんでしょうか?。明治維新から3代変わって1等国で当たり前と思っていた世代が、威勢のいいケンカを吹っかけたのとかぶります。

 メタンハイドレートが採算が取れるようになるとか、食料自給率が劇的に改善するとか、技術革新などで前提条件は変わりますし、そういう努力はしていかなければいけないとは思いますが。というか、そもそも食料を増産するための肥料はどうやって(以下略)

Posted by: さのよいよい | November 07, 2009 at 12:24 PM

考え方に異論はありませんが、食糧自給率というものについてはこちらも一読してみて下さい。
http://www.farm-biz.co.jp/2009/02/01-060059.php

Posted by: yamaguchi | November 07, 2009 at 12:51 PM

今回の先生のお話は大変わかり易く、私のような学のない者にもストンと腑に落とせました。
日米関係というものは大変難しい問題で、単に「アメリカは嫌いだ」「アメリカの言いなりになっているなんてとんでもない」と言った感情論レベルでの話しが出ている間は、決して正しい方向性は出てこないだろうと思います。日本をどういう国にするか?国連安保理事会常任理事国になる気なら、なった後どうするか?世界の中でどういう評価を頂ける国へ成りたいか。50年後100年後の日本はどういう地位にあるべきか?その辺のコンセンサスがまとまらなければ、日米関係の定義も見直しも出来ないだろうと思います。定義も見直しも出来ない以上、もうしばらくは現状維持以外選択肢はないのではないでしょうか。
現在の日米関係は日本にもいくつか不満があるにせよ以外と居心地の良い関係のような気もします

食料自給率はもう少し引き上げて欲しいと思いますが、日本国内での生産はもう無理だと思います。日本の農業は単位面積当りの生産金額、生産量どちらも世界トップレベルの高い生産効率を持っていますが、それでも農家は生活できません。出来ないように、出来ないようにと世の中を変えていこうと動いていきます。例えば今、何の政策も打ち出さないまま公共事業を大幅に減らせば、そこで働いて生活の糧を得ていた兼業農家は、耕作地を放棄して農業をやめてフルで働く仕事へ移らざるを得なくなるでしょう。公共事業の増減と耕作放棄地の増減は一定のタイムラグを置いて結構リンクしてるのではないでしょうか。
いずれにせよ日本国内で自給率を大幅に上げることは不可能でしょうから、海外で日本が技術指導して生産量を大幅に増やせる国、例えば日本の農業技術を導入すれば50%以上生産量を増やせる国は結構あると思います。そういう国々に農業指導を無償で行う代わりに、増えた生産量の一部は無条件で日本に送ってもらう。そういうやり方をしないとどうにもならないのではないでしょうか?

Posted by: KARIYA | November 07, 2009 at 05:49 PM

カロリーベースの自給率って奴ですか?
金額ベースだと70%超えてますよね。

Posted by: 通行人 | November 10, 2009 at 02:19 AM

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