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November 10, 2009

一つの懺悔

■ この期に及んで、雪斎は自説の誤りに懺悔しなければなるまい。
 選挙前、雪斎は、民主党マニフェストに対する所見を求められ、「具体性に乏しい」と批判した。
 誤ったのは、その「具体性に乏しい」という批判の趣旨である。
 雪斎は、「そもそも、対外関係に絡む案件をマニフェストに掲げてよいのか」と提起すべきだったと反省する。
 そういえば、オットー・フォン・ビスマルクは、「外交案件では三年以上の計画を立ててはならぬ」と語ったそうである。「相手がある」対外政策案件では、「自分の都合」で幾ら計画を立てても、周囲の国際環境が変われば、その計画の前提が揺らぐ。「○○空港を三年以内に廃止します」という公約は、適切だろうけれども、「在日米軍○○基地を三年以内に廃止します」という公約は、そもそも、おかしい。対外政策には、「機が熟する」姿勢が大事になる。吉田茂は、講和までに七年待ったし、沖縄返還までは二十数年の時間を要したのである。
 だから、次の選挙からは、マニフェストは、「内治」案件で限定することを考慮すべきであろう。
 少なくとも、「どのような領域の政策案件が、マニフェストに掲げるのに相応しいのか」という吟味は、始めた方がいいであろう。
 現在、「マニフェストに縛られなくてもよい」という声があるけれども、こうした声に応じて無分別に政権与党が「前言撤回」をやり始めたら、そもそも、マニフェストを掲げて選挙をするということの意義が失われる。マニフェスト選挙を今後も続けるならば、「それに相応しからざる案件」は、外したほうがいい。雪斎は、対外政策案件こそ、その「マニフェストに相応しからざる案件」だと論じているのである。

 雪斎は、これから、それを提起していこうと思う。

■ ところで、過去二回、「食料自給率」をネタにしてエントリーを書いたら、偶々、下記のような記事が配信されていたことを知った。
 ● 【日本の議論】食料自給率41%は低いのか?
 食料自給率の論点を整理する上で、読むに値する記事であろう。
 ただし、雪斎は、食料自給率の「実態」がどうであれ、過去二回のエントリーの趣旨には何ら変更を加えない。
 日本人は、「食える立場」を自明のものと思わないほうがいい。
 東北の農民が、自分の娘を遊郭に売っていたのは、ほんの70年前の話である。
 もしかしたら、千数百年の日本の歴史の中で、現在は、「例外」かもしれないのである。
 そうであるならば、日本の人々は、国際情勢の中で、「いかに食い扶持を確保するか」を意識的に考えておいたほうがいいであろう。

■ 話は替わる、
 このところ、実に十数年ぶりにTBS日曜午後九時台のドラマを見ている。
 「jin-仁」というドラマである。現代の脳外科医が幕末にタイム・スリップするという話である。
 荒唐無稽な筋書きと思ったが、意外にも深遠なドラマである。
 脚本が上手ければ、ドラマの室が保たれるということの見本のようなものであろう。

 それにしても、今年のNHK大河ドラマの「駄作」ぶりときたら、「視聴料を返せ」レベルであろう。
 俳優陣の責ではなく、脚本の劣悪さが元凶である。

 ということで、12月以降のドラマ版「坂の上の雲」に期待しよう。
 明治日本のリアリズムが浮かび上がるドラマになっていることを切望する。

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Comments

産経の食料自給率に関する当該記事を拝見しました。

食料自給率についての最大の問題。
自給率をカロリーベースで計算している国は、そもそも日本と韓国だけだ、という点です。

世界中の国は、金額ベースで計算しています。
もちろん対外的には、我が国も金額ベースで自給率を発表しています。それが66%(平成19年)だったのです。

もっと重要な点。
日本の農水省が「外国の食料自給率」として国内向けに呈示している数字は、すべて「日本の農水省が勝手に作った数字」なのだ、という点が重要です。

食料自給率という数字を低く見せるために、いったいどんな工作がなされているか、それを踏まえた上で議論をしないと、失当な議論となる危険性が高いと思います。

詳しくは小著をごらんいただければと思いますが、一点、見落としがちな点を指摘します。

そもそも国内で作られる付加価値の高い食料品は、野菜にしても果物にしても何にしても、金額に比較してカロリーはとても低い傾向が強いのです。

たとえば、どれほどシイタケ農家が頑張って国産シイタケを作っても、生産カロリーで見ると、ゼロですから。

Posted by: 水澤 潤 | November 10, 2009 at 07:29 AM

確かに・・大河は昨年。一昨年が良かっただけに、今回は人物の魅力すら描けていない脚本が甘すぎますね。
ついでに・・小公女「セーラ」も見てられない(笑)。

 オバマさんがずいぶんと鳩山さんに気を遣っていますね。日米同盟はまさに世界平和の要です。アメリカはそれを判っているのに、わが国の政治家さんたちのホンネはどうなんでしょ。松井選手の活躍が日米同盟の証になっちゃうなんて悲しすぎます。
 さらに・・日本の株価の出遅れが鮮明ですね。民主党に世界の金持ちが「ノー」(投資対象ではない)と判断していますよ(笑)
 
 
 
 

Posted by: SAKAKI | November 10, 2009 at 09:37 PM

>マニフェストは、「内治」案件で限定することを考慮すべきであろう。

それはダメでしょう。民主政を採る以上国民には選挙で外交政策を選択する権利もあるべきです。
とはいえ外交や安全保障がマニフェストで詳細に、ガチガチに決められるのも賛成できません。
ですので、外交案件の公約は「マニフェストから外せ」ではなく「大枠に留めるべき」であるというのが中庸ではないでしょうか。

Posted by: シャイロック | November 10, 2009 at 10:27 PM

食料の自給率の話を読みますと、多くの方が様々なご意見を述べていらっしゃいます。(先生のブログだけでなく、様々な場所で目にします。)
それぞれの方が、それぞれの立場からいろんな見方を示され、自分の様な無知、無学の徒は読むだけでも大変な思いをしております。
それでも拝読させて頂いた意見を自分なり考えてみますと、農業を一つの産業と捉え、産業政策の一つの参考指標として自給率を捉える場合、(自国産業のシェアを計る様な感覚ですか、)金額ベースの自給率の方が適していて、安全保障、危機管理の参考資料として自給率を捉える場合、カロリーベースの自給率で考えるのが良いのではないかと言う事です。
私の勉強不足がいけませんのか、ネット等で調べてみても、その辺の使い分けを明確に示されている文が見当たりませんので、それが正しいかどうか私には解りませんが、先生が安全保障に軸足を置きながら自給率を話されるとき、カロリーベースのそれを使われるのを読むと、それほどはづれてないのかと、自分では思っています。
恥ずかしながら、先生のご意見のすべてを理解できる様な知恵も賢さも無い為、先生からは「何を的外れな事を」と笑われそうな事しか書けませんが、余興の一つとお納め下さい。

Posted by: KAMURO | November 13, 2009 at 10:51 PM

JINはいいですよね。
なんたって綾瀬はるかが出てる。

食料、とくに米はどうするんだろうね。ここ三河南部の農村地帯でもほとんどの農家(?)がオペレータと呼ぶ機会持ちの担い手に委託しているし、約半分の田が毎年減反になっている。あと10年もすると担い手もいなくなってるかもしれません。
平地でさえそうなのだから、山間地は耕作放棄地が多いのも頷けます。

Posted by: じなしふくぞう | November 16, 2009 at 07:21 PM

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