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August 23, 2009

再起のための「基礎体力」

■ 毎日新聞が民主党獲得議席320という線を出している。自民党も二桁台突入という展望である。このパターンでは、自民党が「まともな野党」として活動するのも厳しくなるような気がする。下手をすれば、「政権交代可能な政治風土」が醸成されるどころか、「一党優位体制」の主体が自民党から民主党に代わっただけの結果に終わりかねない。大方の政治学者が望んだものとは裏腹な結果が出てきそうである。雪斎も、久しぶりに野党的な立場から政治を観察できるであろうと読み、自民党の「再起」の方策を考え始めていたが、自民党二桁台となれば話は別である。再起するにも、基礎体力が失われないことが条件であるとすれば、その最低線は、120前後であろう。「それでいいのか…」と率直に思う。

 それにしても、麻生太郎総理も安倍晋三総理も若き日に、どういう書を読んできたのであろうかと思う。日本では最も恵まれた条件で育ってきた最中で、どのような研鑽を積んできたのであろうか。麻生総理の不用意発言とされるものも含めて、このところの政治家の言動には、付け焼き刃のようなものが多いけれども、何故、こうしたことになっているのであろうか。こうした点は、英国のエリートとは事情が違うのであろうと思う。英国のエリートは、若い時分に「最も厳しい環境」に身を置く時間を経るのである。往時の名著『自由と規律』でも紹介されていたように、延々と続くクリケットなどを通じて、それに耐えられるくらいの体力、知力上のタフネスを体得するというのが、エリートの条件である。若い時分に一度は「地獄の底」を観るような極限の経験をしなければ、国家・社会を指導するに足るタフネスは、備わらないということなのであろう。
 翻って、雪斎の家庭環境はといえば、父親は中学卒で、いわゆる「土方」をやった後に自衛隊に入ったという経歴であり、雪斎以前に代で父方にも母方にも大学卒は皆無である。当然、カネはない。大学・大学院時代には授業料は免除してもらい、アルバイトもできないので、障害者年金と奨学金で必要なカネをまかなった。雪斎のような家庭環境から出発して、「アカデミズムの世界」の住人になっている輩などは、この国では稀有であろう。
 北海道大学時代、できることはといえば、書を読むことぐらいしかない。図書館で貸し出し制限ぎりぎりまで借りて書を読むという日々である。それは、カネが掛からない時間の過し方であった。「バブルの時代」の恩恵には、ほとんど与ることができなかった。そして、五年が過ぎた。東京に出てきたら、バブルが崩壊しようとしていた。風呂につかりながら、下手な歌を歌っていた。

  妻を娶らば才長けて みめ麗しく情けある
  友を選らばば書を読みて 六分の侠気四分の熱
             ―与謝野鉄幹 「人を恋いうる歌」

 雪斎の本音からすれば、二重三重の悪条件から出発して、兎にも角にも税金を払う立場を得たのだから、最低限の「義務」は果たしたであろうと思う。だが、もっと、まともな条件から出発した人物ならば、より多くの貢献を社会にすべきであろうと思う。そのための条件は、出来上がっているであろうか。当面の政治の帰趨云々以上に、、こちらのほうを真面目に考える必要がありそうである。
 とりあえず、自民党議員は、此度の選挙で「地獄の底」を観たわけであるから、少しはクオリティを高めることができるであろう。雪斎は、この数年の自民党の凋落に手を貸した数名の政治家は、もう表舞台に出てくる必要がないと思っている。「小泉チルドレン」も、全滅ということはないし、此度の選挙での初当選組もいなくはないと思うので、そういう人材に期待しようと思う。東京、愛知、千葉に、そうした人材がいる。具体的な名前は、公職選挙法上、拙ブログでも書けないようである。残念である。

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Comments

夏みかん大の立方体や三角錐、球などの立体物を並べ
いろんな角度から照明のあててみると、方向次第で、
ゴロッと見え方が変わりますよね?
その光源や光源の角度に注意を払い、状況を管理できることが
政治家の力量のひとつといえばそうなんでしょうが、
安倍氏にしろ麻生氏にしろ、人格攻撃に等しいほどに
なぜここまで徹底的に叩かれたのか、理解できません。
彼らの祖父達もそうだったようですが、雪斎さんが
以前書かれていたように、中川昭一氏も含め、
使い捨てにされるにはあまりにも惜しい人達だと、
今でも思っています。

Posted by: とんぼ | August 23, 2009 at 04:02 PM

いつも拝読しております。エントリのご趣旨、その通りだと思います。ただ

>とりあえず、自民党議員は、此度の選挙で「地獄の底」を観たわけであるから、少しはクオリティを高めることができるであろう。

というのは少し楽観的にすぎるのではないでしょうか。麻生さんでさえ一度は落選しているのですから(あるいは、クォリティを高めてもあの程度、ということにしかならないのではないでしょうか)。

Posted by: ktkr | August 24, 2009 at 03:22 AM

ナベツネさんは150議席ないとダメだといっていたが、たしかに出たり入ったりということはあるでしょうが、何議席であろうと一方の極は自民党でしょう。120や150という数字にさしたる根拠があるとも思えない。政権からはなれてはじめて、党の今後について、真剣な議論が始まると期待しています。ほんとうは細川政権のときにやっておくべきことだったかもしれないし、民主党もこの4年もっとそういう方向性を詰めておくべきでした。参院選2回、衆院選1回負けたあとですから、今後の国政選挙でうまく調整して魅力的な候補者をたてられるかが腕のみせどころでしょう。

Posted by: 萱野 | August 24, 2009 at 03:31 PM

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