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July 16, 2009

政治と社交、外交人材としての「元総理」

■ 『溜池通信』で、「元総理経験者を大使に…」という提案があった。
 実は、十余年前に、雪斎が仕えた愛知和男代議士が同じ提案をしたことがある。
 愛知代議士の提案は、「細川護煕元総理を駐米大使に」というものであった。外交官の仕事は、行政官僚というよリは、政治家の仕事に近似している。確かに、総理経験者は、最強の人材である。
 もっとも、その一方では、外務官僚には、外務大臣という目標を用意しておくことは、考えておいたほうがよいであろう。外交は、政局云々ということには、超然としていることを必要とする。
 振り返れば、戦前までは、外務大臣だけは、大体、外交官出身者で占められていたのである。


 ところで、前々回のエントリーにコメントを寄せてくれた方がいる。
 曰く、「ワインとシンフォニー?もう一つ、必要ですよ。それは女。女から見れば男。旨い酒、惚れた異性、よい音楽、これだけ揃えば、政治など、馬鹿らしくてどうでもよいとなるでしょう」だそうである。
 確かに、その通りである。「ワインと音楽と女」が揃えば、政治などという無粋なことは阿呆らしくなる。女がいない場合でも、西欧諸国の「クラブ」では、政治とビジネスの話は、御法度だそうである。そうした俗事に関わらない世界が、人間の豊饒な「精神の生活」のためには、大事なのである。
 ただし、「ワインとシンフォニーと女」が社交」の世界に持ち込まれると、少し様相が変わってくる。「社交」というのは広い意味での政治である。だから、ジャン・ジャック・ルソーが論じたように、そこでは、人間の思惑や嫉妬が渦巻く。そこでは、品格とか優雅さの衣をまとった「丁々発止の渉り合い」が行われるのである。ウィーン会議といえば、ナポレオン戦争後の秩序を決めた会議だったけれども、各国の利害が衝突して数ヶ月を経ても遅々として進行しなかった。、だから、「会議は踊る、されど進まず」と評された。 ウィーン会議は、何故、踊ったのか。それは、高坂正堯先生によれば、「機が熟するのを待つために」踊ったのである。ウィーン会議が扱ったような難題は、簡単に結論が出るようkなもの0ではなかったから、急いで何かをしようということでもなかったのである。実際、「会議は踊る、されど進まず」という言葉も、眉間にしわを寄せて「何と嘆かわしいことだ…」というニュアンスで語られたたのではなく、「ああ、やはり進まないね…。まあ、それも、いいであろう。楽しいし…」といった遊戯的なニュアンスで語られたのである。最近の人々は、映画『会議は踊る』といったものを観るのであろうか。あれは、楽しいオペレッタ映画である。
 こういう話は、政治に向き合う姿勢を示唆している。三島由紀夫の『鹿鳴館』を呼んでいると、舞踏会会場に乱入してくる「壮士」が登場する。当代の共産主義者だの「真正保守」だのというもののの祖先みたいなものである。要するに、「社交」の世界で、壮士のような「品格と優雅さ」を欠く振る舞いが嫌われるように、現代の政治に向き合う際にも、「眉間にしわを寄せ、眼を血走らせ、肩を怒らせる」風情の悲憤慷慨の姿勢で臨むくらい、無粋なことはないのである。
 こうしたことを書けば、「庶民感覚」云々と言い出す御仁がいるけれども、そもそも、外交は、「貴族性」を伴った営みなのである。日本は、対外関係の中で生きなければならない以上、こういう「貴族性」を育む環境は、大事なのである。
 麻生太郎総理は、「外務大臣」としては、うってつけの人物だったかもしれないと思う。「庶民感覚」などが判らなくても、漢字を読み間違えても、「外交の世界」では、そんなことで揚げ足を取られず5に済んだはずであるからである。また、小泉元総理にも、国際「社交」の世界で、ひとはだ脱いでもらうことを考えたほうがよいであろう。是非、後妻を迎えてもらって、欧州の地でワインやオペラの薀蓄で当地の顕官たちと交流してもらいたいものである。「プライム・ミニスター」を務めたという立場は、それ自体が、図抜け「た「説得力」を意味しているのである。日本も、こういう人材の使い方を早く準備しておいたほうがよいであろう。

 雪斎はといえば…。
 早く妻を娶って、とりあえずアムステルダム・コンセルトヘボウでマーラーを聴きたいものである。さもなくば、ミュンヘンでブルックナーかな。

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