民主党マニフェスト論評記事
■ 外交・安全保障政策は、「相手のある」政策領域である。
昨日、「読売新聞」一面の記事で、北岡伸一東京大学教授が、その「相手のある」外交・安保政策の性格を強調し、政党によって外交・安保政策に違いがあってはならないということを説かれていた。そういえば、日本の隣には、「相手のことを考えず、自分の都合ばかり振り回している」国がある。それが、彼の国をどういう状態に追い込んでいるかは、指摘するまでもない。
日本でも、「自分だけの都合」で外交・安保政策を語っている向きがある。それは、しばしば、「平和主義者」とか「国士」と呼ばれる。
下掲は、「中国新聞」に掲載された記事である。同じ文面の記事が「西日本新聞」、「信濃毎日新聞」といった全国の地方紙に載った。一部は改変してある。
□ 識者による民主政権公約点検 「雪斎」氏/熊野英生氏
中国新聞 2009.07.28 朝刊 国際・総合 (全1,467字)
識者による民主政権公約点検
民主党が27日に発表したマニフェスト(政権公約)をどう読むか。外交・安保と経済・財政の分野で、識者2人の見解を聞いた。
○ 外交・安保 「雪斎」氏
自国優先 乏しい具体策
外交・安全保障政策は、年金や医療といった「内治」の政策とは異なり、他の国々との関係への顧慮を要請する「相手のある」政策領域である。故に、自らの都合を優先させた外交・安保政策は、政策としての意義が薄弱なものにしかならない。
民主党の外交・安保政策に関しては、事前に「現実路線」への転換が報じられたけれども、実際のマニフェストから浮かび上がるのは、それが依然として民主党にとっての「鬼門」であるという現実である。
他の政策領域は、「政策目的」と「具体策」という二段構えの記述が行われているにもかかわらず、外交・安保政策だけは、そうした体裁での記述がなされていない。この具体性の乏しさは、たとえば次に挙げる二つの点に示される。
まず、「緊密で対等な日米同盟」への模索が提起されているけれども、日米同盟の「対等性」を米国に周知させるための具体的な施策の裏付けは、何ら示されていない。
次に、日本にとって喫緊の課題である北朝鮮情勢への対応に関しても、「核実験やミサイル開発は、…断じて容認できない」という記述は、「何を手掛けるか」という方針を示すものではない。現行の「6カ国協議」の枠組みを踏襲するのか。日朝直接交渉を考慮するのか。そうした方針が示されてこそ、マニフェストとしての意味がある。
付言すれば、民主党の外交・安保政策の立案を直近まで手掛けながらも、選挙事情で離党した浅尾慶一郎「次の内閣」防衛相の後任は、既に決まったのであろうか。こうした点でも、民主党の「現実路線」が試されている。
○ 経済・財政 第一生命経済研究所主席エコノミスト 熊野英生氏
容易でない歳出効率化
民主党のマニフェストでは、まず子ども手当など家計向けの手厚い減税政策が予定されている。それを実行するために、歳出効率化や無駄遣い・不要不急の事業の削減で財源を捻出(ねんしゅつ)しよう、という構図になっている。
しかし、無駄遣いをなくすというと聞こえはよいが、歳出の裏側にある権限や利害を断ち切ることは生易しくはないはずだ。民主党の説明では、天下りに関連した公益法人等への補助金カット、随意契約の見直しなど経費削減で、約6兆円を捻出するとある。
歴代政権が比較的、地道に取り組んできた領域で、民主党がにわかに画期的成果を得られるとは考えにくい。2010年度内に経費削減が成果を挙げなければ、国債増発に追い込まれるリスクがある。
もうひとつ、マニフェストでは、減税政策を含めて経済成長戦略の全体像が見えにくいという問題点がある。たとえば5兆円を減税しても、もう一方で5兆円の歳出削減をすれば、刺激効果は相殺される。
しかも減税だけでは、家計の可処分所得を増やすのに限界がある。むしろ、国民の生活が楽になるためには、減税よりも給与が継続的に増える方が望ましい。勤労者の給与拡大には、企業のビジネスチャンスを開拓し、勤労者1人当たりの生産性上昇を図ることが先決である。
特に、少子高齢化の制約に直面している日本経済には、外需拡大の恩恵が内需に浸透するパイプを強化することも重要だ。民主党には、これまでの与党政権がやってこなかった「給与を増やすための大胆な戦略」を提示してほしい。
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Comments
雪斎氏のおっしゃるように、日本の隣には、半世紀以上前から「相手のことを考えず、自分の都合ばかり振り回している」超大国米国がありますねぇ。しかし、「それが、彼の国をどういう状態に追い込んでいるか」という分析はかなり困難なのではないでしょうか??
Posted by: 政治家は政治屋にあらず | July 31, 2009 10:59 PM