« 「北」の国から | Main | 「鳩山太平記」 »

June 09, 2009

「現代の検校」

■ 宮城道雄という人物がいる、
 正月に流れる箏曲『春の海』の作曲者として知られる。
 幼少時に失明した人物である。
 ところで、日本では、古来、視覚障害者には、座頭、匂当、検校という官職が与えられた。
 中でも、最高位の検校になるためには、箏曲、三味線などを極めなけばならなかったわけである。
 江戸・寛永年間に活躍した八橋検校は、箏曲の発展を劇的に進めた。 
 故に、日本では、視覚障害者にして音楽家というのは、長い伝統を持った職業なのである。
 宮城道雄は、そうした伝統を継いだ人物であったといえようう。
 そういえば、『風雪ながれ旅』のモデルとされる津軽三味線奏者、高橋竹山も、そうした人物であった。

 ところで、昨日、「快挙」ガ伝えられた、

 □ 全盲の辻井さんが優勝=米ピアノコンクール、日本人初
              6月8日12時28分配信 時事通信
 【ニューヨーク7日時事】米テキサス州フォートワースで開かれた第13回バン・クライバーン国際ピアノコンクールで7日、全盲の辻井伸行さん(20)が日本人として初めて優勝した。中国人ピアニストと並ぶ第1位だった。
 1962年から原則4年に1度開催されてきた同コンクールで、日本人が決勝に残ったのは69年に準優勝した野島稔さんら以来40年ぶり。辻井さんの最終演奏曲はリストのハンガリー狂詩曲第2番だった。
 辻井さんは東京都出身。生まれつき全盲だったが、幼少期に音楽を始め、7歳で全日本盲学生音楽コンクール(現ヘレン・ケラー記念音楽コンクール)ピアノ部門1位を獲得。その後も国内の交響楽団と共演するなど活動を続けている。

 要するに、彼は、「現代の検校」なのである。
 だから、こうした記事が伝えるように、「盲目のピアニスト」と呼ぶくらい、日本の伝統にそぐわない話もない。
 彼の「壮挙」が「壮挙」である所以は、ただひとつ、「世界最難関のコンクールで、日本人はおろかアジア勢として初めて頂点に立った」ということなのである。
 雪斎も、クラシック音楽愛好家の端くれなので、こういう俊才の登場を目の当たりにするのは、誠に喜ばしい。
 彼のピアノがどういう方向に行くのか判らないけれども、ベートーヴェンのソナタ全曲をどう演奏するのかを聴いてみたいよううな気がする。

 これから、様々なメディアが、彼を語る際に、「盲目の…」という余計な枕言葉を付けないことを期待したいものである。
 それをいうならば、、雪斎は、「障害者の政治学者」か。
 意味のない「枕言葉」であろう。
 それと同じことである。

 ところで、今月一杯、ちょっと余裕のない時間が続きそうである。
 明日発売の『中央公論』には、雪斎の最新原稿が載る。
 題して、「日本核武装論、退場のとき」である。

|

« 「北」の国から | Main | 「鳩山太平記」 »

「文化・芸術」カテゴリの記事

Comments

おこがましいですが、政治の読み方をお教えいただいているつもりで、いつも興味深く拝読しております。
私もニュースを見て宮城道雄を思い出し、ほぼ同じ感想を持っておりました。
レコードを聴くと、宮城さんの琴は独特のリアルな描写の力を持っていたように思いますが、辻井さんのピアノも、音に独特の明るさがあるように思います。今後がとても楽しみです。

Posted by: nami | June 09, 2009 at 09:50 PM

宮城道雄の琴、吉田雅夫のフルートで、春の海の録音が昭和30年頃の録音で残っています。

検校という話から久しぶりにこのドーナツ盤を聞いてしまいました。

自作自演というのでしょうか。
また、チェリビダッケに日本の音色と感嘆せしめた吉田雅夫の音色というのでしょうか。

いずれにせよ、新しい「検校」の誕生に拍手です。

Posted by: sal | June 12, 2009 at 02:11 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/45283065

Listed below are links to weblogs that reference 「現代の検校」:

« 「北」の国から | Main | 「鳩山太平記」 »