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June 13, 2009

「鳩山太平記」

■ 四半世紀前に放映されたNHK水曜時代劇『真田太平記』は、雪斎には忘れられないドラマである。信州真田家の信之・幸村兄弟の軌跡を描いた作品だった。
 兄弟が政治上、彼我に割れているという様子は、今では鳩山由紀夫・邦夫兄弟の姿に現われているのであろう。

 兄者である由紀夫氏が民主党代表になり、鳩山家の悲願である「宰相の椅子」に手が届きそうになっているところに鑑みれば、邦夫氏の突っ張りは、誠に見事なアシストになるかもしれない。邦夫氏が、この件で突っ張れば突っ張るほど、麻生内閣の政権基盤は揺らぐし、自民党内も混乱する。
 信州・真田家の「関ヶ原」前夜と同じことである。どちらに情勢が転んでも、「兄」と「弟」の何れかが家名を残すのである。邦夫氏の望み通り、西川善文・日本郵政社長更迭となれば、邦夫氏は「正義の人」と声望を得られたであろう。邦夫氏が斬られても、そのこと自体は、麻生・自民党への打撃になる。行く行くは、自民党と民主党のどちらが政権を握っても、鳩山の「家名」は高まるのである。

 …などということを、まさか邦夫氏は考えていなかっだろうな。

 考えていなかったとしても、邦夫氏が麻生太郎内閣における「トロイの木馬」としての役割を結果として果たしたのは、間違いあるまい。その故の「実質上、更迭」である。
 実際、由紀夫氏サイドは、この紛糾を喜んでいたような節があった。

 □ <鳩山代表>弟・邦夫総務相に自民離党と民主合流呼びかけ
                     6月6日19時43分配信 毎日新聞
 民主党の鳩山由紀夫代表は6日、日本郵政の西川善文社長続投に反対し与党内で孤立する弟の邦夫総務相に対し、「民主党に協力して加わるなら、早く閣僚を辞めて新しい道を進めたらいかがか」と述べ、自民党離党と民主党への合流を呼びかけた。広島県呉市内で記者団に語った。
 さらに鳩山氏は、与党内の邦夫氏批判について「麻生太郎首相のリーダーシップの欠如が混乱を招いている。弟だけの責任ではない」と、邦夫氏をかばった。同市内での街頭演説では「(自身と邦夫氏の)2羽の鳩が麻生首相をつついている。1羽(由紀夫氏)は正攻法、もう1羽(邦夫氏)は中から内臓をえぐってしまう」と例えた。【佐藤丈一】

 この発言は、かなり「いやらしい発言」であった。だが、余り賢明であるとも思えない発言である。由紀夫氏の発言を観ると、「結局、兄弟で示し合わせて、やっているのか…」と突っ込まれそうな感じではあるのである。本当のところは、誰にも判るまい。
 雪斎はといえば、邦夫氏が、この案件に、ここまでエキサイトしている理由が解せなかった。邦夫氏は、あのキャラクターから判断する限り、かなりの「天然系」の人物なのであろう。だが、雪斎は、「正しさ」とか「正義」を口にする政治家を余り信用してはいないから、邦夫氏が「正義」を振りかざして非妥協的な姿勢を示しているのには、かなり興が冷めた。独善的な「正義」くらい、はた迷惑なものはないのである。
 雪斎は、西川善文社長の立場を選んだ麻生太郎総理の判断を支持する。もっとも、読者には、雪斎が今では「絶滅危惧種」であるらしい「構造改革」支持者であることを念頭において、この評を考えてもらいたいと思う。
 そもそも、西川社長は、小泉純一郎総理が「三個の礼」で迎えた人物である。何故、「三顧の礼」で迎える必要があったかといえば、銀行・保険・流通を全部括ったような巨大企業を経営できるような経営者などは、そうそういるものではないからである。西川氏も、三井住友銀行のトップを務めた以上、個人的な野心を抱いたというものでもなさそうだから。財界の代表のつもりで、任に就いたのであろう。
 そもそも、西川社長更迭の場合、誰を後任にするのか。政治の都合で、西川氏の首を挿げ替えたとなれば、民間企業経営者が後任に手を挙げるとは、考えにくい。そうなれば、社長は、実質、総務官僚辺りの「天下り」ポストになるのである。それは、郵政民営化の頓挫を意味するのであろう。
 振り返れば、現在に至る自民党の党勢失速は、安倍晋三内閣での「郵政造反組」復党から始まった。麻生総理が、西川氏の首を切ろうというものならば。もはや、その時点で、自民党は、四年前の民意を明確に裏切ることになったであろう。そうなれば、自民党は、「選挙にならない選挙」をやることになったであろう。「傷」は思いのほか深いものになったけれどもl、致命傷にはならなかった。鳩山騒動は、そうした程度のダメージを自民党に与えたということになろう。

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Comments

記事に賛同いたします。過渡期にある日本郵政グループを率いるには、企業経営に卓越した方のリーダーシップが必要であることから、この度の麻生首相の鳩山総務大臣更迭という判断は適切だと思います。

鳩山氏については、日本郵政にとって好条件と思われる「かんぽの宿」譲渡にかみついたころから疑問符をつけていましたが、最後の方では自己陶酔しているかのような発言・態度に、大臣として大丈夫なのかと不安を感じていました。

麻生首相はよく我慢して使い続けたな…と個人的には好意的に受け止めています。

Posted by: 九十九里 | June 13, 2009 at 04:43 PM

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