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April 02, 2009

北朝鮮ミサイルの「虚」と「実」

■ 北朝鮮が、「人工衛星」を今月4日以降、8日までの間に打ち上げると発表している。
 

 北朝鮮が踏み切ろうとしているのは、彼らの意図から推測する限り、他国とのビジネスのネタにするためのミサイル技術の証明である。要するに、北朝鮮は、人工衛星を打ち上げるに足るミサイル技術を持っているということを証明して、それを外貨獲得の手段として考えているのであろう。それは、大量破壊兵器拡散の防止という国際潮流に背を向けるものではあるけれども、北朝鮮には、「同情するならカネをくれ」といったところであろうかl
 この人工衛星打ち上げ、もといミサイル発射は、二つの場合に分けて考えるのが有益であろう。
 北朝鮮がミサイル発射に成功した場合、日本は、国連安保理に議論の場を移して対朝非難決議や対朝追加制裁決議の採択を粛々と模索するしかない。これには、日本独自の追加経済制裁の発動が加わるであろう。逆にいえば、日本ができることは、「ここまで」である。「右」の方の人々は、「北朝鮮に鉄槌を下してやれ」などと呼号するかもしれないけれども、具体的に現在の「持ち球」の中で何が出来るというのであろうか。北朝鮮が明白に日本の領土に向けて弾頭付のミサイルを撃ち込んだとということでなければ、日本の自衛権発動の対象にならないし、日米安保条約発動、国連安保理の軍事制裁論議の対象にはなるまい。
 もっとも、北朝鮮がミサイル発射を成功させたことによって、米国本土を直接に攻撃できる能力を持つと米国政府が察知した場合、バラク・H・オバマの米国政府は、どのように反応するか。イラク戦争前のジョージ・W・ブッシュ政権ならば、「大量破壊兵器を持っている」という疑惑を撒き散らしただけで、武力行使に踏み切ったかもしれないけれども、オバマ現政権が、同じ対応をするとは考えにくい。結局のところは、米国本土が直接の攻撃を受けるという事態にならない限りは、対朝政策の仕切り直しや組み立て直しが考慮されるのであろう。六ヵ国協議の枠組を維持するのか、それとも別種の枠組を構築するのか。それとも、対朝直接交渉を模索するのか。北朝鮮という「悪漢国家」のミサイルがアラスカを射程に収めるという新しい状況の出現を前にして、オバマの米国政府の姿勢も、従来と同じものであるとは限らない。
 方や、北朝鮮がミサイル発射に失敗した場合には、ミサイルの残骸が日本領域内に落下してくる可能性も考えられる。現在、自衛隊が国内五カ所に展開するミサイル迎撃システムが対処しようとしているのは、この「残骸」である。要するに、本来、日本海と太平洋に二ヵ所を事前に予告した「設定区域」に落下させるはずの残骸が、目論見が外れて日本領土内に落ちることになれば、それは、特に都市部落下の際に想定される被害を局限するためには、迎撃しシステムによる破壊の対象になる。この破壊が上手くいくのか。雪斎は、確証を持たない。
 もっとも、こうした失敗それ自体は、金正日の威信jには相当なダメージを与えることになるであろう。また、「売り物」としてのミサイル技術の信頼性を大きく損ねるものでしかない。それでは、わざわざ、「人工衛星」打ち上げを対外的にアピールした意味がなくなる。北朝鮮は、万難を排してでも、「人工衛星」打ち上げを成功させようとしていると考えるのが、自然であろう。北朝鮮政府の意図に最大限の悪意を読み取るならば、日本のミサイル迎撃システムの実際の効能を試すために、逢えて失敗したと称して日本領土内に落下させることも、考えられなくもないであろうけれども、そうしたことは、考えにくい。ミサイル迎撃システムが実際に稼動することは、実際には、「ない」のではなかろうか。
 何れにせよ、北朝鮮の国家目標は、金正日体制の存続である限り、下手に日本に手を出して米国の介入を招くような事態は、自殺行為でしかないであろう。もし、仮にミサイル発射が失敗して、その残骸が日本の都市部に落下し、ありえないであろうけれど米軍基地や米国市民に被害が及ぶなどということが起こったら、北朝鮮政府には「悪夢」以外の何物でもないであろう。だから、北朝鮮は、結局のところ弱小国に過ぎないのだから、戦争は、彼らの「自滅」でしかない。雪斎は、北朝鮮政府が発表する「迎撃したら報復だ」という類の声明は、もう既に様式美の域に達した虚仮威しでしかないと思っている。故に、こうした虚仮脅しに一々、反応のするのも、率直に阿呆らしいことだといえよう。
 

 

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Comments

北朝鮮のミサイルについては、宇宙開発ジャーナリストの松浦晋也氏の記事が良いですね。長年各国の宇宙開発を分析し続けてきただけあって、普通の人ではなかなか気づかない技術的な観点を指摘して分析しています。
北朝鮮が人工衛星/ミサイルの追跡船を出していない点については、なるほどと思いました。

近づく「テポドン2」打ち上げ | 時評コラム | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090331/142712/

Posted by: Baatarism | April 02, 2009 at 10:00 AM

これはまったく同感です。
付け加えるなら、今までの革新陣営のあり方にも大きな問題があると思います。「アジアのひとたちが」と二言目には言うけれど、「日本の過去」を云々する国々がかつての大日本帝国のようになっているさまをどう考えるのかということです。

ミヤンマーの軍事政権、チベット核武装している中国、ミサイルでの脅迫や拉致で「戦う祖国」を演出している北朝鮮、韓流で攻勢をかける韓国、フイリピンも南沙諸島の問題で強行路線に走る気配がある。

今までの「左」の路線ではアジア=弱者のイメージで「保護」の対象としてきた上での行動がメインで、強者、覇者としてのアジアなど念頭にない。それが現実と大きな齟齬を呈してきた事に適切な言動を取っていない事が日本国内の左右の政治バランスを壊している部分は大です。

解決するべき問題は海の向こうでなく、こちら側にあるのではないかと。

Posted by: ペルゼウス | April 02, 2009 at 11:41 AM

マスコミが大騒ぎしてる割には右翼団体&警察の対応が緩慢ですね。
いつもなら右翼団体対策の為に朝鮮総連の関係施設に警官を貼り付けてるのでしょうが、現在私が住んでる政令指定都市では昨日、偵察に行った限りでは右翼も警官の姿を見ません。
明日からなのかなー。

産経新聞が半年前に始めた対馬キャンペーンでは速攻で韓国領事館の前に車両と警棒を持った警官を24時間配置し現在も続いているのですが。

Posted by: Levchenka | April 03, 2009 at 04:13 PM

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