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March 08, 2009

陰謀論という「脳内麻薬」

■ 「陰謀論」は、人間の「意図」と「結果」が必ず一致するという思考の産物である。
 「陰謀論」は、人間の世界の複雑さを観察することに耐えられない人々こそが、走りやすい代物だといえよう。「複雑な」世界の様相を読む際に単純な「解」を見つけ出して、「俺だけが、『解』を知っている」と思うことは、人々に倒錯した優越感を与えるものである。「陰謀論」が後から後から出てくる背景には、そうした「脳内麻薬」の需要に「陰謀論」が応えているからであろう。
 特に、古今東西、世の中に「苦境」の空気が流れれば、それを「誰か」のせいにしたくなる人々が出てくる。第一次世界大戦後のドイツでは、その「誰か」とはユダヤ人であり、その空気がナチスの擡頭をもたらした。ナチスの擡頭と第二次世界大戦は、古くからの反ユダヤ感情に「ユダヤの連中なら、やりかねん」」といった類の「陰謀論が招いた災厄であった。
 「小沢スキャンダル」は、たんなる古色蒼然とした疑獄事件である。
 もし、政府・自民党が意図的に小沢一郎氏を追い落とせるほどに「権力」を持っているのであれば、何故、「支持率10パーセント台」」という風景が出現しているのか。もしかしら、その「支持率10パーセント台」というのも、麻生太郎総理周辺の意図的な誘導の帰結なのか。それならば、何のために…。
 故に、政治評論の中でも、「陰謀論」の混じったものは、最も質の悪い部類に属する。雪斎は、「陰謀論」に関しては、それを酒席の「与太話」としてならばともかくとして、表立って平然と語っている人々には一切の信を置かないことにしている。

 ところで、民主党所属議員にとっては、この土、日両日が「試験」であろう。彼らの多くは、選挙区に戻って、「小沢スキャンダル」に対する市井の人々の反応に接するはずである。この反応によって得られた結論は、「小沢の下で、引き続き頑張る」なのか、それとも「小沢では、駄目だろう」なのか。それが民主党の運命の分かれ目である。
 前者ならば、実質、「強行突破」である。これは、小沢さんの嫌疑が晴れることを前提にした選択である。此度のスキャンダルは、自民党にも「火の手」があるけれども、小沢さんの件が、「大魚」であることは、間違いない。「どっちもどっち」という相対化は、この際、無意味である。自民党政治家にも捜査の手が入るようならば、「何故、小沢だけが…」という弁明の根拠が、失われるからである。無論、小沢さんが嫌疑を晴らせなければ、この「強行突破]は、党を巻き込んだ壮大な「自爆」になる。
 後者ならば、「小沢・民主党」の終焉である。ただし、前に触れた「自爆」に比べれば、民主党それ自体へのダメージは軽減されるであろう。もちろん、現在、小沢擁護を打ち出した鳩山由紀夫、菅直人両氏は、小沢さんととともに退場してもらうしかあるまい。岡田克也、前原誠司の両氏を軸に即刻、「再生」への模索を始めることになるのであろう。このタイミングにおいて、麻生太郎総理が解散を仕掛けてきたら、民主党は、対応できるのか。
 雪斎が民主党関係者ならば、常識的な対応としては、「小沢ととともに党を心中させる」真似は避けようとするであろう。報道が伝える限り、小沢さんの直面する情勢は、余りにも悪いような気がする。

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Comments

岡田氏待望論が強いようですね。鳩山幹事長のトンも変化が垣間見られます。

Posted by: 星の王子様 | March 09, 2009 at 09:15 PM

毎回、興味深く拝読させていただいております。
ところで、陰謀論を相手にしないというのは、学者として至極真っ当な御対応だと思います。学生時代のゼミの先生も「地下資源を目当てに、ソ連が××内戦に介入」などという当時の時事ネタを、床屋政談と切り捨てていました。
ただ、真実が、まず陰謀論や床屋政談の形で世に出る場合もあるんじゃないでしょうか。何にせよ、はじめからまったく否定ということですと、かえって真実がつかめないこともあるような気がします。
すべてに当たって、そこに含まれた少数の真理をすくい取るといった態度も、たまには必要ではないかと思いました(おせっかい、ご無礼致しました)。

Posted by: 一度だけコメントします | March 11, 2009 at 01:02 AM

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Tracked on March 08, 2009 at 11:56 PM

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