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January 26, 2009

ソマリアの海賊、自由貿易の課題

■ 経済案件に隠れているようであるけれども、この件は民主党はどうするつもりであろうか。
 □ <海賊対策>民主幹事長「野党3党で統一見解」
              1月23日21時20分配信 毎日新聞
 民主党の鳩山由紀夫幹事長は23日の記者会見で、東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で海上警備行動発令で海上自衛隊護衛艦を派遣する政府方針について「交戦規定や逮捕権などがオープンになっていない。簡単に認めてはならない」と指摘。「社民党や国民新党と極力歩調をそろえたい」と述べ、3党で統一見解をまとめる考えを示した。
 鳩山氏の発言は、同日東京都内で開いた3党幹事長会談で、社民、国民新両党が「海賊対策ならば海上保安庁を軸にすべきだ」と政府方針に反対したことを受けたもの。鳩山氏は、海上保安庁の艦艇を派遣できる可能性について党内で議論するよう直嶋正行政調会長に指示。検討に入った。
 ただ、民主党内では「国際協力活動であり国益に資する」(長島昭久衆院議員)など積極論がある。小沢一郎代表もソマリア海自派遣に関して「他党とは完全に一致するとは限らない」と発言しており、野党共闘を巡る新たな火種となりそうだ。【佐藤丈一】

 雪斎は、ソマリア沖海上自衛隊派遣は、「当然の対応」であると考えている。そもそも、中世期のヴェネツィアにせよ、近代以降の英国にせよ、「海軍」と呼ばれるものの原初的な仕事は、「通商路の保全」と「海賊の退治」であった。他国の艦船と「海戦」」をやるのが、元々の目的であったわけではない。海上自衛隊は、もし実際に派遣されれば、「海軍」として最も原初的な仕事をすることになるわけである。
 もし、ソマリア沖・アデン湾一帯のの海賊に適切に対処しようとしないのであれば、日本には次の三つの対応しか残されていない。
 ① ソマリア沖を航行する民間船舶に「自衛」の権限を認める。
  / 米国において一般市民に銃の所持を認めるのと同じ理屈である。しかし、それは、どうみてもリアリティがない。
 ② ソマリア沖の航行を「通商路」としては諦める。
  / これを、やれば、欧州方面からの物資は、希望峰を大回りしなければ入ってこなくなる。欧州方面に輸出品を送る場合も、同様である。その場合、輸出企業が支払うコスト、輸入品にかかわるコストは、かなり大きなものになる。そうしたコストを支払う意志は、日本国民にあるのか。
 ③ ソマリア沖に展開する各国軍隊に資金拠出で協力する。
  / 「カネで済ます」理屈である。しかし、そうした理屈は、湾岸戦争時に既に破綻している。
 しかし、これらの三つの対応は、実質上、「ありえない」選択である。
 故に、何もしないわけにはいかない。
 「海上保安庁が対応すればいい」という話に、野党三党の方針は落ち着くのであろう。
 だが、その際には、次の二つのことを考える必要がある。
 ① そもそも、日本の沿岸警備を主務とした海保には、外洋で展開できるのか。
 ② そもそも、重火器、ロケット砲も備えているとされる現在の海賊には、海保は対応できるのか。
 雪斎の懸念は、海賊への対処は、海保の現有能力だけで手掛けられる案件なのかということである。こうしたことを顧慮しないで、野党三党が政局優先の観点で海保派遣を訴えるようならば、これは、先々に禍根を残すものになるであろう。今の海保の持つ巡視艇や武器で、対応できるのかは、海保に早急に確認されるべきであろう。
 もっとも、海上自衛隊の出し方も、政府・与党が、かなり苦しい理屈で切り抜けようとしているのは、否定できまい。海自艦艇に海上保安官を同乗させ、海上警備行動の一環として対応しようとするというのは、雪斎には、「巧い」理屈」と「苦しい理屈」の半々という印象がある。故に、「海賊・テロリストへの武力行使は、憲法が禁じている趣旨(国際紛争を解決する手段として)の武力行使ではない」という基本認識の下で、きちんとした法的枠組を構築することを考えなければなるまい。
 このアデン湾一帯の海賊への対処は、純然たる安全保障案件ではない。現下の経済危機を前に、ロシアやインドなどの国々で保護主義の動きが擡頭し、自由貿易体制の条件が軋む中で、その自由貿易体制の条件をどのように護るかが問われる案件である。
 日本国民は、もう少し自由貿易体制から得られる「恩恵」に自覚的にならなければなるまい。

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Comments

この問題で、民主党の平田参院幹事長の発言が嘲笑されてますね。

>「海賊というのは漫画で見たことはあるが、イメージがわかない。ソマリア沖で、日本の船舶が海賊から襲撃を受けて被害を受けたということがあったのか」

民主「海賊対策」視界不良 他の野党に配慮、方針打ち出せず (2/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090125/stt0901252018005-n2.htm

痛いニュース(ノ∀`):民主・平田議員「海賊は漫画で見たことあるがイメージがわかない。日本の船舶が襲撃を受けて被害を受けた事があったのか」
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1211686.html

参院幹事長という民主党の要職にある人物が、この程度の認識というのは、「平和呆け」も極まった感がありますね。こういう人に雪斎さんの意見を理解させるには、どうすればよいのでしょうねえ。

Posted by: Baatarism | January 27, 2009 at 04:57 PM

ただ反対するのではなく、こう言った認識の上で判断しようとする雰囲気が出てくると良いのですが、今更経済危機ばかり報じているメディアしか目にしない方々には難しいかもしれません。
あの程度の給付金で揉めている、ムキになっている政治家の方々の考えがよく分かりません。
変に空気を読んでるのか、世論に気を使い過ぎている政党の方々には今更期待しない方がよいのでしょうか?

Posted by: へきぽこ | January 28, 2009 at 10:16 AM

昨年10月に、民主党・長島議員が衆院テロ特委員会で
海自のソマリア沖派遣を政府に提案した際、
「海保の艦艇派遣は大変難しい」との
海保長官の答弁を引き出してますね。
http://www.peace-forum.com/mnforce/0901somariahahei/07kokkai-01.htm
長島議員は「海自の海上警備行動を決断して欲しい」と結びました。浅尾ネクスト防衛大臣も後押ししていたようなのですが、、、
麻生総理が「大変有意義だが、民主党はまとまりますか?」と危惧した通りになりましたね。

Posted by: さらと | January 28, 2009 at 11:34 PM

はじめまして。
野党側の理屈で奇妙なのは、海上保安庁の巡視船であっても、かの海域に送るならば、武器使用基準の問題だとか外国船の護衛といった問題は出てくるのに、それが綺麗さっぱりと抜け落ちているところですね。

Posted by: フフン | January 29, 2009 at 08:34 PM

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