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January 30, 2009

憧れの人物

■ 幼少の頃に、「憧れの人物」を持つように教えることは、大事なことである。というのも、「憧れの人物」を持つことは、それに近付こうとする努力を要請することであるからである。
 雪斎が子供の頃、「憧れの人物」は、長嶋茂雄、王貞治、ジャイアント馬場であった。
 もっとも、世の中のことや自分自身のことが少しは判り始めると、自分が選んだ領域の先人が、そうした「憧れの人物」になる。音楽の世界では、ヨハネス・ブラームスにとっては、ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンが、そうであったっようにである。
 

 バラク・H・オバマにとっての「憧れの人物」が、エイブラハム・リンカーンであるのは、つとに語られることである。昨年の民主党予備選挙序盤では、「ジョン・F・ケネディの再来」と語られた。現下の危機に対応しようとする施策は、当然のようにフランクリン・D・ローズヴェルトの施策と重ね合わせられる。
 オバマは、あえていえば、ケネディのように清新なスタイル打ち出しながら、、リンカーンのように「国民の統合」を訴え、ローズヴェルトのように経済危機に対処しようとしているわけである。オバマは、連邦議会にに赴き、景気浮揚法案を超党派の体裁で早期に成立させるべく、野党に落ちた共和党の関係者にも働きかけを行ったようである。結局、下院では共和党の大勢が賛成しないで法案が可決されたようであるけれども、オバマの姿勢は、確かに示されているといえるであろう。
 この点でいえば、政治家にとっては、倣おうとすべき人物がいて、その姿勢が「必然性」をもって受止められれば、その政治的な立場は強いものになるのであろう。それならば、現在の日本の政治家は、誰を「憧れの人物」にしているのか。小泉純一郎にとっては、多分に祖父・又次郎が仕えた濱口雄幸だったかもしれないと想像する。安倍晋三には祖父・岸信介、麻生太郎には吉田茂が常に意識する存在であるのは、間違いあるまい。小泉における郵政民営化は、濱口における金解禁のように、命がけで断行する政策にまつわる「熱気」を感じさせたものであるけれども、安倍が打ち出した岸譲りの民族主義的な政策志向は、「必然性」があるようには見えなかった。麻生の執政には、吉田が基盤を作った「経済立国・日本」の崩落を食い止めるという十分な理由があるはずであるけれども、そうした理由は余り伝わってこない。
 もっとも、身内の影が余りにも強すぎるのも、政治家の姿勢とは、問題であろう。因みに、小沢一郎にとっては、大久保利通が倣うべき対象であったようである。どれほど憎まれても、あるいは怖れられても、日本にとっての必要なことをやるというのであれば、小沢には、ぜひ、そうして欲しいものであるけれども、今の民主党の枠組みで、それができるかは定かではない。l
 ところで、雪斎にとっては、少なくとも、二十歳前後の頃に「政治の観察」を一生の仕事と思い定めてからは、政治学者・吉野作造が、そうした「憧れの人物」である。雪斎と吉野には、同郷で同じ誕生日という共通項がある。雪斎も吉野も、宮城県北の大崎平野の穀倉地帯が出身地である。そして、雪斎も吉野も、誕生日は昨日1月29日である。そうしたこともあって、雪斎は、吉野には強い思いを抱いていた。吉野は、デモクラシーの可能性と現実のせめぎあいの部分で絶えず苦闘した知識人であった。そして、吉野の言論も、「右からも左からもたたかれる」類のものであった。
 閑話休題、麻生が行った一昨日の施政方針演説は、「小泉改革路線への決別」と報じられている。
 しかし、このタイミングで、雪斎は下の論稿を書いた。何という馬鹿な振る舞いか。だが、風向きが変わったからといって、宗旨替えをするのも、みっともないであろう。
 ● 「構造改革」いまだならず

 このエントリーでは敬称を略した。

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Comments

さて、歴史の教訓に学ぶとすればどうなるか。
本来オバマ氏が学ぶとすればリンカーンなどではなく、セプティミウス・セヴェルス帝(アフリカ出身!)でしょう。暴君コモドウス(彼もブッシュ大統領同様に世襲)の後を告ぐも、軍事優先路線を捨てきれず、ローマ帝国の崩壊を止められず、カラカラ皇帝の出現を招いた。雪斎さんのお好きなマキャべりは一部肯定の立場ですが、エドワード・ギボンはきびしく批判している。

日本が学ぶとすると南宋で構造改革派の王安石と保守派の司馬光の争いの果てに崩壊した南宋でしょう。北朝鮮などがモンゴルでしょう。構造改革ですっかり国力が衰えた点でも良く似ている。王安石が「飢民の図」を観た皇帝に罷免されたさまなぞ、派遣村の騒ぎと似ていませんか。

ここで軍事路線など走るとアウトですよ。南宋がどうなったかご存知ですか。

Posted by: ペルゼウス | January 30, 2009 at 10:01 AM

ハッピーバースデーツーユー!
おいくつになったのかしら?
45?46?だっけ?
リンク先に飛んで、しげしげお顔を拝見いたしました。おでこに、立派な長い皺が、規則正しく並んでいますね。感心いたしました。
ところで、「構造改革の貫徹」には、反対です。
今は、日本も、オバマ大統領のように、雇用創造のための大公共政策が必要でしょう。
オバマは雇用増、減税という政策を打ち出しましたが、日本では、企業は雇用調整を行っても良いが、政府はセーフティネットをしっかり張る、その負担を企業も少しはする、という政策が良いように思いますね。
寒中、お体をお大事に。

Posted by: 天障院馬姫 | January 31, 2009 at 07:47 PM

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Tracked on February 03, 2009 at 02:00 AM

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