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December 01, 2008

現在進行形の努力と「保守主義」

■ 日本の経済社会の特色は、「老舗企業」が矢鱈に多いということである。
 日本橋辺りに行けば、そうしたものは、当然のように眼にはいる。
 京都には、それよりも、多くの数があるのであろう。
 驚くのは、千年続いた企業というのがあって、それは、宮大工の会社だそうである。

 日本の「保守主義」の精神を最も鮮やかに体現しているのは、こうした幾多の「老舗会社」ではないであろうか。
 こうした「老舗企業」が続くのは、何故であろうか。
 それは、「昔、立派であったから…」ということだけで存続しているわけでもないし、その「過去の遺産」だけで食いつないでいるわけでもない。
 それは、それぞれの時代の当主を中心とした多くの人々の「現在進行形の努力」の集積でしかない。それぞれの世代が、「周囲の評判を落とさぬように…」ということを心がけて、日々、努力を続け、その努力が子々孫々にまで受け継がれてこそ、「老舗」が「老舗」となっているのである。それは、「現在進行形の努力」のリレーである。逆にいえば、どこかの時点で、「過去の栄光」に胡坐をかいたり、時代の要請に向き会わない振る舞いをする人々がいれば、そのリレーを途切れさせることになる。こうして「老舗」が「老舗」であるための条件は、時代の変遷に生真面目に向き合っていく「緊張感」と「ダイナミズム」である。そうした「緊張感」と「ダイナミズム」こそが、雪斎の考える「保守主義」の本質である。「日本の誇り」などと壊れたラジオのように語っている人々が、そうした「緊張感」と「ダイナミズム」を伴っているようには、雪斎には見受けられない。
 ところで、バラク・オバマは、「大恐慌以来の危機」には、「大恐慌以来の対応」で臨むようである、
 「米国には、歴史がない」と揶揄する向きがあるけれども、こうした「現在進行形の努力」が誰の眼のも見えるのは、米国の強さの証明であろう。大体、学者が政権運営に携わるというスタイルも、大恐慌の時代の「ブレーン・トラスト」が原型である。
 翻って、日本である。
 政治家も知識人も、この「現在進行形の努力」を続けるということに、どこまで生真面目に向き合っているであろうか。「過去は正しかったか正しくなかったか」だのという議論に耽っていること自体、そうした生真面目さには、疑問符が付いても、不思議ではあるまい。「老舗企業」を始めとして「実践」を旨とする人々は、「現在進行形の努力」を進めているけれども、政治家や知識人の仕事から、そうした「現在進行形の努力」の形跡が浮かび上がってこないのは、何故なのか。金融危機、テロリズム、少子・高齢化…。考えなければならないことは、あまりにも多い。
 雪斎の言論には、「場当たり的」という評があるようであるけれども、そうした評くらい、雪斎には価値のないものはない。そうした評は、雪斎の相手にするものではない。
 雪斎は、平成とその次の御代を主な活動の時期とするであろう知識人として、その「現在進行形の努力」の一翼を担おうとしているに過ぎない。

 

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Comments

歴史を学ぶことは重要ですが現状分析をして歴史を作る営みがより意味のあることですね、前例主義では柔軟な対応に欠け、今の自民党も民主党も支持率が下がり、民主党支持層でも小沢不支持が多いという現実を打破できるとは思えません。
今後も鋭い切り口を期待しています。風邪がはやっているのでお気をつけ下さい。

Posted by: 星の王子様 | December 01, 2008 at 09:27 PM

老舗が老舗と言われるには やはり 移り変わる時間の中での努力の積み重ね。
これにつきると思います。

国や政府といったものはどうしても図体がでかいので、良くも悪くも実績の積み重ねに終始してしまうところです。

様々な為政者が現れ子孫へ受け継がれ埋没していく…

中世まではそのようなイメージを持っています。

二世議員という言葉が使われ始めた時点で、中世と同じ道を辿るような気もします。


ダイナミズムを求めるのであれば 会社にも国にも 新しい血は必要だと思います。それまで受け継いできた物や血を排除することなく努力を積み重ねてきたものが老舗という形で残っているのだと思います。

今の政治家に必要なのは努力よりも、老舗に見られる、決して驕らないと言う気持ちのように思います。

Posted by: へきぽこ | December 02, 2008 at 11:23 AM

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