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October 02, 2008

鳩山一郎と政党政治家の「質」

 猪木正道先生の著書『評伝吉田茂』は、大学三年の冬休みに読んだ著作である。
 書中、猪木先生は、鳩山一郎という政治家に誠に厳しい評価を与えていた。鳩山は、戦前期に文部大臣として、滝川事件に関与したことがある。滝川事件というのは、滝川辰幸京都帝国大学法学部教授の刑法学説が問題視され、辞職に追い込まれた事件であり、憲法の教科書には、戦前期の「学問の自由」の侵害の事例として載っている。
 事件の舞台となった京都大学法学部に教授として籍を置いていた猪木先生にしてみれば、「『学問の自由』を侵害した鳩山の何処が、自由主義者だというのか」という想いがあったのであろう。

 こういう記事が配信されている。
 □ <代表質問>民主・鳩山氏、「元首相の孫対決」意識し攻撃
                10月1日23時36分配信 毎日新聞
 「あなたの姿勢は92代首相としての品格に欠けています」。民主党の鳩山由紀夫幹事長は1日の代表質問で麻生太郎首相への攻撃姿勢をあらわにした。「元首相の孫対決」を強く意識した論戦となった。
 鳩山氏の祖父一郎は52~54代首相。45年に当時の自由党総裁となったが、46年、首相就任直前に公職追放となり、麻生氏の祖父である吉田茂(45、48~51代)にその座を譲る。祖父同士もまたライバル関係にあった。
 8月に麻生氏が幹事長に就任した時から、鳩山氏は孫同士の対決を意識して「(吉田元首相は)官僚出身で官僚主義の中で行動した。うちのじいさんは政党政治家」と対比。「官主導の自民党政治」の象徴として麻生氏を位置付け、それを打破しようとする自身の姿を重ねていた。
 
 鳩山さんは、戦前期の政党政治失速と「学問の自由」の侵害に手を貸した祖父の事績を、どのように考えているであろうか。戦後、吉田茂が官僚層から人材をリクルートしたのは、鳩山に類する往時の政党政治家を全然、信用していなかったからである。
 官僚層は、国民にとっては、「自分のために働いてもらう人々」である。ただし、「どのように働いてもらうjか」は、政治の側が指針を示す必要がある。こうしたことを顧慮しない官僚批判というものには、余り意味がない。問われているのは、昔も今も政党政治家の「質」の問題である。
 振り返れば、戦前期の政党政治家の失態は、まともに総括されていない。現在、何度でも書くけれども、諸々の経済指標は「景気後退局面」入りを指し示している。こういう状態では、必要な手立てを講じないままに、とても選挙などやっている暇はあるまい。

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Comments

いつの間にか日本は無駄遣いをただただ非難する国になってしまいました。国民の税金がこんな事やあんな事につかわれていると…。 雪斎殿の仰るように官は国民の為に働いく方々と言う前提があってこそなですが、現在はまず非難、まず批判というイメージです。官主導と政党政治のどちらが良くてどちらが悪いのかは分かりませんが、異議を唱えるからにはそれなりの考えがあることは最低限望みたいところです。
ただ、今のこの時期にこのような事で言い争ったり、選挙の事ばかり考えている場合では無いように思います。

Posted by: へきぽこ | October 02, 2008 at 05:17 PM

本題とは無関係ですが、もとマイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏が五井平和財団の2008年度五井平和賞を受賞され、その記念講演が11/9にあります。
詳細は
http://www.goipeace.or.jp/japanese/ho/2008/lecture1109.html

Posted by: 笛吹働爺 | October 05, 2008 at 11:45 PM

多くが移ろい易くただ不安不満の当て付け的な投票に終始する民意に基づく民主主義が、一貫性が求められる逆境への対処に向かないことは容易に理解できます。強大過ぎる官僚機構の負の側面や、小さな政府に向かう必要性は理解出来るものの、国際金融不安に伴う景気後退や少子高齢化による長期的な困難など国民に歓迎されない国政操縦の必要性が今後予測される現状において、既に十分に衆愚の陥穽に入りつつあるように見える政党政治では心許ないというのが正直なところです。不本意ながら、"最も成功した社会主義"をもたらした強権的な官僚主導行政に期待せざるを得ない部分が多分にあるように思います。

本来、衆愚政治や政策の迷走といった民主主義が抱える潜在的宿業を抑えることは、かつて貴族院であった参議院に良識の府として期待された役割の一つであり、それ故の二院制、解散無し任期六年、衆議院の優越等の制度であったはずだと思いますが、それが事ある毎に民意の御旗を掲げる野党に制圧されている現状を見るにつけ、二院制は機能していないと感じざるを得ません。現実に日本の政治を主導しているのはかつての貴族に連なる各地方の名士、雪斎氏の言う"本流"に属する人々であり、彼らは本来参議院に属していることが制度上期待された面々であるけども、慣例的に参議院から内閣総理大臣は出ない為に衆議院議員である動機が生じている。日本国民の参政意識と民主主義とは、善悪は別として、その程度のものであるという現実にも拘らず、法制度と慣例だけはそこから乖離した理念に拠っており、参議院議員には良識から懸絶した人物までもが並ぶ。

立法府の制度設計の現実からの乖離とそれに起因する機能不全が是正されぬまま、霞ヶ関に集中している権限の永田町への移管や、二大政党制への移行が起これば、安定した権力基盤に立って今後必要とされる口に苦い良薬に似た一貫した政策を担い得る主体が存在しなくなります。構造改革と財政再建は為されなければなりませんが、議会の改革を待たず拙速に陥れば景気後退局面における国政の漂流という致命的な事態を再度招くのではないかと危惧します。
浅薄かつ拙い長文で失礼しました。

Posted by: 肥濤 | October 06, 2008 at 05:46 AM

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