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October 27, 2008

今日と明日のことしか考えぬ根太さ

■ 毛利敏彦著『大久保利通』には、田中惣五郎による次のような大久保評が紹介されている。
  「大久保は、今日と明日のことしか考えぬ根太さがあります。将来は将来として、先ず現在をいかによくするか。そのためには、不退転の精神と、理性的な行動を怠らないのです」。
  この大久保評は、木戸孝允に対比されている。木戸は、理念先行型で実際の政策遂行には手腕を余り発揮できなかったのに対して、大久保は、抽象的な理念の類には重きを置かず、眼の前の具体的な課題の処理に精励した。
 ところで、次のような記事が配信されている。

 □ <麻生首相>初の街頭演説はアキバ…解散には言及せず
              10月26日21時39分配信 毎日新聞
 衆院の解散時期を巡り永田町が迷走する中、麻生太郎首相が26日夕、東京・秋葉原で就任後初の街頭演説を行った。06年の自民党総裁選で「オタクの皆さん」と呼びかけて人気を集めた相性のいい街。若者から「麻生コール」を浴び笑顔を振りまいたが、解散に関する言及はなかった。
 党青年局、女性局の共催。麻生首相は、解散に踏み切れない理由の一つとも指摘される世界的な金融危機や景気後退に触れ「中小企業の資金繰りに手当てをします」「日本は日本人が思っている以上に強い」と力説した。後半は、べらんめえ口調に熱がこもり「若いやつが『日本の将来は暗い』なんて顔をするなって。モテたきゃ明るい顔しろ」と聴衆を沸かせた。
 先にマイクを取った石原伸晃・幹事長代理は「麻生に任せるのか小沢(一郎民主党代表)に任せるのか」と衆院選を意識した演説をしたが、当の首相の決断は聞かれなかった。
 江東区の男性会社員(38)は「景気を考えると、麻生さんのような強烈な個性のある政治家がいい」と評価した。鳥取市から出張で来た男性会社員(47)は「麻生さんの若者人気は本当なのか。今、選挙があれば、民主党に入れると思う」と話した。【木戸哲、佐藤浩】

 雪斎も、少なくとも年内の解散は「ない」と思うし、「そんなことをしている場合か…」と率直に思う。本日、日経225は、バブル後最安値更新は間違いであろうし、現在の雰囲気からすれば、近日中に30年ぶりの6000円台に突入することもも措定しておいたほうがいいのかもしれない。
 こうした状態だと、「抽象的な未来」を語ることなどは、政治家には要請されていない。麻生総理には、高祖父・大久保に倣って、「今日と明日のことしか考えぬ根太さ」を発揮して、事に臨んでもらうしかない。これができれば、安倍晋三と福田康夫の二代の総理の早期退陣も、日本にとって「運が強かった」ということになるかもしれない。神は、その局にもっとも相応しい人材を充てたことになるからである。たとえば木戸にも似た理念先行型のの安倍元総理が、現在の危機に対応できたかは、心もとない。
 解散の時期は、日経225が、来年9月までに11000円ぐらいになったら、その時点でよいのではないであろうか。
 もっとも、米国経済情勢に関しては、次のような記事も配信されている。
 □ 9月米中古住宅販売5.5%増の518万戸、3年ぶり前年上回る
                  2008年 10月 25日 03:08 JST
 [ワシントン 24日 ロイター] 全米リアルター協会(NAR)が発表した9月の中古住宅販売戸数は5.5%増の年率518万戸となり、2003年7月以来の大幅な増加率となった。
 エコノミスト予想は販売戸数が493万戸だった。
 販売戸数が前年水準を上回った3年ぶり。前年9月は511万戸だった。
 販売在庫は1.6%減の427万戸。現在の販売ペースで9.9カ月分の供給に相当する。
 一方、住宅価格(中央値)は前年比9%下落の19万1600ドルと、2004年4月以来の低水準となった。
 NARの首席エコノミスト、ローレンス・ユン氏は、差し押さえの増加や住宅市場の落ち込みが大きい地域での投げ売りが全体の販売を押し上げたと指摘した。「一部地域では価格下落により買い手が市場に戻っているもようで、(販売の)増加は好材料だ。市場安定の第一歩は販売の増加であるため、この流れが継続することを期待する」と述べた。後略
 現在に至る世界経済の混乱は、米国住宅市場の状態が好転しないと、どうにもならないといわれた。この記事は、紛れもなく、好転に向けた「ほのかな光」を暗示しているのではないであろうか。
 もしかしたら、様々な意味で「底」が見えてきているのであろうか。そうであることを期待する。
 来週になれば、バラク・オバマが登場して、日米両国に「陽性のリーダー」が揃うことになる。「気」が変わることを期待したいものである。今の暗さは、「午前四時の暗さ」か。

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Comments

>解散の時期は、日経225が、来年9月までに11000円ぐらいになったら、その時点でよいのではないであろうか。

そのためには、少なくとも日銀のゼロ金利復帰や量的緩和、できればそれに加えて国債買いオペの増額や為替相場への非不胎化介入が必要なのでしょうね。ただ、今の白川総裁にはそういうことをやる気はなさそうですが。
今年初めの民主党による日銀人事への介入が、ここに来て与党にボディーブローを与えている状況になってますね。まあ民主党もそこまで考えて反対したわけではないのでしょうが。

Posted by: Baatarism | October 27, 2008 at 10:14 AM

もう一つ思ったことがあったので、連続ですがコメントします。

「今日と明日のことしか考えぬ根太さ」という点で考えると、高橋是清もそういう政治家だったのでしょうね。
政治家や財界人が「財界整理」や「平価を切り下げれば国家の威信を損なう」といった「抽象的な未来」に囚われていたあの時代に、裏白紙幣や金解禁再停止などの「今日と明日のことしか考えぬ根太さ」を体現したかのような経済政策を打ち出したのですから。
そして経済危機が去った後に、インフレ抑制という「今日と明日のこと」を行おうとした結果、軍事予算縮小を憎んだ軍部によって2.26事件で殺害されたわけですが、彼ら軍部もまた「抽象的な未来」に囚われていた人たちでしたね。

P.S. このコメントを書くのに、日経BPの金子直吉伝を参考にしたのですが、この連載は面白いです。雪斎さんも読んでみてはどうでしょうか?鈴木商店の栄光と没落がよく分かります。

金ぴか偉人伝
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20080624/163454/

Posted by: Baatarism | October 27, 2008 at 01:42 PM

たしか吉田茂の回顧録だかにも、戦後直後の統治をふりかえって、今日明日のことだけで大変で先のことまで考えられなかった、みたいなことが書いてあったような。
最初読んだときは一瞬、んな無責任なと思いましたけど、ちょっと考えたら、おっしゃるような図太さでもある。それに、本当に先々のことを何も考えなかったというはずがないですし。

おそらく麻生さんを最後に自由民主党は終わってしまうんでしょうが、最後の総裁が近代日本保守政治の嫡流中の嫡流だって、なんとも感慨深いです。

Posted by: jura03 | October 27, 2008 at 11:00 PM

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