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August 27, 2008

グルジア危機

■ 早速、とんでもない話になりそうである。
 □ 南オセチア、アブハジアの独立承認
     8月26日21時43分配信 時事通信
ロシア南部ソチで、テレビを通じて国民向けの声明を発表するメドベージェフ大統領。グルジア領の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認する大統領令に署名したと言明した(26日)
 □ EU、対ロシア制裁も=対決姿勢鮮明に-欧州諸国
     8月26日22時29分配信 時事通信
 【パリ26日時事】ロシアがグルジア領の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認したことについて、欧州諸国は26日、一斉に遺憾の意を表明、ロシアとの対決色を鮮明にした。欧州連合(EU)は9月1日、グルジア問題に関する緊急首脳会議を開く予定で、ロシアへの対抗措置や制裁を求める動きが強まるのは必至だ。
 
 ロシアが南オセチアとアブハジアの独立を承認したということの意味は、裏返せば、「グルジアの解体」がロシアの目標として明確に設定されたということである。

 ロシアは、南オセチアやアブハジアの独立を承認しないようにとの米国の要求を蹴った。ロシアも、米国・欧州連合も、この件では引き下がれないところまで来てしまった感がある。
 雪斎は、こたびのグルジア危機に関する限り、ロシアの立場には同情的である。冷戦期、米国とソ連の間には、「互いの勢力圏には手を突っ込まない」という暗黙の合意ができていて、それが「永い平和」の条件であったけれども、米国の対グルジア政策は、ロシアの勢力圏に手を突っ込むような性格が誠に濃厚である。ポーランドやバルト三国のように元々はロシア帝国の版図に含まれていいなかった領域ならばともかくとして、ウクライナやコーカサスのように元々はロシア帝国の内にあった領域までも離反していく現状を前にして、ロシアが、次から次へと身包みを剥がされている印象を抱いたとしても、何ら不思議ではない。以前のエントリーでも紹介したように、ジョージ・F・ケナンは、1990年代にNATOの東方拡大に懸念を示していたのであるけれども、ケナンの懸念は、正しかったのではないか。
 とはいえ、日本政府の対応としては、最後には、米国と欧州連合の側に立つしかない。こうして考えると心配なのは、来年のサミットが現行のG8の枠組のままで行われるかということである。「元々、G7だったのだから…」という向きもあるかもしれないけれども、ひとつの枠組が壊れることの負の意味は、軽視しないほうがいいであろう。もっとも、日本はグルジア危機では当事者ではないのであるから、当初は、仲介者として振る舞うことは可能である。「ロシアを決定的な孤立に追い込まない」という配慮は、大事であろう。
 「北京の祭り」が終った途端に、この有り様である。北朝鮮も、「非核化作業の中断」という茶々を出している。そういえば、ロシアは、「六ヵ国協議」の構成国でもある。グルジアに絡む米露対立が、「六ヵ国協議」での議論にも持ち込まれれば、朝鮮半島情勢ですら不透明になる。こうして、国際情勢は、ビリヤードの球のように、一つの球の動きが予期せぬ様々な球の動きを呼び起こす。
 ここからは、本当に気合を入れた情勢観察が必要とされよう。

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Comments

ロシアの身包みをはいでいく過程で少なからず米は関与していたとすれば今回の件は米もある程度予測していたとおもいます。EUもエネルギー関連でロシアと繋がりがある以上。昔のようにはいかないと思います。オセチアにはグルジアから独立したいと思ってきた人々もいるみたいなので、ロシアとしては親露的な地域は欲しいと思います。グルジアがNATOに入って今まで以上にロシアを刺激するよりは今回の形はもしかしたら必然なのかもしれない、と思います。

Posted by: へきぽこ | August 27, 2008 at 09:48 AM

私もこのことに限って言えばロシアに分があると思います。
このグルジアの悲劇には学ぶところは多いはずです。親欧米路線をただひたすらとり続けて、最後はこの憂き目を見たとしか言いようが無い。そらアメリカの軍事顧問団を呼び寄せたり、イスラエルとの二重国籍者を防衛の最高責任者につけたりしたら、ロシアも激怒して当然。アメリカはこれでマケイン氏が再び脚光を浴びるから、現政権は内心ほくほく顔でしょう。

これを利用してロシアと何か大きな取引ができるといいのですが・・・。

Posted by: ペルゼウス | August 28, 2008 at 12:52 AM

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