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April 11, 2008

チベット騒乱への視点

■ 「憤兵は敗れる」という言葉は、『漢書』に出てくる言葉である。同じ『漢書』に次のような記述がある。
「利人土地貨寶者、謂之貪兵、兵貪者破」(人の土地、貨宝を利する者、之を貪兵と謂う。兵が貪る者は破れる)。
 要するに、それは、「他人の土地、財貨、宝玉を手を入れようとして行われた軍事行動は、貪兵と呼び、その軍事行動は必ず自らの破滅をまねくであろう」でという意味である。
 チベットの話が何故、これほどまでにヒート・アップしているのか。チベットは元々、漢民族の土地ではない。故に、ダライ・ラマが亡命する契機となった一九五〇年の「チベット解放」なるものは、その実態は、「人の土地、貨宝」を手に入れようとした「貪兵」の振る舞いだったということになる。戦前は、たとえば満州をめぐって日本の「貪兵」に抵抗していたはずの中国共産党は、戦後に政権を掌握した後は早速、自ら「貪兵」の振る舞いに手を染めたのである。
  故に、もし、今の中国に、往時の日本における石橋湛山のように、「チベットを放棄してでも、国際社会の協調を図ることが大事だ」と唱える人物があれば、今後の中国の隆盛は間違いなく続くのであろう。そうでなければ、中国共産党政府も、「貪兵は破れる」の例外ではありえないことになる。その「破」がどのようなものであるかは定かではない。日本としては、その「破」の火の粉を被らないようにした上で、高見の見物を決め込むのが賢明であるかもしれない。
 福田康夫総理は、中国共産党政府を一貫して「甘やかす」姿勢をとり続けるのであろう。そうした「甘やかし」は、普通に考えれば、中国共産党政府の「破」を促すことになる。雪斎が中国の影響力を削ぐことを考えるならば、そうした「甘やかし」は、充分に有効であろうと思われる。「親中派」、「媚中派」と呼ばれる人々のほうこそが、実は中国政府にとっては危険な存在であるという逆説も、成り立つのである。
 ところで、聖火リレーは、長野でも行われるようである、
 雪斎は、リレーそれ自体は粛々と混乱なく進めるのが、よろしいであろうと思う。ただし、沿道は、チベットの民衆との連帯を標榜する横断幕なりチベットの「雪山獅子旗」なりで埋め尽くすのである。これで、整然と「行事」と「抗議」を笑って同時に進める日本人の不気味さが世界に伝わることになる。ぜひ、やってもらいたいと思う。

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「国際情勢」カテゴリの記事

Comments

中国にも、このような冷静な意見はあるようです。

http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/d0f2c0a6721568bfa2b986c52837268e

ただ残念なことに、石橋湛山と同様、この意見も今はまだ少数派なのでしょうが。

あと、聖火リレーも混乱するでしょうが、もし胡錦涛主席が予定通り来日することになったら、日本だけでなく世界中から抗議デモが押し寄せるかもしれませんね。何しろ中国の最高指導者が先進国に来る千載一遇のチャンスですから。

Posted by: Baatarism | April 11, 2008 at 10:12 AM

これは同感ですね。
なるほど、そういうわけで日本はイラク戦争を支持したと考えればいいわけですね(笑)。よく超大国は追従者を大切にするけれど、真の友人なら厳しい忠告もし、またそれを受け入れるはずで、帝王は諌臣なくしては成立しない。

歴史的に観ると、こういう場合、「芸」が必要になるんですな。帝が諌めれれると激怒し、「出てゆけ!」と諌臣を一時的に追放するも、ほとぼりが冷めてから「すまん、ああせんと周囲に弱いと思われるのでな」とこっそり呼び戻すという芸がね。

しかし「帝」や「王」という存在を否定した人民には「諫言」というのが「大衆の声を無視するのか」という罵声に変わりかねない。憤兵のネタは数え切れず、不安な時代が続きそうですな。「人民」や「大衆」など「自警団」にすらなりかねず、かといってあまりに「声」を無視すると「帝は道を誤る」事になる。

国際世論というものは恐ろしいものだと改めて思います。この覚酔した「帝王」がどういう方向を目指すのか、環境ファシズム、人権ファシズムにたどりつくのか。グローバリズム=八紘一宇の時代に我々はいるのだと改めて痛感します。

Posted by: ペルゼウス | April 11, 2008 at 10:52 AM

かつての支那では皇帝(及び外戚・宦官)と官僚が互いに牽制しあってチェックアンドバランスが機能していました。

今は官僚しかいませんので、組織管理の面から言えば後退しているとすら言えます。

現在の中共執行部は優秀ですのでうまくいっていますが、ひとたび無能な権力者がトップに立ったら、皇帝制よりも弱いかもしれません。皇帝にはカリスマがありますが、出世街道を上り詰めただけの官僚のトップにはカリスマはありません。失政即亡国でしょう。

まあ結局今の支那がうまくいっているのは、共産党が曲がりなりにも青雲の志をまだ残して頑張っているからであって、共産党であるから人民がしたがっているわけではないと言うことに、若い共産党員達がどれだけ気がついているかですね。

Posted by: べっちゃん | April 11, 2008 at 09:28 PM

こんばんは。
今回のチベット騒乱で、石橋湛山の植民地放棄論を連想するというのは、非常に鋭い視点ですね・・・。
そういえば、吉野作造が「朝鮮問題を根本的に解決するが為には、外面上一番猛烈なる排日的分子とまず提携するを心掛くべきである」と主張していたことを思い出しました。
まさに「中国政府はダライラマと対話せよ」ですよね。

朝鮮独立運動に関しては、当時の日本では「誰の陰謀か」とか「誰が黒幕か」とか、そんな事ばかり論じられていたのですが(これも今の中国の状況に似ています)、吉野はこれは「他を責めるに急にして、自ら省みる余裕がない」とバッサリ切り捨てます。
そしてこう論じます。

「いずれにしても、我々の自己反省を欠くの態度が、今日どれだけ外交的失敗の原因を為しているか分からない。人は云う、国際関係は殺伐だと。けれども、一面に於て世界は割合に公平である。我々は事実の公平明白なる諒解の上に、道理によって問題を解決せんとする態度さえ誤らなければ、世界的共同生活の中に帝国の地歩を確立するに、毫も困難はないと思う。この考よりして吾人は、国民に向かって対外的良心の発揮を力説するの必要、今日より急なるはないと考うるものである」

吉野の議論は極めて示唆に富むものですね。
中国が、かつての日本と同じ孤立と戦争の道を選択するか、世界のリーダーになれるか、分岐点に差し掛かりつつあるような気がしています。

Posted by: 板倉丈浩 | April 12, 2008 at 01:09 AM

2ch界隈ではこんな感じで動いてるみたいです。

「聖火リレーでチベットを応援しよう」まとめサイト
http://www8.atwiki.jp/winwin/pages/1.html

Posted by: 月研住人 | April 13, 2008 at 05:10 AM

日本での聖火リレーは妨害しないでちゃんと挙行させ、その沿道を埋めた人々はチベットの雪山獅子旗を掲げて、中共の武装警察によるチベット人弾圧に整然と抗議すべしとの貴論に賛意を表します。
しかしそれは《日本人の不気味さ》ではなく《日本人の美質》と表現すべきではないかと存じます。
日本政府は聖火リレー警護の青装束団、中共武警の入国を認めないとまっとうな対応を示しています。
日本での聖火リレーは粛々とニュースになりようがないほど静かに挙行させるべきでしょう。
そして八月八日八時八分、北京五輪大会を滞りなく開始させ、いつの間にかに終わらせ、世界は速やかに過去のものとすべきでしょう。
つまり中共が北京五輪大会は大成功だったと称賛し自己賛美し続けても大会が終了したら世界は大会そのものをビナイン・ニグレクトするのです。
もう一切ニュースにしないで静かに無視するのです。
しかし大会中は参加選手の活躍をしっかり応援してあげましょう。
選手が個人レベルの友宜を互いに結ぶのは構いませんが、マスコミがそれを取り上げて「日中友好」などという国レベルの虚構を煽っても冷静に眺めているだけにしましょう。
これから大会までテレビ、新聞、雑誌などのマスコミ媒体は北京五輪大会を盛り上げようとさかんに報道し煽るでしょうが日本人も世界も冷静にビナイン・ニグレクトをモットーに臨むべきでしょう。

Posted by: しなの六文銭 | April 13, 2008 at 09:47 AM

チベットについては、この3つのブログは必見でしょうね。

福島香織さんの「北京趣聞博客 (ぺきんこねたぶろぐ)」:イザ!
http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/

天漢日乗(その中の「ラサ燃える」シリーズ)
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/

カトラー:katolerのマーケティング言論
http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/


特に、これはリンク先も含めて見ておいた方がよいです。

天漢日乗: ラサ燃える(その36)ヒマラヤ越えで仲間が中国国境防衛軍兵士に射殺された子どもが描いた絵 拷問される僧侶の絵も
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/04/36_eacf.html

ただ、宗教というのはどんな酷い弾圧や迫害でも消すことはできないんでしょうね。日本の隠れキリシタン弾圧やヨーロッパにおける長年のユダヤ人への迫害が、その一例だと思います。

Posted by: Baatarism | April 13, 2008 at 12:58 PM

「利人土地貨寶者、謂之貪兵、兵貪者破」

>沖縄米軍基地?

Posted by: heibay | April 14, 2008 at 06:52 AM

残念ながら、聖火リレーが行われたマレーシアのクアラルンプールでは、こんな事件が起こってしまったそうです。

マレーシアの聖火リレー、抗議の日本人3人が保護される
http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/news/topic/news/20080421-OYT1T00517.htm?from=navr

>北京五輪の聖火リレーが行われたマレーシアの首都クアラルンプールで21日、リレーのスタート前に「フリー・チベット(チベットに自由を)」と叫んで、チベットの旗を掲げた日本人3人が、中国系とみられる人々に取り囲まれ、殴られるなどしたため、現場にいた警察官に保護された。
>小競り合いがあったのは、リレーのスタート地点に近い場所。地元警察などによると、3人は若い男女2人と男児1人で、このうち男性が、中国国旗を持った数十人の若者らに取り囲まれ、殴る蹴るなどされた。3人にけがはないという。

どうやら、「沿道は、チベットの民衆との連帯を標榜する横断幕なりチベットの「雪山獅子旗」なりで埋め尽くす」だけでも、中国側の暴力を誘発する危険性がありそうですね。
4/26に長野でチベット旗を振る時は、中国側の「暴徒」から身を守る覚悟が必要なようです。

Posted by: Baatarism | April 22, 2008 at 03:25 PM

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