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January 10, 2008

国連旗を持った中国人民解放軍

■ 色々な可能性を考えておく必要がある。
 □ 北の緊急時、軍派遣 中国、核の安全維持計画 米シンクタンク
                   1月9日8時1分配信 産経新聞
 【ワシントン=有元隆志】中国人民解放軍などの北朝鮮専門家が米研究者に対し、北朝鮮で不測の事態がおきた場合の対応として、人民解放軍が北朝鮮に入り、核兵器などを管理する可能性を語っていたことが、8日まで
に米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のまとめた報告書で明らかになった。
 報告書によると、中国の北朝鮮専門家らは、北朝鮮の状況について、安定しており、金正日総書記の急死などの事態がない限り、今の状態が数年以上は続くとみている。ただ、不安定化の可能性が増すことを懸念している。
 北朝鮮が不安定化した場合の中国の優先課題は、国境から難民が押し寄せてくることを防ぐことで、軍を北朝鮮国内に派遣することもあるという。その場合、国連と緊密に連携し、承認を得たほうが望ましいものの、北朝鮮の急激な崩壊に対して、国際社会の対応が適切でないと判断したときは、中国単独で軍を北朝鮮国内に展開し、安定回復を図ることを優先するとしている。
 軍を北朝鮮に派遣する際の目的としては、(1)難民支援などの人道的な役割(2)平和維持など治安の安定(3)中国国境沿いにある核施設から核汚染がおきた場合の環境保護、核兵器や核物質の安全確保-の3つの可能性があると指摘した。
 中国の専門家からは、核兵器や核物質の安全確保という「共通の目的」のため、北朝鮮の安定に関し米側と公式ルートで議論を行いたいとの意見もあった。一方で、そのような議論は「時期尚早」という研究者もいたと、報告書は記した。
 報告書はCSISの研究員らが昨年6月、中国を訪れ、中国の研究機関や人民解放軍の北朝鮮専門家らとの討議をもとにまとめた。

 このCSIS報告書「手に負えない隣人を注視する」(Keeping an Eye on an Unruly Neighbor)は、昨年12月27日付で出されたものである。『産経』記事が言及したのは、報告書の21ページにある次の記述である。

  Chinese Responses to Instability
In the event of instability in North Korea, China’s main priority will be to prevent a flood
of refugees by assuring supplies of food and strengthening border controls. PLA officers
maintain that they would attempt to close the border, but admit a lack of confidence that
they could do so successfully, since the border extends 866 miles and can be easily
penetrated. If deemed necessary, PLA troops would be dispatched into North Korea.
China's strong preference is to receive formal authorization and coordinate closely with
the UN in such an endeavor. However, if the international community did not react in a
timely manner as the internal order in North Korea deteriorated rapidly, China would seek
to take the initiative in restoring stability.
According to PLA researchers, contingency
plans are in place for the PLA to perform three possible missions in the DPRK. These
include: 1) humanitarian missions such as assisting refugees or providing help after a
natural disaster; 2) peacekeeping or “order keeping” missions such as serving as civil
police; and 3) “environmental control” measures to clean up nuclear contamination
resulting from a strike on North Korean nuclear facilities near the Sino-DPRK border and
to secure nuclear weapons and fissile materials.
Chinese analysts deny that there are circumstances under

 この太字にした部分が「肝心」の記述である。
 雪斎は、このCSIS報告書と同じ趣旨のことを一昨年十一月発売の週刊プレイボーイ」に示したことがある。だから、この「国連旗を持った人民解放軍」という議論には驚きはない。
 一昨年秋に示した所見は、下記の通りである。実際に記事になっていたのは、「国連旗を持った人民解放軍が鴨緑江を渡る」云々という件であった。当時でも、「国連旗を持った人民解放軍」という話は、突飛だったということであろうか。

〈週刊「プレイボーイ」の問い〉
米朝ともにエスカレートした場合、いずれにせよ北朝鮮の崩壊は避けられないように見えます。
ではハードランディング(急速な体制自壊、もしくは南侵)を避けるために、中国はどのように動くでしょうか?
また、日本はその際、どのように振舞うべきなのでしょうか? 対米追従一本槍でいいのでしょうか?
(実際、国務省シナリオからの逸脱は非常に難しいとは思いますが)
今回の事態に限らず、中・長期的なシナリオと考えても結構です。
※ある方は、中国が金正日をクーデターで飛ばして、親中政権を据え、バッファゾーンとしての北朝鮮を維持するというシナリオを披露してくれました。が、政権中枢を失ってもなお、官僚機構が崩壊せず、国家機能を維持できるとは、彼の国の場合、考えにくいと思うので…
〈雪斎の答え〉
原則上、「ハード・ランディング」は、避けなければならない。
「ハード・ランディング」の結果、どのような事態が生じるかは、誰にも予測が付かない。
国際政治対応に際して、「糸が切れた凧」のような状態を創りだす施策は、避けなければならない。
ただし、そろそろ、「金正日以後の朝鮮半島」のイメージは、考えておく必要がある。
想定されるシナリオは、次の四つである、
① 統一朝鮮の登場、「北朝鮮」を韓国が完全に吸収する。
② 南北朝鮮連邦国家の樹立。二つの国家を存続させ、外交権は「南」が掌握。
③ 中国の「衛星国」としての「北朝鮮」の存続。
④ 中国による「北朝鮮」の直接統治、この場合、中国「北朝鮮省」という扱いになる。
この内、③のシナリオが一番、無難だろうけれども、④のシナリオも考えられなくはない。
もう少し事態が悪化すれば、国連旗を持った人民解放軍が鴨緑江をわたるという話も絵空事ではない。
2008年北京五輪、2010年上海万博を控えている中国政府が、この国際イヴェントを安心して迎えるために、金正日排除に動いても不思議ではない。
日本にしてみれば、朝鮮半島を「無害化」できれば、③でも④でも構わない。
その意味でも、中国との連携を密にしておくことは大事である。

 無論、昨年、「米朝接近」が進展したから、この記事の議論は前提から崩れているといえるかもしれない。とはいえ、北朝鮮それ自体の「不安定性」が払拭されたわけではない。だから、こういうことは何時でも考えておく必要があるのである。逆にいえば、雪斎は、CSIS報告書と同じことを考えていたようであるということを確認し、結構、安堵している。
 ところで、今年は、米国のシンクタンクも、忙しい時期に入るであろう。シンクタンクに身を置いている人々は、政権で腕を揮えるかが掛かる数ヶ月である。故に、大統領選挙の動向も大事であるけれども、米国の数々のシンクタンクが、どのようなレポートを出してくるかも注目しておく必要がある。

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