« 「感染爆発」 | Main | 冬の「不安」 »

January 19, 2008

「官製不況」、否、「永田町不況」か。

■ 何故か、一週間もエントリー更新を怠ってしまった。
 一昨日、楽しみにいていた「リッカルド・シャイー指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団」来日公演が、指揮者であるシャイーが急病により中止になったと伝えられた。雪斎は椅子から転げ落ちるほどの衝撃を受けた。このショックは大きい。サントリー・ホールでの公演を二日連続でS席で聴くはずだったのだが…。
 ところで、「小泉純一郎の遺産」と考えられたものは、次の三つである。
 ① 自民党の議会内優位
 ② 磐石な日米関係
 ③ 好調な経済情勢
 小泉元総理が退任した折、これだけの条件が安倍晋三前総理に引き継がれた。1988年に中曽根康弘元総理が竹下登に引き渡したのも、同じ条件である。

 この内、昨年の参議院選挙で①の条件は消えた。②も、小泉時代に比べれば、明らかに冷めたものになったといえよう。「補給活動継続特措法」が成立したとはいえ、一旦、インド洋から退いた日本は、同盟国としての「信頼性」を確実に減らした。そして、遂に③の条件も消えて行きそうな雰囲気である。景気失速の足音が大きくなっている。「格差」批判とは、年が明けてから聞かれなくなっている。時代の「空気」も変わりつつある。
 ともあれ、この数ヵ月、雪斎は、政治家の「意志」が伝わる言葉を耳にしたことがない。「何が何でも、これをやる」という熱が伝わる言葉を耳にしたことがない。日銀総裁にしても、「利上げしたいのにできない」というニュアンスの発言しかしない。経済閣僚からは、「事態を見守る」という発言しか聞こえてこない。「これが経済立国・日本の姿か…」と率直に思う。
 民主党は、今次通常国会を「ガソリン国会」にすると息巻いているらしい。だが、「揮発油税暫定税率の見直し」などという話は、民主党のマニフェストのどこに書かれているのであろうか。何時ものように、政府・与党を追い詰めるためのネタが見つかったと思って、飛びついたというのが実相であろう。同じ民主党でも、共和党の大統領やFRB理事長と一致して「景気失速」を防ぐべく手を打とうとしてしている米国民主党とはだいぶ、様相が違う。具体的に、暫定税率見直しが、今の経済状況に照らし合わせて、どれだけ必要度の高いものであるかという説明は行われていない。
 故に、もし、此度の経済情勢への対応に失敗して再び経済低迷局面を迎えるようなことになれば、雪斎は、「永田町不況」とでも名付けて、呼び慣わすことにしよう。無論、「永田町不況」を起こした責任には、自民党、民主党の区別はない。
 「『善きにつけ悪しきに付け我が祖国』とは、愛国者ならば絶望したときを除けば決して口にしようと思わないものである。それは、『酔っていようと素面でいようと、我が母親である』というのと同じ類の言葉である」("'My country, right or wrong' is a thing no patriot would ever think of saying except in a desperate case. It is like saying 'My mother, drunk or sober.'")。ギルバート・キース・チェスタトンの言葉である。
 雪斎も、「善きにつけ悪しきに付け我が祖国」と口にしたくなった。雪斎は、「愛国者」を自認しているけれども、このところ久し振りに日本の政治の現状に「絶望したとき」を迎えているのであるから、チェスタトンの言葉の意味するところは、よく判る。シャイー&ゲヴァントハウスという当代最高の芸術に漬かる機会を逸するは、政治の現状を観るのも「つまらない」と感じるはで、雪斎の心理状態も最悪である。
 どうしましょうか。

|

« 「感染爆発」 | Main | 冬の「不安」 »

「学者生活」カテゴリの記事

Comments

 以下、クラシック音楽好きの方に何を場違いな、と思われるでしょうが…

東京国立近代美術館フイルムセンターで、
http://www.momat.go.jp/FC/fc.html
「生誕百年 映画監督 マキノ雅広」をやっています。(2月19日からの(2)の方に、傑作が多いようです。)

この監督、傑作に任侠ものが多く、その点で先入観をなくせない人、肌に合わない方にはむかないようです。

私の個人的なおすすめは、
http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2008-03/kaisetsu_51.html
ですね。

Posted by: MUTI | January 19, 2008 at 09:58 AM

日銀の責任も大きいでしょうから、「永田町・本石町不況」とでも呼んだ方が良いのかもしれませんね。
この状況で利下げすらできない福井総裁はやはりダメだと思いますよ。次の日銀総裁はそういう判断ができる人でないと困ります。

Posted by: Baatarism | January 19, 2008 at 10:52 AM

また雪斎さん冗談が上手い。
世界に合わせなければならないとさまざまな「改革」をした結果が今の不況でこら「グローバリズム不況」以外の何ものでもない。通常国会が開かれて福田首相の話が新聞に載ってたのを読みながら「こら雪斎さん怒るだろうな」と思っていたら案の定。でも「フリーダム!」を叫びながら「アメリカのポチといわれようがかまわない」と言っていた矛盾こそがまさに露呈したのじゃないですか。それなら今の自民党のスタンスは正しい。

世界の一員になる事は利益もあるが不利益もある。
その不利益を「大事の前の小事」と片付けていたら、「小事」が溜まってそれこそ「一大事」になって日本はこうなった。所詮日本人などどこの国から観ても「ジャップ」であり、それ以外の何ものでもない。

小泉首相の「遺産」とおっしゃられるが遺産は「負」の遺産もあるだけで、また世界が変われば遺産の価値も変わる。遺産などあてにしないのが「フリーダム!」の精神なのに「遺産」を口にするのもおかしいじゃありませんか。

「自助」の精神など「戦争犯罪国家」「大国追従国家」にふさわしくはない。小さい国日本にふさわしいのは何とか生き延びる道を模索するくらいではないですか。

まあこの狂った世界ではそれも難しいことですが。


Posted by: ペルゼウス | January 19, 2008 at 11:13 AM

 既に、アメリカは外需へ活路を求めている。住宅問題で内需が駄目だから。これぐらいドル安になれば、米だって売るものはいくらでもある。日銀は、動かないほうが良い。そうすれば、ゆっくり円高になる。米の利益にも、さらに、インフレが日本に及ぶ危険を防ぐにも円高、ドル安のほうが良い。
 日本にとっては外需が駄目になるから、内需経済へ早く移行するべし。内需拡大には、中流以下の人に、金が回るようにするしかない。金持ちに金を回しても、生き金にはならない。預金するのみだから。さらに預金も借り手がないので、死に金になり、デフレ要因になる。
 福田総理は、徐々に、構造改革路線を捨てている。自ら、官房長官だったから、公然と、構造改革路線を誤りだといえないだけだ。中川昭一氏も、財政出動解禁を唱え始めている。
 中流以下の懐をあつくする内需拡大政策に明瞭に舵を取れば、平均株価は大きく上がる。主役は、鉄鋼、電力、ガス、建設など内需株になる。
 内需拡大政策に転換できなければ、平均株価は1万円を割る。おそらく、8000円台になる。
 福井総裁は可もしくは良。次の総裁は、バランスシート不況
を認識しており、利下げでなく、利上げを探る総裁が望ましい。
 財界総理も、キャノンではなく、イオンの岡田氏のような内需企業が望ましい。

Posted by: はかたのさとう | January 19, 2008 at 01:29 PM

エントリには福田総理を直接批判する言葉がありませんが、雪斎さんは以前から福田氏を高く評価していたでしょう。指導力、リーダーシップを重視する雪斎さんが、いかなる意味において福田総理に期待されたのか、確かに調整能力や実務能力には長けているかもしれませんけど、総理になるまではっきりとしたビジョンを世に問うたこともなく、今も何をやりたいのかが見えてこないという状況は予測されていたのでしょうか。内容の評価はともかく安倍、麻生といった人は著書を読めばビジョンは伝わってきますよね。

内が厳しい時には外交で得点を稼ぐのがセオリーだと思いますが、訪中にせよそれ自体が重要ともいえますけど、大きな歓待を受けましたが、日本側にとって、まだ具体的な成果というほどのものは見られない。

確かに個人としては見識のある方だと思いますし、国会の状況ゆえに難しいというのもわかりますが、そろそろカラーを出していくべきでしょうし、2/3再議決にせよ解散権にせよ、そういう意図で使わなくてはと思います。消費者重視というのはまとまったビジョンに成りうるものではありますし、まあこれからサミットに向けて、福田カラーが鮮明になっていくことを願いたいですが。

Posted by: 枳殻 | January 19, 2008 at 02:15 PM

雪斎さん 

こんばんは。

小泉元総理の遺産をどれだけ有効利用かつ、持続的なものにできるか、出来たのかが重要であり、負の遺産もあるでしょう。それには、どれだけマネージメントやケアで最小限に抑えられるかが重要でしょう。

外交・外政というのは、特段事情がなければ国民の注目も少なく、又、少なくなり海外との認知や認識の差異も生まれる。されど、その特段の事情が起こった時には、手をくれというものです。

福田カラーなどいらないのです。それが福田カラーです。目の前にある取り組まなければいけないことを淡々とすればいいのです。

Posted by: forrestal | January 19, 2008 at 07:45 PM

>>
ともあれ、この数ヵ月、雪斎は、政治家の「意志」が伝わる言葉を耳にしたことがない。「何が何でも、これをやる」という熱が伝わる言葉を耳にしたことがない。日銀総裁にしても、「利上げしたいのにできない」というニュアンスの発言しかしない。経済閣僚からは、「事態を見守る」という発言しか聞こえてこない。「これが経済立国・日本の姿か…」と率直に思う。
<<

全く同意であります。
福田内閣に国民が求めた役目、すなわち「混乱収集」はもう終わった。
とすれば、福田内閣が、「この内閣は日本にとって必要な内閣である」と国民に納得させることができないのであれば、そういうふうな指導力をもたないのであれば、既に役割を終えた内閣であり、長続きすることは日本を停滞させることになる。

そう思います。

Posted by: 妖怪 | January 19, 2008 at 07:59 PM

こんばんは、雪斎さん

 一技術者の私としては、小泉時代の最大の遺産であるとともに負債である規制緩和が問題ではないかと考えます。
 当時就職氷河期という雇用者に対するテンポラリで非正規雇用を用いたというのもあるでしょうが、長期的に考えれば雇用システムを柔軟にすることにより、例えば地方で資本が無いベンチャーでも、アイデア次第でハイテクローテク問わず産業を興す事が出来る。またスキルやノウハウを持った人がより良い職場に移ることにより、淘汰のシステムが働きダメな会社は消えて、社員に然るべきインセンティブを支払う会社が生き残る。そうなるはずだったのではないでしょうか。

 しかし実際のところ地方では新しい産業は殆ど興らず、産業を興すための間接的な役割のはずの派遣、請負業種が気がつけば地方の雇用を賄う主業種になってしまった。
 人間を右から左に流すだけで付加価値の低い産業が地方の新興産業になってしまったわけです。

 国民の暮らしをよくするのは内需、外需にかかわらず、付加価値の高い産業をどれだけ創出できるかであると考えます。それは別に製造だけでなくサービスでも金融でも何でもいいわけでありまして、その付加価値の高い産業を生む制度、付加価値の高い産業で能力を発揮できる人材をどのように創生するかをさらに考えなければいけなくなってるのでしょう。
 それを成し遂げるためであるならば規制緩和なり規制強化なりどちらでもよいと考えます。規制緩和、強化は所詮道具であり、人間にとって有用であるならば好きに使えばいいわけです。

 個人的には規制強化しても法律なんて守らない企業は守らないので、無駄な法律作って無駄な人間を雇って無駄な税金を使うのは御免こうむりたいんですけどね。本当のところは…。

Posted by: ぬねね | January 20, 2008 at 12:47 AM

皆様、
雪斎の随想録を讀むのを止めて田中宏和の世に倦む日日を読みましょう。
thessalonike唯では偏ると謂う御仁には池田信夫氏や子飼弾氏、
小倉秀夫及山口貴士弁護士、
大蟻喰女史や松浦晋也さんといった諸氏のblogも御覧になりましょう。
雪斎様
別口の記事を優先する為、予告したエントリーは書けません。
申し訳在りません

Posted by: 赤木大介(akakiTaisqe) | January 20, 2008 at 01:53 AM

赤木大介さん 横レスですが
ブログのコメント欄は、自分の意見を書くべき場所です。自分の意見を述べずに、当該ブログを「読むのをやめて」などと書き込むのは、著しくマナーに反する行為であり、今後止めていただきたい。
なお、私は「世に倦む日日」は、読むに足るほどのブログであるとは思っていません。悪しからず。

Posted by: 珈琲 | January 20, 2008 at 08:56 AM

 付加価値の高い産業などが、すぐに生まれるはずがないでしょう。一方、経済は、人が死ぬか生きるかの、まさに生き物です。だから、バラマキだろうと、何だろうと、手段として排除すべきではない。
 大量に血を流している患者がいれば、フィブリノゲンだろうと使うしかない。それしかなければ。
 後で、肝炎になったら、それはそれで仕方がないのです。
 ワーキングプアや地方の農民は、大量出血患者。悠長なことを言ってもしょうがない。

Posted by: はかたのさとう | January 20, 2008 at 09:28 AM

珈琲様 上のわたしの書き込みは
http://sessai.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_ca03.html#comments
http://sessai.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_0be7.html#comment-16840075
で「年明け22日の思想地図シンポジウム合わせでもう少し突っ込んだ事を書きますが」と予告したにも関らずそれが出来ない事への陳謝です。
一言だけ意見を述べると、このblog等で雪斎様等のやられている一連のことは「言論」では無く「陽謀」です、自民党の政策秘書をやられていた頃はインサイダーなのだから批判するべきではないと思っていましたが辞められてから益々酷くなっているように感じられ嫌味を表明した次第です。
更新が止まっているので挙げませんでしたが萱野稔人のmouraでの連載http://kayano.yomone.jp/
内藤朝雄の論文や告知を掲載するいじめと現代社会BLOG
http://d.hatena.ne.jp/izime/
も挙げます。小飼弾氏を子飼弾と表記してしまいました、すみません

Posted by: 赤木大介(akakiTaisqe) | January 20, 2008 at 04:31 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/17742775

Listed below are links to weblogs that reference 「官製不況」、否、「永田町不況」か。:

» 民主党「ガソリン値下げ隊」 [歌は世につれ世は歌につれ・・・みたいな。]
木走日記さんのエントリー(こちら)を参考にさせていただきました。ありがとうございます♪ ***♪民主!♪ ガソリン値下げ隊 この暫定の 税率延長止めて 日切れ廃止へ 気まぐれな政策 野党のせいよ Wake Up! こりゃどうなるかな 民主! 民主! 民主! 揮発油の税をやめて 声あげて 訴えて 解散にしちゃいたいの 民主! 民主! 民主! めぐり逢ったこの時を 逃さないで ずっとずっと ああ天下は民主 つらい 小沢氏の気合の 決意の中に 約束した過半数... [Read More]

Tracked on January 20, 2008 at 11:03 PM

« 「感染爆発」 | Main | 冬の「不安」 »