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December 03, 2007

「富」に関する一論

■ 確かに、十月半ば以降は、個人投資家にとっては散々な時間だあった。
 □ ロイター個人投資家調査:サブプライム問題による株安対応、「塩漬け」が82%
 [東京 30日 ロイター] ロイターが実施した個人投資家11月調査によると、米国でのサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題を背景に世界的に株式市場が不安定な状況にある中で、多くの個人投資家が株式売買を手控え、82%が保有株を「塩漬けにしている」と答えた。一方、18%が「現金化」したと回答したが、そのうち過半が相場動向を見て株式市場への再投資を考えている。
 …中略
 調査期間中は、原油先物が一時1バレル=99ドルを超す水準まで上昇し、過去最高値を更新した。日経平均株価は、サブプライムローン問題を発端とする信用収縮懸念の強まりなどから下落に拍車がかかり、年初来安値を更新。節目となる1万5000円を割り込む場面があった。質への逃避行動の強まりで投資家の債券に対する投資意欲が高まり、10年最長期国債利回り(長期金利)は約2年2カ月ぶりに1.4%を下回った。外為市場では、米国でのサブプライム問題を背景にドル安が進み、約2年半ぶりのドル安/円高水準になった。
 <株価下落で保有株式「塩漬け」が82%、「現金化」は18%>
 サブプライム問題を発端とする信用収縮で株価水準が下がったことに伴い、対応を聞いたところ「塩漬けにしている」との回答が全体の82%となる一方で「現金化した」との回答は18%にとどまった。
 …中略
 「現金化した」と答えた回答者に今後その現金をどうするか聞いたところ、全体の63%が「タイミングを見て日本株に投資する」、27%が「別の金融商品に投資する」と答える一方「そのまま預貯金にしておく」との回答は11%にとどまり、様子見姿勢ながら株式に対する投資意欲が根強いことが示された。
 「タイミングを見て日本株に投資する」と答えた回答者からは「外需に頼らない割安銘柄に投資」(30代・男性)、「買いのタイミングがくれば業績の良い銘柄に」(20代・男性)、「底打ちを実感できたら買い方にまわる」(40代・男性)、「日経平均が1万4500円程度になってから」(60代・男性)──などの指摘が出ていた。
 一方で、「別の金融商品に投資する」との答えからは、外為証拠金取引や新興国投信に対して興味を示す声が少なくなかった。
 …中略
 日本株への投資スタンスを示すロイター個人投資家DIはマイナス48となり、前月のマイナス22から大幅に悪化した。前月に続き2006年1月の調査開始以来、最低の水準を更新し、投資マインドが急速に悪化している。
 年齢別にみると、「弱気」の割合は「50代」(82%)で最も多く、「60代」(75%)がそれに次いだが、全ての年齢層で60%超となり、「強気」の割合を大幅に上回った。
 「弱気」な回答からは「サブプライム問題絡みの損失が今後も膨らむ懸念有り」(40代・男性)、「外需依存型の経済だから」(20代・男性)、「中国は五輪の建設需要が一段落して、外需主導の景気もピークを打ちそうだから」(40代・男性)、「円高、原油高などで将来の企業業績が不透明」(60代・男性)、「政局が不安定」(40代・男性)──などの指摘があった。
 一方「強気」な答えからは「業績に比べて売られ過ぎ」(30代・男性)、「日本企業の基礎体力が強く、新興国の経済が好調」(60代・男性)──などの声が出ていた。
 …後略

 株の世界でいうところの「損切り」をやった人々が二割にも満たないというのは、どういうことであろうか。雪斎は、割合、簡単に「損切り」をやって行動の自由度を確保するのがよいと思う質なので、「塩漬」というのを余り好まない。一つ、二つの銘柄で「損」になっても、全体として「益」になっていれば、それでいいと思っている。今年も、めでたく、それなりに「益」を出して終わりそうである。とりあえず、十月半ば以降の「下降局面」の「底」は、先週だったようであるけれども…。
 下掲は、昨日付「東奥日報』に載せた原稿である。日本は、「豊かな国」であると漠然と思っている人々は多いかもしれないけれども、結局、「無資源国」である現実は何ら変わらない。唯一の資源である「人材」も絶対数が減り続ける情勢である。「カネによってカネを殖やす」金融資本主義の論理に精通しなければ、先々、「ジリ貧」であろう。中東産油諸国も、石油が枯渇すれば「ただの砂漠の国」になってしまう。同じような切迫感は、どれだけ日本にはあるであろうか。
□ 「金融立国・日本」の条件
 米国においてサブプライム・モーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅ローン)の焦げ付きに端を発した金融不安の浮上は、八月以降、世界経済の動向に暗雲を投げ掛ける要因として認識されてきた。日本においても、並行して進行した株価低落、円の急騰、原油価格上昇という三つの現象は、過去五年近くの景気回復局面に悪しき影響を及ぼすものと懸念されているのである。
 こうした金融不安の払拭に一役を買うかもしれないと期待されているのが、政府系ファンド(SWF)である。最近は、この政府系ファンドの動向が注目を集めている。たとぇば、サブプライム・ショックの悪影響による業績悪化が懸念される米国金融大手の一つであるシティ・グループには、UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ投資庁(ADIA)から七十五億ドルの出資が行われると発表されている。同じくUAEの一つであるドバイの政府系ファンドは、ソニーに対する大規模投資を行ったと伝えられる。加えて、中国の外貨準備の一部を運用する中国投資有限責任公司が日本株への投資を拡大するとも報じられている。特に二〇〇〇年以降、中国やロシアは経済発展の結果、中東諸国は原油価格の急騰の結果、それぞれ莫大な「富」を手にするに至っている。こうした新興諸国からの資金還流の経路が主要先進諸国に向けて開かれようとしているというのが、現下の状況である。
 こうした政府系ファンドには、明確な「論理」がある。中東諸国の場合、それは、将来の資源枯渇や価格変動に備え、現下に手にしている巨額の「富」を有利に運用するというものである。UAEに代表される中東産油諸国は、石油資源が枯渇すれば「砂漠の無資源国」に転落せざるを得ないし、シンガポールも狭小な無資源国であることには変わりがない。これらの国々にあっては、将来にわたって国家の財政基盤を確固ならしめるためには、現存の「富」の目減りを防ぐことだけでは不十分であり、それを「富が富を生む」構図の中に放り込んで殖やしていくことが、大事なことであると認識されているのである。
 振り返れば、一九八〇年代後半、日本の「ジャパン・マネー」は、世界に脅威として受け止められ、東京は、ニューヨーク、ロンドンに並ぶ「世界の金融センター」の一つと語られたものである。日本企業がニューヨークのロックフェラー・センターを買収したのは、その時期の象徴的な風景である。しかし、その後の「バブル」崩壊は、日本の「金融立国」への道を遠のかせた。因みに、「バブル」崩壊後、不動産価格が下落した東京・汐留や品川の土地を実質上の底値で買い叩き、再開発を進めることで資産価値を高め、巨利を博したのは、シンガポールの政府系ファンドであった。こうした金融資本主義の「戦場」においては、日本は、決して成功を収めているわけではない。しかし、日本もまた金融資本主義の「戦場」における成功を必要とする「無資源国」である現実は、何ら変わらない。
誰でも、「裕福な生活」をしたいと願うものである。日本の昔話は、男子ならば「長者」に成り上がり、女子ならば「長者の嫁」になるという大団円を迎えるパターンが多い。『桃太郎』、『わらしべ長者』は、その事例である。それは、そのまま、「誠実に真面目に努力を怠らなければ、何時かは『長者』として豊かな生活が送れる」という日本の庶民の願望と信念を反映しているのである。ただし、そうした昔話は、「裕福な生活」のなかで生きる「知恵」を何ら教えてはいない。鬼が島で鬼退治をして宝物を持ち帰った後の「桃太郎」は、どのような生活を送ったのか。このことを実は誰も明確に語り得ないという事実は、日本において、「どのように富を生かすか」ということについての認識が希薄であることを示唆している。今後の日本は、少子化が加速度的に進行し、唯一の資源である「人材」も減り続ける趨勢にある以上、劇的に「富」を蓄積する機会に再び恵まれるとは考えにくい。現存の「富」を生かし、それを将来の世代のために役立てる仕組の構築は、轍鮒の急であるはずであるけれども、そうした構築の作業は、金融資本主義の論理に対する「濡れ手に粟」といった類の誤解によって邪魔されている。嫉妬の感情が入り混じった「卑小な正義感」ほど、有害なものはないのである。
『東奥日報』(2007、12.2)掲載

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Comments

雪齋さんの意見はその通りだと思いますが、一連の金融政策には一刻も早く安全保障の概念を導入していただきたいと思います。ミカンやサンショウの葉っぱをせっせと与えてアゲハチョウの幼虫を育てていたとはずなのに、蛹からかえったのは寄生鉢でしたなんて結果は大いにあり得ますから。そのためには、国益の定義も急がねばなりません。

Posted by: みけねこ | December 03, 2007 at 01:57 PM

かくいう私は塩漬け男です。
昨年からみなハズレで、このところはヤケくそ・・
情熱が薄れて・・みんな漬けたままです。
これじゃ・・いけませんよね。

米国ですが、変化の早さはさすがですね。
宅地が下がったら農地の値段が騰がりだし(笑)
炭鉱資源関係は活況、輸出企業も活況・・
環境問題への取り組みが草の根で拡大しています。

とにかく、行く川の流れは絶えずして・・・ですね。


Posted by: SAKAKI | December 04, 2007 at 10:37 PM

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