« SHMーCDを聴いてみる。 | Main | 豪州の転機・続 »

November 26, 2007

豪州の転機

■ 確かに、国際政治の世界は 絶えず転変する。
 □ <オーストラリア>総選挙 ハワード長期政権に国民「飽き」
                 11月24日22時10分配信 毎日新聞
 【シドニー井田純】24日行われたオーストラリア総選挙は、野党・労働党が11年ぶりに政権を奪回した。次期首相となるラッド労働党党首(50)は「変化」を求める有権者の審判を受け、イラク駐留部隊の撤退など独自色を発揮するとみられる。ハワード首相(68)にとっては、長期政権に対する国民の「飽き」に加え、米国との「近すぎる」関係も敗因となった。
 …中略
 また、経済成長優先の立場から米国と同じく京都議定書の批准を拒否したハワード首相に対し、労働党は批准を公約。豪州を襲った記録的な干ばつ被害で国民の環境問題への意識が高まる中、首相の拒否はマイナスに作用した。国民1人あたりの温室効果ガス排出量で米国と1、2位を争う豪州が政策転換に踏み切れば、「ポスト京都議定書」議論に影響を与えることになる。
 外交面でもラッド氏は「独立した外交政策」との表現を用い、ハワード政権の対米追随路線の転換を主張し、支持を広げた。労働党は、イラクとその周辺に展開する約1500人の豪軍のうち戦闘部隊550人を撤退させる方針を示している。
 ラッド新政権は、米国との同盟関係を維持しつつ、中国などアジア諸国との関係強化を図っていくとみられる。対日外交については、積極的な発言を繰り返したハワード首相に比べ、ラッド氏は控えめな印象を与えている。3月に調印した日豪安保共同宣言の枠組みについても、現状維持の消極的な姿勢に転換するとの見方が強い。

 この「政権交代」は、日本にとっては、「吉報」か、それとも、「凶報」か。
 結論からいえば、これを「吉報」と解するか「凶報」と解するかなどは、どうでもいいことである。豪州国民の選択に云々しても意味はない。要は、豪州での「政権交代」という環境変化に、どのように機敏に反応するかということでしかない。
 気になったことがある。一部メディアでラット新首相の「親中派」ぶりが強調されて紹介されているということである。ラッド新首相が「親中派」である故に、今後の日豪関係が難しいものになるであろうというニュアンスが伝わっている。しかし、「親中派」、「反日」、「反米」といった言葉で物事が判った気になるのは、止めた方がよいのではなかろうか。
 もし、ラッド新首相が中国との密接な関係を築いているのであれば、中国が今まで以上に国際常識に則った振る舞いをするように、ラッド政権からの働きかけを促すべきである。「好きか嫌いか」「ではない。「使えるか使えないか」である。ここからは、ラッド政権をどのように利用するかということに知恵を絞るよりほかはない。
 この点、豪州が「京都議定書」に乗ってくるのであれば、これは、日本にとっても大いに歓迎すべきことである。「環境」を軸にして、ラッド政権への「接近」を図るべきであろう。旱魃被害が相次いだ豪州で「環境保護重視」への転換に弾みが付くのであれば、日本にとっても、この機を逃すのは愚かである。場合によっては、「環境」を話し合う来年の洞爺湖サミットの時期に合わせて、ラッド新首相に訪日してもらえるようにすればよろしい。
 十九世紀後半、オットー・フォン・ビスマルクは、フランスの孤立化を狙った対外政策を一貫して進めたという説がある。その説は、実態としては誤りである。ビスマルクは、エジプトに英国が手を出してきた折には、フランスの立場を支持しているのである。ビスマルクは、その意味では、全然、「反仏」とはいえない。政治とは、そうしたものである。
 そういえば、北海道・羊蹄山周辺は、豪州人相手の別荘が続々と建っているそうである。彼らは、わざわざスキーをしに来るのである。外国人には、政治に余計な影響力を行使しようとしない限りにおいて、どんどん日本にきてもらえればよい。「自分の資産」を預けている国のことを無視できる人々は、ほとんどいないであろう。日豪関係は、こういうところでも結び付きつつある。「観念の遊戯」ぐらい阿呆らしいものはない。

|

« SHMーCDを聴いてみる。 | Main | 豪州の転機・続 »

「国際情勢」カテゴリの記事

Comments

僕も「親中派」については別に気にしなくても良いと思うのですが、労働党が選挙前に日本の調査捕鯨に対して軍隊を出動させる考えを示したことは気になりますね。さすがに即軍隊出動になるとは思いませんが、やはり相当厳しい態度で臨んでくるものと思われます。
自分のブログでも書いたのですが、どうも捕鯨問題と慰安婦問題は状況が似ているように思うんですよね。だから捕鯨問題が日豪間の波乱要因となる可能性は十分あると思います。
この記事では雪斎さんに捕鯨問題を論じて欲しいと勝手なお願いを書いていますが、こういう世界中で感情論が横行する問題こそ「非道雪斎」の本領発揮かと思って書いてみました。もし興味がありましたらお願いします。m(_ _)m

http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20071120

Posted by: Baatarism | November 26, 2007 at 12:28 PM

豪州に対しては、日本はかなり強力な切り札はありますよ。例えば鉄鉱石、石炭の半分以上は日本向けで、資源開発に日本が深く関与してきたですから。ただ、中国鉄鋼業界というプレイヤーを加えての三画関係で、これからは少しややこしくなるとは思いますが。環境と資源、この二本柱で、アプローチすべきでしょう。

Posted by: M.N.生 | November 26, 2007 at 05:28 PM

豪州の選挙結果は、先日の日本の参議院選を巡る状況と非常に酷似していたように思います。少し下世話な表現をするなら”KY”というのでしょうか、ハワード氏は空気を読み間違えたのではないかと思います。少なくとも一年前の段階で労働党は泡沫扱いであったはずです。
一昨年の今頃でしたか、中東(主にレバノン系でしたでしょうか)の移民の暴動(若年層中心)があり、さらに昨年の春、イスラエルのパレスチナ/レバノン侵攻を受け、かの地でも反ブッシュと親米ハワード政権への反発が中東系の人々を中心に高まります。(5月だったのか、シドニーなど主要都市で大規模なデモがありました。)しかしその段階では、多数派の感覚としては反米感情よりも、イスラム系にたいする反発の方が勝っていたように感じていました。オーストラリアの一般の人々はどちらかというと保守的、というのか、過激な行動(ばか騒ぎは別ですが)を嫌う傾向が強いので。
しかし大きく流れが変わったのは、数ヶ月前のブッシュ訪米ではなかったのでしょうか。何とも間が悪いというのか・・・、労働党はうまく立ち回ったということなのでしょう。

Posted by: 小規模投資家 | November 27, 2007 at 01:41 AM

それから親中にとどまらず、Rudd氏は移民に対する姿勢の違いが受けたのかもしれません。白豪主義からの転換はすでに進んでいるものの、ハワード政権は中東系の暴動など背景に、移民政策の見直しを進めていたようです。英語の水準に加え、オーストラリアへの忠誠心とまではいわないものの、オーストラリア社会への適応能力を問おうというものです。市民権付与の際の試験にオーストラリアのシンボルの知識を問うといった計画を当地の新聞で読んだ記憶があります。
イスラム系と中国系移民の急増を受け、社会の統合に対する漠然とした不安を政権の担当者として感じ取ったのでしょう。
(イスラム系と中国系住民は母国の文化・宗教・地縁に強いアイデンティティを持っているため、特に目立ちます。)
しかし反米感情とともに、このあたりが移民とリベラル層の反発を招いたのかもしれません。
人口減少を受け、移民受け入れの論議が始まっているわが国にとっても、今後のかの国の推移は注視に価値のある野ではないかと思います。

Posted by: 小規模投資家 | November 27, 2007 at 01:53 AM

連続投稿、お許しください。

もう一点今回の選挙結果をうけ、今後見落としてはいけないのは、オーストラリアが対日に限らず地域の安定に対して果たしていた役割です。あまり日本では話題になることはないように思いますが、豪州は東チモール等、良くも悪くも地域の安定化に積極的に関与してきました。乱暴な言い方をするなら、ハワード政権は「プチアメリカ」といいますか、地方警察のような振る舞いではなかったかと思います。東南アジア各国(特にインドネシアなど)も夫々国内に火種を抱えており、新政権が一国主義に戻るとしますと、重石の外れる当該地域は少なからずきな臭くなってくるのかもしれません。わが国にとって中東・欧州等西側からの物流経路も当該地域に重なっており、気になります。杞憂であればよいと思いますが・・・。

Posted by: 小規模投資家 | November 27, 2007 at 02:03 AM

まず戦争、しかも向こうから一方的に仕掛けてくる戦争を予想すべきでしょうね。これは大変な事になりましたぜ。環境ファシズムですよ。わすれちゃいけない。ヒトラーも環境保護論者でしたよ。

私はここで何度も申し上げていましたけれど、「柔」の外交はより向こうの強硬な思想を生むだけで、「慰安婦問題でも屈服したのだから、捕鯨問題でも屈服しろ」とタカ派まるだしの姿勢に転ずる事は必至でしょう。いまさら方向転換しても「日本がまた叛いて来た」と向こうは絶好の口実を見出す事は確実で、欧米圏という事でまず国際社会でもオーストラリアは捕鯨ファシズム、環境ファシズムで世界をリードしようとし、アメリカ中心主義に反発する国際社会もこれに同意、無論中国・韓国も日本を押さえつけるカードとして同意し、日本は外交的にも軍事的にも敗北。グローバリストの人たちの進めてきた世界政策の果てがこれです。

まずは話し合い。これが大切ですが、向こうが支持率アップを狙って強硬姿勢(まず間違いなくそうなる)を取るのなら、韓国の「犬食」の問題を取り上げる事(これも間違いなく向こうは攻撃の目標にしてくる)やインドの牛の問題など、食のナショナリズムの問題を取り上げる事で向こうに圧力をかける事が必要になります。

あともう一つ大切なのが「憲法9条」をオーストラリアに押し付けるという点。

日本も大きな犠牲を払い、捕鯨産業の人たちは生活を失う。またオーストラリアがこれからも覇権に訴えて外交を解決しないようにするため、「オーストラリアも憲法9条を受け入れよ」と宣言するのです。内政干渉だと向こうも反発するでしょうけど、向こうも内政干渉するのですから当然だといえばよい。
そうなると反戦か環境保護かでリベラル派は分裂し、左翼的な思想は環境保護と平和・反戦主義が一体になっていますから、労働党の政治基盤は分裂し、政権も危うくなるでしょう。

その上で向こうが捕鯨船に攻撃を仕掛けてくるのなら、「オーストラリアは動物の命を人間の命に優先した」と非難して新たなるヒトラー、優性思想主義国としてオーストラリアの評判を悪くするのです。

ただ何よりも大切なのは向こうから仕掛けさせる事です。
戦いは手を出したほうが負けです。

Posted by: ペルゼウス | November 27, 2007 at 10:39 AM

あと親中派だからといってオーストラリアと中国が仲良しになるというのは実はそう簡単ではないと思います。

というのは京都議定書署名、環境ファシズムという事になれば途上国である中国とは必ずしも権益が一つになるものでもない。中国や途上国は膨大な人口を抱えていて、環境保護を進めることには限界があり、環境を守れといってもハイゾウデスカと応じる事は実は出来ない部分がある。

この部分を利用して中国・オーストラリアの仲を裂くという事は極めて重要であり、これとミヤンマーの情勢を利用して「環境ファシズム・人権ファシズム」のへ脅威を広げられれば必ずしも日本不利とはなりますまい。

Posted by: ペルゼウス | November 27, 2007 at 11:16 AM

私の考えでは捕鯨問題で譲るのは何ら屈服を意味しません。

この問題は日本が一方的に仕掛けています。
例えばザトウクジラ捕殺の追加の件です。 あれを追加するとその調査なるものがどんな風に進展するのか、日本人ですら充分に説明を受けていません。

豪州は鉄鉱石の6割、製鉄用原料炭の5割、燃料用ウランの2割、天然ガスの1割などを黙々と供給してくれています。 いずれも日本の産業全体の死命を制する重要な基礎資材です。 そしてこの総てで日本は中国と買い付け競争を演じており、しかも振替え先がないのです。 このことが日本の交渉上の切り札とのご意見がありますが、私には全く逆のように見えます。

この微妙な時期に日本がたかがザトウ50匹などにこだわって、重要な友邦の人々の気持ちを逆撫でするのが国益に適うとは思えません。 調査捕鯨は行きがかりにとらわれず原点から見直すべきです。

Posted by: げんた | December 04, 2007 at 09:58 PM

「兵を向ける」という事を軽々しく発言すると言う姿勢が危険だと申し上げているのです。

正直捕鯨産業がどうこういうより、国を預かる人間が「武力」を口にし、相手を脅したから要求が通るという事では「ほら、ジャップは脅せばいう事を聞く」と考え、さらに高飛車な物言いをしてくる事は十二分に考えられる。いったん「力」に訴える哲学を身に着けたものは次に何をするかは歴史が証明してます。

だからこそ「憲法9条」を突きつける必要があるのです。「覇権」という思想をもつ国が増えるという事自体大問題です。またそういう国と日本が深い関係にあるという事は日本が戦争に巻き込まれる可能性があるという事であり、資源を多く頼っている国に従えという考え自体、危険極まりない。たとえば「憲法を変えろ」とか「日本の投票権を寄越せ」という内政干渉にまで発展し、日本そのものを作り変えるという危険極まりない考えになってゆく事も十分に考えられる。

「環境保護」を訴える人間が戦争という最大の環境破壊を何故認めるのか。鯨を守るためには人を殺してよいという考え方がファシストの発想でなくてなんでしょう。

これからは「憲法改正」どころか「憲法を世界に広げる」戦略の方が正しい。私はそう考えます。

Posted by: ペルゼウス | December 06, 2007 at 02:00 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/17179923

Listed below are links to weblogs that reference 豪州の転機:

« SHMーCDを聴いてみる。 | Main | 豪州の転機・続 »