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October 18, 2007

テロ対策の意味

■ 従来型の「国家間戦争」とテロリズム制圧を比べれば、テロリズム制圧のほうがはるかに難しい営みである。
 たとえば、次のように考えてみる。
 国家間戦争・・・・・猛獣退治のスタイルである。
            「猛獣」の心臓か脳天を撃ち抜けば、総てが落着する、
            / 敵国の「政治中枢」さえ潰せば、戦争は終わる。
 テロリズム制圧…「毒蜂」退治のスタイルである。
            「毒蜂」は、うっかりすると、窓の隙間辺りから入り込んでくる。
            一匹や二匹の「毒蜂」を退治したところで、解決にはならない。
            「巣」を見つけても、「巣」を力任せに壊すという対応は採れない。
 こうしてみると、「毒蜂」退治には、「猛獣」退治とは明らかに異質の対応の仕方が要請される。

 「テロリズム制圧に武力行使は有効なのか」という疑問は確かにある。答えは、「従来の武力行使のスタイルでは駄目だし、武力行使という選択肢それ自体の効果にも限界がある」である。核抑止は、テロリズム制圧には役に立たないことが象徴するように、「国家間戦争」の折の武力行使のスタイルでは対応できないと見るべきなのである。大掛かりな戦車部隊、戦闘機部隊、艦隊がテロリズム制圧に役立つと考えるのは、率直に無理である。故に、テロリズム制圧の武力行使のスタイルは、どちらかといえば警察の仕事に近似したものになっている。実際、たとえばドイツでテロ対策特殊部隊として名を馳せているGSG9は、国境警備隊所轄の部隊であり、フランスでテロ対応を担っているのが、「国家憲兵隊」と訳されるジャンダルムリである。
 こうしたものの他に、テロリスト・グループを封じ込めるための方策を二重三重に積み重ねる必要があるわけである。具体的には、第一に、カネがテロリスト・グループの手に渡らないようにすることであり、第二に、モノ(武器・機材)がテロリスト・グループに流れないようにするうことであり、第三に、ヒト(人材)がテロリスト・グループに集まらないようにすることである。第一と第二は、日本では金融庁や財務省・税関の仕事である。第三は、テロリスト・グループを一般民衆から浮いた存在するという意味では、民生安定や教育支援などの多面的な対応を必要としている。これもまた、軍隊が請け負ってきた「仕事」とは異質のものである。
 米国が何故、イラクなどで苦労しているかといえば、従来型の「国家間戦争」の乗りで「テロリズム制圧」をやっているところがあるからである。ようやく、米国も反省し、「ソフト・パワー」を使って、テロリスト・グループを一般民衆から浮いた存在にすることを模索し始めたようであるけれども、遅きに失した感がある。
 かくして、テロリズムと制圧という課題には、「軍事」と「非軍事」の両面の対応が必要になる。「毒蜂」退治には何が要るのか。蜂に刺されないように身を守る「防護服」、蜂の巣を丸ごと収める「麻袋」、蜂の動きを止める「スプレー」などを備えていないと対応できない。普通の人々は、蜂の巣を観たら絶対に手を出すなと教えられる。テロリズム対策には、それに相応しい万全の備えが要るのである。そうした備えを持った組織が、民間の手で構築できるなど絵空事である。軍隊や警察のような「暴力」を背景にした国家組織に期待するしかないのである。
 民主党は、アフガニスタンでのISAFの中でも、民生活動に特化した対案を検討していると伝えられた。軒下に巨大な巣が出来ていて、家の中に蜂が何匹も入り込んできて困っている「アフガニスタン家」の爺さんと婆さんの介護と子供たちの世話をしにいくのであれば、自分が蜂に刺されないように「防護服」を着ていくのは、当然の準備である。蜂の「駆除」をやってはいけないというのであれば、これは最低限の準備である。他の国々は、蜂の駆除もやり蜂に刺されながら活動を続けている。中には、オランダやカナダのように、「もう、やってられない」と言い出す国々も、出てきているのである。
 結局、日本にとっては、アフガニスタン家の外の「休憩所」で、ミネラル・ウォーターを配ったり炊き出しをやっている役割の方が、間違いなく楽だと思う。そうした役割に文句を付けている国々もないし、むしろ感謝されている。もっと大きな役割を果たしたいというのであれば、憲法を変えて「海外での毒蜂駆除」もできるようにするしかない。今は、「補給活動」継続が、最も「費用対効果」の高い選択である。この話に何故、一、二ヵ月も時間を費やすのか。

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Comments

>>こうしてみると、「毒蜂」退治には、「猛獣」退治とは明らかに異質の対応の仕方が要請される。

御意。
私の見るところ、(話は現代に限ってですが)テロへの対応でまがりなりにも成功しているのは、イスラエルしかないと思います。それはテロを防ぐという意味でなく、テロは起こるし無くならないという前提で徹底して対応しているからでしょう。テロが起こっても何事も無かったかのように振る舞い、同時に徹底的に報復する。それが彼らの対応で、結局毒蜂にさされても大丈夫なように毒の免疫をもつことということ。けれども、これは彼らの歴史と宗教の強靭さがあったればこその対処方で、他の国にはとてもとても・・・・。

Posted by: M.N.生 | October 19, 2007 at 11:48 AM

テロに攻撃される時のことは、おっしゃられる例えのとおりと思います。
それをアフガニスタンのように、テロと言われる人々が攻められる側に回っている話につなげるのには違和感があります。
今のアフガニスタンは、一面ひところのベトナム。
タリバンはテロではなくゲリラと言ったほうがすっきりしますが。

Posted by: 武藤 臼 | October 19, 2007 at 11:51 PM

アフガニスタンやイラクのような国民国家として統治するための文化的基盤をもたないような国家(地域)を、日本やドイツのような既に共同体として統一的な運営がなされていた国家を占領するのと同様の発想で上手くやれると考えることに元からムリがあると思います。
テロ組織とは別に、特にアフガンでは戦国武将が群雄割拠するような状態に近いわけで、テロ組織の(孤立化と)殲滅や暫定的な占領統治ということを越えて、「国づくり」のレベルで考えないといけないでしょう。
けれども、現実には、国際的には独立国家として扱いながら、実態は戦国武将の割拠する状態でほとんど放置することになるのでしょうね。イラクもアフガンも。

Posted by: 妖怪 | October 20, 2007 at 07:32 AM

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