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October 30, 2007

「石油の一滴は血の一滴」

■ この事件の意味を真剣に考える必要がある。
 □ 日本のタンカー、海賊がソマリア沖で乗っ取る
10月29日20時59分配信 読売新聞
 【シンガポール=花田吉雄】国際海事局(IMB)海賊情報センター(クアラルンプール)によると、アフリカ東部ソマリア沖のアデン湾で日本時間28日午前11時16分、パナマ船籍で日本企業が所有するケミカルタンカー「ゴールデン・ノリ」(6253トン)から、「海賊に乗っ取られた」との救難信号が入った。
 乗組員は韓国人、フィリピン人、ミャンマー人の計23人で、日本人はいない。インド洋での海上阻止行動に参加しているパキスタン海軍の艦船が追跡したが、タンカーはソマリア領海に入ったといい、同センターは米海軍など周辺国に事件発生を連絡、協力を要請した。
 ソマリア近海では近年、組織化された海賊による船員の誘拐や人質事件が多発している。IMBによると、今年1月から9月末までの間に、未遂も含め26件の海賊事件が発生している。
最終更新:10月29日20時59分

 海賊を追跡したのは、「海上阻止行動」に参加しているパキスタン海軍艦艇であったようである。このパキスタン海軍艦艇に、日本の海上自衛隊部隊は「補給活動」を行っていたのである。日本船舶がソマリア近海における海賊の襲撃に遭ったのは、此度が最初のようであるけれども、「今まで襲われていなかったのが不思議だった」というのが真相のようである。ソマリア近海、アラビア海周辺の西インド洋海域は、ホルムズ海峡を抜ければペルシャ湾に至り、紅海を経てスエズ運河を抜ければ地中海に至る海域であるから、「オイル・ロード」、あるいは「世界の海上物流」の十字路みたいなところである。そこでの安全航行の確保が「日本の富」の前提の一つであるのは、間違いあるまい。こうした事件が起こってみれば、「補給」活動を続ける続けないという議論が、どれだけ阿呆な議論かが浮かびあがってくる。海賊を放置すれは、「日本の富」の前提である西インド洋海域の安全が損なわれる。もし、海賊に対して日本の自衛隊部隊が直接に対処できないのであれば、それに対処している他国の海軍部隊を支援するのは、日本としては当然の対応である。「誰の利益のために動いているのか」を真面目に振り返るべきであろう。それとも、この事件を軽視する人々は、「日本人が被害を被っていない」という言辞でごまかすつもりであろうか。
 石油に関していえば、原油価格は、1バレル100ドル到達目前の情勢である。暫く前に、「100ドル到達」という予測をゴールドマン・サックス(だったかな)が出したとき、耳を疑ったものであるけれども、この予測が現実のものになりそうである。下の『エネルギー白書2004』のデータを視ると、1970年代前半に1ドル台であった原油価格は、第一次石油危機を期に4倍に跳ね上がった。そして、2000年に26ドルであったものが、今は90ドルを越えた水準である。二〇〇〇年代の原油価格の急騰には、投機の要素も絡んでいるとはいえ、驚きを感じる他はない、。
 60余年前、「石油の一滴は血の一滴」といわれた。日本にとっての対米戦争も、「石油」を絶たれるという絶望感から始まった戦争である。今、「カネさえあれば、どこからでもモノが調達できる」と単純に考えられているとすれば、それは、かなり危険なことである。海賊が「海賊」ではなく、テロリストとしてタンカー爆破などをやり始めたら、どうするのであろうか。やはり、日本は、まだ寝ぼけているのであろうか。

 □ 長期的原油価格の推移
年 ドル/バレル
69 1.90
70 1.90
71 1.90
72 1.90
73 2.83
74 10.41
75 10.70
76 11.63
77 12.38
78 13.03
79 29.75
80 35.69
81 34.32
82 31.80
83 28.78
84 28.06
85 27.53
86 13.01
87 16.91
88 13.20
89 15.68
90 20.50
91 16.56
92 17.21
93 14.90
94 14.76
95 16.09
96 18.56
97 18.13
98 12.16
99 17.30
00 26.24
01 22.80
02 23.85

資料:BP Statistical Review of World Energy 2003より(財)日本エネルギー経済研究所作成
(注)85年まではアラビアン・ライト原油、86年以降はドバイ原油。


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Comments

いつも「思考の材料」を提供していただきありがとうございます。

こちらのブログを溜池通信とともに毎日チェックして、わが軍師の今日の一言を楽しみにしています。と同時に、よくこれだけ良質なエントリーを絶えず提示できるものだと、言論人の知的体力には驚くばかりです。

ところで、今回の「長期的原油価格の推移」ですが、元資料の"Statistical Review of World Energy"は2007年が最新で、統計年次は2006年まで掲載されています。
若干リバイスされているのですが、データは以下のとおりです。

US dollars per barrel

    Dubai   WTI
2000   26.20   30.37
2001   22.81   25.93
2002   23.74   26.16
2003   26.78   31.07
2004   33.64   41.49
2005   49.35   56.59
2006   61.50   66.02

たしかに急上昇しているのですが、それでも100ドルは驚きますね・・


Statistical Review of World Energy 2007のページは
http://www.bp.com/productlanding.do?categoryId=6848&contentId=7033471

統計データのExcelファイルは
http://www.bp.com/liveassets/bp_internet/globalbp/globalbp_uk_english/reports_and_publications/statistical_energy_review_2007/STAGING/local_assets/downloads/spreadsheets/statistical_review_full_report_workbook_2007.xls
です。
"Oil-Spot crude prices"のシートに掲載したデータがあります。

別シートには1861年からの原油価格が実数と2006年基準価格で掲載されていて、なかなか面白いです。

Posted by: アンチ | October 30, 2007 at 11:05 AM

ソマリア沖での事件ですが、これは日本がどうこうというのは難しいでしょう。
ソマリアはいまだに内戦が続いています。去年まではイスラム原理主義勢力がモガディシオを占拠していたかと思いきや、いつの間にかエチオピアの傀儡政権が立てられている戦国状態です。比較的治安が安定している北部は独立国宣言していて、日本人にはわかりかねるほどに混沌としています。

そして、ポンペイウスが開発して以降海賊を取り締まる最も有効な策は「海賊の拠点となっている基地を制圧する」ことです。すなわち、ソマリアに上陸して海賊の拠点を制圧する必要があるわけです。
さて、ソマリアに日本の軍隊が揚陸攻撃をかけて成功するでしょうか。私は厳しいと思いますよ。ブッラクホークダウンの件からアメリカですら手を引いている国です。

さらに、恒常的に海賊行為をなくすならばソマリアの内戦状態そのものをを何とかする必要があります。
結論として、リターンに対し、コストがかかりすぎます。これは国益に反するでしょう。

Posted by: 道化 | October 31, 2007 at 04:56 AM

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