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October 05, 2007

解せぬ話

■ 「個人投資家」である雪斎にとっては、理解しがたい話がある。次のような記事が『毎日』によって配信されている。昨日午後七時のNHKニュースのトップ項目として伝えられた。

  □ L&G 会長宅など強制捜査 出資法違反容疑で
 独自の電子マネー「円天」を売りに巨額の資金を集めた健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー(L&G)」(東京都新宿区、波和二(かずつぎ)会長)が違法に出資を募った疑いが強まり、警視庁と宮城、福島両県警の合同捜査本部は3日、出資法(預かり金の禁止)違反容疑で同社本社や役員宅など約60カ所の家宅捜索を始めた。電子マネーを使った集金システムが強制捜査を受けるのは初めて。約5万人の会員から1000億円前後を集めたとされる集金システムの全容解明を図る。
 同社は、有名演歌歌手や大学教授など著名人を広告塔にイベントを開き集金していた。捜査本部は、詐欺容疑での立件も視野に捜査を進める方針だ。後略

 □ <L&G>多数の有名歌手らを広告塔に 元警視総監も利用
 独自の電子マネー「円天」を売りに巨額の資金を集めた健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー(L&G)」(東京都新宿区)を巡る出資法違反事件で、L&G傘下のNPO法人が有名歌手らを招いた会員向けコンサートを頻繁に開いていたことが分かった。元警視総監を顧問にしていたことも判明、著名人の人気やNPOの信用性を悪用していたとみられる。警視庁などの合同捜査本部は3日の捜索で押収した資料を詳しく分析、会員約5万人を集めたグループの活動実態を調べる。
 関係者によると、このNPOは「あかり研究所」。細川たかしさんや瀬川瑛子さんら大物歌手を招き、全国でコンサートを開催していた。円天を利用する会員を対象に無料で行われたという。
 瀬川さんの事務所は「細川さんから『懇意にしている会社の仕事をやってほしい』と頼まれた。細川さんの紹介だったので主催者を疑うことはなかった」と説明しているが、細川さんの事務所は「担当者が出張で不在」としている。後略。

 理解し難いというのは、次の点である。
 ① 何故、この種の事件が後を絶たないのか。
 ② 何故、人々は、「自分は騙されていない」と錯覚するのか。
 ③ そもそも、何故、芸能人が「信用」の担保になるのか。
 こうした事件が繰り返されるのを前にすれば、「騙された奴が馬鹿だ」とお決まりの言葉を吐いて済ますわけにもいかない。多分、日本では、「金融教育」という考え方が根本的に欠けているような気がする。多くの人々は、「それにしても銭の欲しさよ…」という感覚を共有するかもしれないけれども、その「銭」の管理や運用の仕方には、どれだけの人々が真面目な精力を費やしているであろうか。大体、この事件で触れられた「元本保証、年率3割の利回りの保証」という話からして、胡散臭いと思わなければ駄目である。かのウォーレン・バフェットですら、年率3割のリターンを挙げ続けるのは至難の技だと語っていたはずである。こうした事情を知っていれば、件の会社の触れ込みの怪しさを察知しえたはずである。
 まったく理解し難いのは、「芸能人」が「信用」の出汁として使われることである。世の人々は、それほどまでにに「芸能人」という存在に「特別な価値」を視ているのであろうか。
 「個人投資家」として三年半近くやってみた感覚でいえば、「投資」の心構えは次のようなものである。
 ① 「投資」を他人に任せて楽をしようとしてはいけない。
    ・ 証券会社その他は、わざわざ「他人を儲けさせる」ためには働かない。
 ② 故に、日々、自分で研鑽し続けなければならない。
    ・ 持株銘柄の会社の実態は、入念に調べる。
      「何をしている会社か」が判らなければ手を出さない。
    ・ 全般的な経済動向、保有銘柄関連の情報には、日々、眼を光らせる。
 ③ 当面の相場の上がり下がりに右往左往しない。
    ・ 何時も、「晴れている」天気など、あるわけがない。 
 ④ 投資も結局は、「遊戯」である。
    ・ 投資は、「+α」を得るためのものである。
 結局、「投資」ぐらい「孤独への耐性」を必要とするものはない。群れて何かをしようという「他人依存」の人々が多過ぎるのではないか。
 二十年後には、雪斎も「ランティエ生活」と行きたいものである。

■ 今夜の一枚
 ● エクトル・ベルリオーズ
   「幻想交響曲」
   シャルル・ミュンシュ
   パリ管弦楽団

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「学者生活」カテゴリの記事

Comments

少々存じている事を。
①何故、この種の事件が後を絶たないのか。
②何故、人々は、「自分は騙されていない」と錯覚するのか。
究極的には需要と供給の関係、ですから、騙そうとする人、騙される人がいるから、なのですが、この類の話においては、「システムを提供する人」という存在があります。
取り扱う商品の形のありなし(例えばサプリメントなのか、何かのサービスなのか)は横に置いて、人の集め方や報償の払い方、会員の顧客獲得意欲のUP方法、などをPCソフトやマニュアルの形で供給する人がいるんですよね。
少々「見事なモノだな」と当方が感想を覚えたのは、一種の熱気から冷静になった際に気付きやすい「穴」が必ずシステムには設けられています。
その「穴」に気付くと、ただただ顧客獲得している人達と同労力か、少し楽をしても、「大きく儲ける事が出来る」と勘違いをさせる、制度の抜け道的なもの。他で例えるなら「税金を少しでも安く出来る方法」を知るようなもの。一種の優越感が沸くみたいですね。そうすると、「他の人は騙されるかもしれないけど、私はそれを知ってるから大丈夫」という感覚に陥るみたいです。

天下一家の会とか国利民福の会、豊田商事の頃から比べると、基本は同じでも、枝葉がかなり巧妙になっている事は間違いないですね。

③ そもそも、何故、芸能人が「信用」の担保になるのか。
形を変えた「肩書主義」なのではないかと。お見合いでも「釣書」、ビジネスの世界でも「名刺」、某氏がTV出演しても「北海道大学教授」が前面に出ますよね。信用は個人になく、肩書にあるという意識がまだまだ強い。
芸能や興行で「演じるプロ」は、「お金」に対して演じているのであって、観客一人一人に演じているのではないわけですから、「誰が金を出したか」は問題じゃなく「お金に対して何を演じるか」が主。
ところがある時期から、特に芸能の世界では「その筋」な方の排除を警察方面からの要請で動いて以来、副産物として芸能人は「そういう世界からかけ離れた人」という、お墨付きがついてる勘違いというか幻想が生まれたんじゃないかと。

よくこの手の類で「広告塔」と言われて責任を問われる方々が出ますが「お金貰ったから演じた」だけで、何が悪い話なのかな?三分の理に聴こえるかもしれませんが、責任は「幻想」を作った人達に帰するべきでしょうね・・・。

変な例ですが、当方が誰かに雪斎師の魅力を説明しようとして、人柄や見識に百万言を費やしても理解を得る難しさがあるのに対し、「元・代議士政策秘書」とか「現・大学准教授」の一言が、話を短く済ませてくれるわけです。それは理解ではなく幻想でしかなくても。

いわゆるマルチな商売をやってる人の一部はこう公言してます。「世の中の商売で、マルチじゃないものがあるのか?」これは一種の真理ですね。

Posted by: 桜新町長五郎 | October 05, 2007 at 08:46 PM

・桜新町長五郎殿
>「世の中の商売で、マルチじゃないものがあるのか?」これは一種の真理ですね。。
 まあ、そうなんでしょうな(苦笑)。

Posted by: 雪斎 | October 05, 2007 at 09:49 PM

 では私は④を

 遊技とは「日常の生活より隔絶され、隔絶された世界で施行される規則に基づき闘争が行われる」ものです。

 たとえば戦争はいかに小規模でも遊技では無く、軍隊で行われる模擬戦はどんなに真剣でも遊技でしょう。
 戦争に規則は無いが模擬戦には厳格な規則があり、戦争は日常より隔絶されて無いが模擬戦は隔絶されているからです。

 しかし上記をなんとなくですら考えて無いのが日本の一般でしょう。

 (上記に当てはめるなら仏教も生きているうちに悟りを得ることができるかどうかの遊技ですが、仏教は遊技とだけ言って理解が得られるか反応をみてください。少し知的な人でも遊技に関する認識・常識は全く不足してることが理解できるかと)

 「遊技とはなにか」という本来常識に近い事を日本はまったく考えてないがゆえ、かなりおかしな事態に陥っております。

 たとえば日常と隔絶されているがゆえ、本来そこに投じたものは一切帰ってきません。
 たとえば将棋を例にあげますと、将棋をすることで失われた時間や資金は失われ二度と取り返すことはできません。
 模擬戦ならばそこで使われた時間や燃料・砲弾や資金諸々も取り返すことができません。データが取れたとか訓練精度が上がったとかがあるでしょうが、先の例をあげるなら「将棋が上手くなった」以上の効果では無い。
 仏教ですとそもそも悟りを得るため仕様書なハズですが、恐ろしい事に悟りを得て良い事などなにも示していません。まさに「日常の生活より隔絶され、隔絶された世界で施行される規則に基づき闘争が行われるもの」という遊技としての性質を十全に持っているかと。

 L&Gも遊技として見るなら面白いものであったでしょう。
 投じた資金は基本帰ってこない、会員向けコンサートとか円天とか隔絶された世界に余録がある。
 周りの人間を誘うとか、投下資金を帰ってこないと考慮しつつ関係する。すなわち「日常との隔絶」を考慮にいれつつ遊技に関する常識の範囲内で対応できるようするのが肝要かと。すなわち遊技に関する認識の一般化が今後重要になるかと。

 日本は教育でこの「遊技」とあと「金」←あえて「経済」とは言わない。を教えて欲しいものです。この二つは家庭でなぜか教えられることがあまり無いらしい。もちろん私も教わって無い。
 
付記
 あと相場は遊技になりにくいものでもありましょう。
 なぜなら「定められた時間と空間の内に終わる」ということが無いのと、投下資金が帰ってくることを期待している、すなわち生活から隔絶されて無いからです。

Posted by: 丸々 | October 06, 2007 at 10:01 PM

あの社長・・
国連にも知り合いがいるって言ってましたね。

Posted by: SAKAKI | October 07, 2007 at 01:38 PM

 ああ桜新町長五郎氏の1~3と私の4が繋がって無い。別のナンバーの割り振りでしたか。
 えと、雪斎氏のいう
  ① 「投資」を他人に任せて楽をしようとしてはいけない。
  ・ 証券会社その他は、わざわざ「他人を儲けさせる」ためには働かない。
  ② 故に、日々、自分で研鑽し続けなければならない。
  ・ 持株銘柄の会社の実態は、入念に調べる。
  「何をしている会社か」が判らなければ手を出さない。
  ・ 全般的な経済動向、保有銘柄関連の情報には、日々、眼を光らせる。
  ③ 当面の相場の上がり下がりに右往左往しない。
  ・ 何時も、「晴れている」天気など、あるわけがない。
 これには全く同意いたします。
 と言いますか、「会社自体も儲かるかどうかなど分かってない」場合が基本です。
 なにせ「相談者の半分には上がる、半分に下がると言っとけ。見込みが半分なら御の字だ」と言う世界。
 言うことがどんなにまともに思えても他人に相場は任せてはいけません。

 追伸
 本郷の事務に届けるので良ければ相場関連の本をお譲りします。たぶん30冊強。金融商品取引法の施行により私は転職することにいたしましたので相場関連の本は処分する予定でした。もし雪斎氏に読んでもらえるなら本も本望でしょう(本の状態は良いとは言えませんが)

Posted by: 丸々 | October 09, 2007 at 01:15 AM

はじめまして。
投資詐欺ではなく、M資金詐欺が後を絶たない理由について考察しているエッセイがありました。
「エリートたちは、庶民のあずかり知らぬところで好き勝手なことをやって甘い汁を吸っている」
という印象を持っているかどうかが、鍵になるようです。
ご参考まで。
http://www.noguchi.co.jp/archive/diary_old/990703.html

Posted by: ぱっくり | October 14, 2007 at 07:34 AM

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