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October 11, 2007

小沢一郎の論理

■ 今月の論壇では、間違いなく次の話が大いなる話題になることであろう。
 □ 政権取れば国連部隊に参加=テロ対策で論文寄稿-小沢氏
                 10月5日21時1分配信 時事通信
 民主党の小沢一郎代表は9日発売の月刊誌「世界」に、インド洋での海上自衛隊の給油活動継続問題に関する論文を発表する。論文では給油活動に反対する理由を改めて説明する一方、国連決議に基づいてアフガニスタンで活動する国際治安支援部隊(ISAF)について「私が政権を取れば参加を実現したい」と明記している。
 論文は「今こそ国際安全保障の原則確立を」と題し、国連関係者の論文への反論の体裁を取っている。政府の新テロ対策特別措置法案の国会提出を前に、ISAF参加を「対案」として示すことで、政権担当能力をアピールする狙いもありそうだ。

 最初、見出しを視た時、「中公か文春に載せたのか」と思ったけれども、小沢論稿が載るのは、岩波の『世界』である。日本の「平和主義」思潮の聖地であるメディアに「普通の国」論の元祖である小沢氏の論稿が載るのは、一大事件である。雪斎は、「世界」編集部は大いなる英断を下したと思う。次には、「諸君」や「正論」が進歩派の論稿を載せればいいのである。こうした「相互乗り入れ」が続く過程で、、定型的な言辞を書き連ねているだけの「論客」や「論客もどき」が淘汰されればよろしい。「蛸壺」の中で守られた言論などは、要らないのである。
 ただし、小沢論稿の意義は、「世界」に載ったという一事かもしれない。
 ところで、雪斎の論稿が、実に数年ぶりに雑誌『VOICE』に載っている。保守論壇誌に書くことは当分、あるまいと思っていたけれども、『VOICE』編集部に拝み倒される形で実質、四日で書いた。促成論稿であるが故に、論理展開に粗さが目立つ。中身は、小沢・民主党の安全保障政策に疑問を投げ掛けたものである。小沢論稿を参照して書きたかったけれども、それは仕方がない。
 「インド洋上の比較的に安全な補給活動は駄目で、アフガニスタンにおける比較的に危険度の高い治安支援活動参加ならば諒」と小沢氏の議論は、国民一般の「常識」から乖離している気がする。カンボジア以降、過去十数年の自衛隊の海外活動が内外の支持を集めたのは、自衛隊の活動が「一発の銃弾も撃たず、一人の人間も傷付けない」ことを趣旨としていたからである。そうした活動は、軍隊の活動としては、最も難しい部類に属する。その難しいことをやってきたのが、日本の自衛隊なのである。もし、海外派遣地で不測の事態に巻き込まれた自衛隊が銃弾を撃ち人的犠牲が出るようなことになれば、日本国内で「部隊撤収」論が沸騰したはずであるし、それに政府は抗えなかったであろう。そうした事態を極力避けようとしながら、「国際貢献の要請」と「法律上の制約」の狭間で、ぎりぎりの選択を積み重ねたのが、歴代内閣の対応である。
 小沢氏は、自らの緒論を推し進めたければ、憲法典改訂論議を主導し、日本が名実ともに備わった「「普通の国」に脱皮できるように尽力すべきである。少なくとも、自衛隊の武器使用基準の緩和に向けて道筋を付けるように党内論議を先導しなければならない。こうしたこととがクリアされなければ、自衛隊を「実質、戦闘地域」に送り出すわけにはいかない。小沢氏が、こうしたことに眼を瞑ったまま、政府の「給油活動」継続方針に茶々を入れることに終始するから、雪斎も、「おいおい、そんなことを本気で考えているのか…」と反応せざるを得ない。特に雪斎に近い政治学者の多くは、小沢氏の議論の無理を指摘している。
 雪斎は、十余年前には、小沢氏の「普通の国」路線の熱烈な支持者であった。小沢氏の「普通の国」のコンセプトは、政治家が打ち出したものとしては最大のインパクトを持つものであった。小泉元総理の「構造改革」も安倍前総理の「美しい国」も、結局は「普通の国」のヴァリエーションでしかないのである。小沢一郎の名前は、彼が政治家として手掛けた業績というよりも、「普通の国」の言葉とともに永久に不滅である。それ故にこそ、小沢氏の「現在」には唖然とさせられることが多い。以前、雪斎は、小沢氏に関して、「若き日に『憧れの君』であった女性が、場末のキャバレーでホステスをやっているの視た思いがする」と書いたことがある。小沢氏の「現在」は、「ホステス」を通り越して、「騒音おばさん」の域に達しているのではないか。

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Comments

エントリーの論旨から逸れて恐縮なんですが、テレビで見た小沢氏の会見内容に関連して、ちょっと気になった(実は非常に気になっている)ことをコメントしたいです。

小沢氏はISAFの民生活動を例に挙げて「テロの原因は貧困」と言われていたように聞こえた。こういう考えは、一般的だが間違いだと思う。というか、それは今アメリカが係わっているテロリズム(アルカイダで代表される)と、アフリカや中南米やパレスチナの暴力的な運動を同じ範疇で見てるのじゃあないのかなと思う。後者は単純にテロとは言えないし、根底に貧困がある。だけどアルカイダで代表される二十一世紀型のテロリズムは、グローバル化とハイテクと富が生み出した新しい動きで、だからこそグローバル化とネットワークと金融のご本尊のアメリカがしゃかりきになっているのだと思う。こういう動きは、貧困対策では防げないのじゃあないですか。
もっとも、アメリカの対応が旨くいっているとはとても思えないし、その辺が様々な陰謀論が飛び交う背景になってるんでしょうが。

Posted by: M.N.生 | October 11, 2007 at 10:08 AM

雪斎さん

こんばんは。TBさせて頂きました。すいません。

この度の『世界』 小沢論文に拝読しました。率直に極端に偏っている印象です。仰る通り、かなりの無理があり過ぎます。

又、雪斎さんの論文も拝読、致しました。粗雑で粗い、論理構成だと仰られますが、内容自体は、正攻法的で、まったくもって、正論、端麗な内容だと思います。

私も相互乗り入れで、生産的でない言論は、淘汰されるべきだと思いますね。

>M.N生様

小沢代表は、テロ要因は、貧困であると述べています。もちろん、何の貧困かは、明らかではないのですが、そのような要因もひとつでしょう。

ただ、仰る通り、テロリストは、一般人の群衆蜂起とは異なり、かなりの、クラスが上に行けばいくほど、国際情勢、市場・金融システムなどに長けた、比較的、富裕層が多いのも事実ですね。

Posted by: forrestal | October 12, 2007 at 12:12 AM

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Tracked on October 11, 2007 at 11:35 PM

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