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September 03, 2007

安倍総理と「祖父の影」

■ 遠藤武彦農水大臣が辞任の意向と伝えられる。
 次のデータを確認する。
 1988年11月 6日 竹下登内閣発足
 1988年12月27日 竹下登改造内閣発足
      12月30日 長谷川峻法相、リクルート献金発覚で辞任
 1989年 1月25日 原田憲経企庁長官、リクルート献金発覚で辞任
       6月 3日 竹下登改造内閣総辞職
 平成改元の時期の風景である。

 長谷川法務大臣は、着任後三日目での辞任であった。遠藤大臣の件は、「それに比べれば…」という問題ではない。此度の改造が「下値固め」である前提は、こうした問題が浮上しないことであったのであるけれども、「身体検査」も不発であったようである。
 ふと考えてみる。「安倍晋三総理―井上義行首席秘書官」という官邸中軸のことを真面目に尊敬している官僚層は、どれだけ居るのであろうか。改造直前に首席秘書官に命じて「身体検査」を徹底させたはずであるにもかかわらず、こいう結果に相成るというのは、「真面目に安倍総理を支えよう」という空気が、安倍総理の周辺にあって希薄であるということの証左ではないか。
 人間は、自分が尊敬しない人物のためには、敢えて骨を折ることはしないものである。このことは、もはや動かしようがない現実である。
 雪斎は、若い頃、「東京大学法学部」のネットワークに連なりたかった。官僚層が実際のところ尊敬するのは、「自分と似ていて、自分よりも少しばかり才能がある人々」であると察知したからである。
 今は、二世、三世政治家が多い御時勢である、ただし、「●●の息子・娘」ということ以外に語るものを持たない人物は、迷惑なだけである。「●●の息子・娘」 というのは、生活の心配がないのであるから、普通の人々が及ばない能力開発の機会を手にしているはずであるし、それを生かしていて当然なのである。故に、「●●の息子・娘」には、「貴殿は三ヵ国語ぐらい話せて当然だよな。それが出来るカネもヒマもあったのだから・…」と内心、問い掛けてみる。
 戦後日本には、「●●の息子・娘」は居るけれども、「生粋のエリート」は居ない。安倍総理は、祖父・岸信介に並々ならぬ思い入れを抱いているかもしれないけれども、岸は、若き日より「傑出した才能」で令名を馳せた人物であったし、それ故にこそ往時の官僚層は心服したのである。安倍総理には、残念ながら、岸に類する「生粋のエリート」の要素は、皆無である。安倍総理と岸の政治環境には、途方もない違いがある。雪斎は、安倍総理が何かを為し得るとすれば、その前提は、「祖父の影」から離れることであり、「祖父の後を追うこととは出来ない」と自覚することであろうと考えている。
 安倍総理に「岸の再来」を望む声ぐらい、安倍総理にとって有害であったものはない。この内閣は、どうなるのか。

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「国内政治」カテゴリの記事

Comments

公務員改革を進めているのだから、官僚の尊敬どころか、敵だと思われているでしょう。
本当は、改革に賛成する若手官僚達を抜擢して、新旧交代させる位が必要なのでしょう。
若手は自分たちの頃には、天下りなんか出来ないだろうと考えているでしょうから。

Posted by: K | September 03, 2007 at 12:51 PM

>>官僚層が実際のところ尊敬するのは、「自分と似ていて、自分よりも少しばかり才能がある人々」であると察知したからである。

 結局、彼らの許容範囲は旧七帝大及び早慶までなのか。トホホ・・・・。

Posted by: M.N.生 | September 03, 2007 at 04:11 PM

官僚の志願者は、10年前の1/10だそうです。彼らは既にエリートではない。(少なくとも学生達は、そう思っているということ。)
信用回復の為、官僚制の改善が必要なのは間違いない。それを妨害するとは、官僚こそ尊敬に値しない。
政治家達は現状に危機感があり、官僚たちと違い改革を行う意欲がある分ましだと思う。

Posted by: K | September 03, 2007 at 04:57 PM

雪齊さんがそんな下衆の勘ぐりをしていたとはねえ。

まるで某ちゃんねるで脊髄反射してる人達のようで格好よくないですぜ。

Posted by: Foch | September 03, 2007 at 10:41 PM

いや、かなり正しい分析かと思うのですが。

今の内閣関連のスキャンダル、どれも官僚+マスコミ
(ただし低学歴な産経以外)っていうどう見ても東大閥系と、
「民主主義的政府」とやらの軋轢に見える。

しかも、玉杯に花うけていたころとは違って、エリート教育を
欠片も受けていないから、正直東大閥側のプロパガンダが
見るに耐えない。

そういう意味で、的確な分析に見えるのはひがみなんだろうな。

と、東大閥の中にいたけど、端っこから追い出された人間が言って見る。

Posted by: sophnuts | September 03, 2007 at 11:06 PM

はじめまして。
地に足のついた数々の知見、いつも感服しながら拝見させていただいております。
さて、今回の辞任劇、就任時のコメントがこう↓でしたので、やばいなあと思っていたのですが・・・。

>一番最後まで残ったポストを私に割り振られたわけですから、「参ったな」と実は思いました。
>「ここだけは来ない方が良かったな」と思っているくらいでありまして。

いわば呪われたポストですから、意中の人に次々断られて、なり手がいなかったんでしょうか。
あの選挙結果を見れば、農業軽視の人事なんてあってはならないはずなのですが・・・。

それにしても、「少年官邸団」とか「fool five」とか酷評されていたのに、井上秘書官と的場副長官を残した人事は不可解でした。
帰るところがない彼らに首相が同情したということなんでしょうけど、この先不安です。

「生粋のエリート」は今となっては絶滅種ですね。
でも、書類を読んだり作成したりする事務処理能力や徹夜の連続に耐えうる体力はともかく、教養やモラルは東大と成蹊大でそんなに違いがあるとは思えません(プライドだけは相変わらず高いようですが・・・)。
宮沢元首相のように古典、特に漢籍に通じた人なんて皆無に近いのではないでしょうか。
官僚の側で求められる人物像としても、学歴というより、国会答弁をそつなくこなす人であればいいという感じです(それだけ最近の霞ヶ関が国会対策に特化しているということです)。

歴史上の人物との比較という点では、安倍首相は、非常に優しくそれでいて真面目で信念が強いと言う意味で、首相が(父・晋太郎氏もそうでしたが)尊敬してやまない吉田松陰によく似ているように思えます。
拉致問題で名をあげたのは、その美質がプラスに働いたからでしょう。
ただ今となっては、潔く下野して「一志士」もしくは「教育者」としてその資質を生かした方が「美しい国づくり」にはいいような気がします。
このままでは吉田松陰どころかルイ16世になってしまいかねませんから・・・。

Posted by: 板倉丈浩 | September 04, 2007 at 07:00 AM

率直に申し上げまして、実に痛快なるエントリーでございました。
政界のみならず、各界でこういうことが起きているとすれば、我が国の将来はあまり明るくはなさそうですなぁ。

Posted by: 妖怪 | September 04, 2007 at 11:24 AM

東大出の総理は今のところ宮澤さんが最後ですね。
ちなみに宮澤さんは最後の帝大出の総理であり、
戦後の新制東大出の総理はまだ誰もいません。
それはともかくとして、
たとえ安倍総理が東大出のエリートだったとしても
祖父の真似はできないでしょうね。
岸は東條、吉田に盾を突き、河野一郎や大野伴睦ら
癖のある党人政治家をも手名付けていた
百戦錬磨の老獪な政治家。
ボンボンの安倍ちゃんと雲泥の差であることは
歴然としてますので。

Posted by: who | September 04, 2007 at 12:21 PM

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しかしまあ、もうどうしようもありませんなあ。。。 ***♪内閣くずれ♪ ひとりで任命なんて できないと 泣いてすがれば辞職が 辞職がせまる カネと政治の問題ばかり ダメよもう 民もキレます 安倍 内閣くずれ ひとりやふたりじゃないの 更迭は うわべばかりの身体 身体検査 そんなポストでいいならあげる 誰もかも 辞めてください 安倍 内閣くずれ しあわせ それとも今は ふしあわせ だってあなたは不始末 不始末ばかり 言葉足りないあなたが悪い あの人に 後を託して ... [Read More]

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 某所に興味深い年浮ェ載っていたので、勝手にデータを足してみる(太字が追加部分)。1988年 7月 6日 森田康・日本経済新聞社長がリクルート事件で辞任1988年11月 6日 竹下登内閣発足 11月 8日 社会党の上田卓三代議士がリクルート事件で議員辞職 11月28日 丸山巌・読売新聞社副社長がリクルート事件で辞任 12月 9日 宮沢喜一蔵相、リクルート事件で辞任 12月12日 牛尾治朗・経済同友会副代賦イ事がリクルート事件で辞任1988年12月27日 竹下登... [Read More]

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