安倍晋三第一次改造「下値固め」内閣
■ 明日、安倍晋三内閣の改造が行われる。
此度の内閣改造の目的は、安倍晋三内閣と自民党の勢いにおける「下値固め」をおこなうことである。だから、この内閣改造で支持率の劇的な反転を狙う意味はない。「底」が抜けるのを避けることができさえすればいい。
故に、今次改造内閣は、次の衆議院選挙に向けた内閣ではない。次の選挙は、「第二次改造内閣」か「ポスト安倍内閣」で対処することになるのであろう。そのためにも、安倍総理にとっては、此度の改造は、「慎慮の所産」でなければならない。「殿軍の戦」を闘うのが、此度の改造内閣なのである。
ところで、『朝日新聞』朝刊(8月22日付)文化面には、「曲がり角の保守系論壇誌 過激にあおる雑誌台頭」と題された記事が掲載され、雪斎のコメントが結びに付されている。ところで、この記事を読んで知ったのは、保守論壇では安倍総理に対する落胆の感情があるということである。しかし、そうした保守論壇の雰囲気を前にして、雪斎は、「政治の世界が自分の思ったとおりに動くと信じていたとすれば、それは愚かなことだ」と冷めた眼差しを向けるしかない。
話は替わる。。
安倍総理の此度の外遊は、概ね成功であったと解すべきであろう。「世界最大の民主主義国家」であるインドとの提携を前面に押し出したのは、誠に結構なことであったという他はない。この対印提携の模索は、安倍総理が就任直後に手を打った対中「戦略的互恵関係」構築という業績の上でこそ、意味を持った。この対中関係の「雪解け」という施策がなければ、此度の対印接近もまた、あまりにも見え透いた対中牽制の施策という評価を与えるしかなかったであろう。
それにしても、安倍総理外遊に加え、麻生太郎外務大臣のブラジル訪問、甘利明経済産業大臣の東南アジア訪問といったように、日本の対外政策の布石は、着々と打たれている。たとえば、次のような記事が伝えた話は、ちゃんと業績として評価しておく必要がある。
□ ASEAN、最大90%の関税撤廃=経済相会議、EPA大筋合意
【マニラ25日時事】日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)は25日午前、フィリピンのマニラで開いた経済相会議で、経済連携協定(EPA)の物品貿易の自由化で大筋合意した。日本側が10年以内に輸入額の93%の関税を撤廃、ASEAN側も10-18年で85-90%を撤廃する。11月にシンガポールで開く首脳会議で正式合意する。
安倍総理の執政は、総理自身の余計な「思い込み」が反映されなければ、実に手堅い業績を積み重ねている。保守論壇方面は、「安倍に落胆した」というけれども、一体、どこに眼を着けているのであろうか。昔、吉田茂は、「外交感覚なき国民は滅ぶ」と語った。保守論壇にも、そうした外交の意味を適切に解釈できる「外交感覚」を持ち合わせていないという点では、衰退の芽が確かに出ているということであろう。
「国内政治」カテゴリの記事
- 三ヵ月の空白(2011.08.28)
- 仏滅の内閣改造/与謝野馨という「トロイの木馬」(2011.01.14)
- 民主党における「馬鹿の四乗」(2010.10.26)
- 「過剰配慮」の代償(2010.10.19)
- 日本のナショナリズム(2010.10.17)
The comments to this entry are closed.














Comments
雪斎さん、初めまして。
中共との関係改善があったからこそ、卓見であると思います。そうでないとインドに足下を見られますからね。
総裁選の経緯から言えば、安倍総理の政敵は麻生派、谷垣派、町村派の福田グループと言うことになるんだろうと思いますが、ニュースを見る限りでは彼等は静かです。
むしろ足を引っ張っているのは、中共への敵意を煽ることで国威発揚を目指していた人達だと私も思います。彼等は内閣から外されました。「お友達内閣」という言葉をひろめているのも彼等でしょう。お友達のつもりだったのに外されたから嫉妬しているのだと思います。
本当に勝とうと思うのなら、敵意一辺倒では駄目なんですが・・・こういう連中が国を滅ぼす。F22とか次官人事を巡るゴタゴタも彼等が関係しているんじゃないですかね。米国もこういう連中を国政の中枢から外せというメッセージを送ってるんでしょ。
今回の内閣改造でも彼等は外されるでしょう。彼等の倒閣運動はますます激しさを増しそうです。何とかしてこういう連中を炙り出す方法はないですかね。
Posted by: 安部奈亮 | August 26, 2007 11:21 AM
空気を読め読めとうるさいですが、ちゃんと外交では空気を読んでるじゃん。
小泉前総理は逆に外交で空気を読めなかったし、どれもこれも完璧には出来ないという事でしょう。
Posted by: K | August 26, 2007 01:59 PM
中南米では中産階級が猛烈に増殖しているようですね。
麻生さんの外遊は良かったと思いますよ。ラテンのノリは、よさこいソーランにも通じます(無理矢理のロジック)ので、これで下値を固めて、サンバ外交に打って出て欲しいものです。「キャプテン翼」も読まれているようで・・
アチラは、石油から航空機まで産業の幅が意外にも広いんですよね。日本は工作機械や重工業分野でお助けできると思います。出て行った技術屋さんはあのノリにブーブー言ってましたが(笑)
Posted by: SAKAKI | August 26, 2007 02:47 PM
最近は、リプライも滞っていますけども、一言だけを書きます。
政治の世界では、「意図」が露骨に見える振る舞いというのは、決して賢明ではない。安倍総理の執政における最たる「阻害要素」は、実は「身内」なのではないかとおもいます。
今日の組閣で安倍総理の従来の「安倍カラー」というものが払拭されていれば、それは逆にサプライズであるし、新たな「安倍カラー」を創る契機になるかもしれません。保守論壇方面が落胆しようと、それは、どうでもいいことなのです。
Posted by: 雪斎 | August 27, 2007 02:09 AM
このたびの外遊は成功でしたね。
穏当にして着実な成果を求めつつも「安倍カラー」を出していてよかったといえるのではないでしょうか。
安倍政権の問題点は、一にも二にも「国民との対話姿勢」にあると思います。「社会に活力をもたらすためだからいいだろ?」とか「行財政の改革をしてるんだからいいだろ?」とか「郵政民営化はするんだから反対組を復党させてもいいだろ?」とか、国民を対話の相手として認めていないかのごとき態度は改めていただかなければいけません。国民は「改革であれば何でもいい」とは思っていませんし、「改革」と言いさへすれば無条件に拍手喝采するわけでもないのです。
ところで、朝日新聞が雑誌「世界」の徹底的凋落には、まったく言及しなかったのはいただけませんね。こういう態度だから、世論から軽蔑されることになるんですが、当人たちにはわからんのでしょう。保守系雑誌の乱立と過熱競争による、言論の質的低下は事実でしょうが、それ以前に左派系雑誌の精神的ゾンビ化についての反省と改革の必要性をこそ痛感するべきでしょう。
Posted by: 妖怪 | August 27, 2007 09:59 AM
事務所費問題は刑事告発しないし・されないし、年金問題も話題にならなくなった。
国会が始まったら、また話題になるのかね?
マスコミも、選挙で発散したから良いと思っているのか、それとも最初から参院選向だけのキャンペーンだったのか。
短いぶらさがり取材ですら全て放送されないし、新聞に掲載されない。今までもこれからも、国民に伝わる状況に無いと思います。
国民が言葉を聞けないのに、対話も何も無い。
あるとしたら、対話が成立しているという「誤認」にすぎないでしょう。
Posted by: K | August 27, 2007 11:53 AM
対話とは何も言葉だけでかわすものではありません。
郵政民営化反対組を復党させるにあたって、その理由をつけなかったことなどは、それ自体がひとつのメッセージとなるのです。
対話姿勢を大切にする、ということは、自分の行動がどういうメッセージを発することになるのかについて自覚した上で、行動しましょう、ということなのです。
Posted by: 妖怪 | August 27, 2007 06:19 PM