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July 19, 2007

梅雨時の三題・続

■ 昨日で前期の授業は終了である。安堵する。後期の授業が始まるまでの二ヵ月半は、懸案の『朝日新書』原稿を仕上げる時間である。早々に決着を付ける必要がある。

■ 午後、朝日新聞本社に出向いて、「保守論壇」の現状についてインタヴューを受ける。
 担当のF女史曰く、「保守論壇誌の勢いは、最近、落ちている」だそうである。
 この数年、雪斎は、「保守論壇」の住人ではないので、そういう現状になっているとは知らなかった。
 ただし、「そうであろうな…」というのが率直な反応である。

 たとえば、とある保守論壇誌の最新号のライン・アップは、下の通りである。
①「年金」を政争の具にする愚かさ       甲氏
②「外交的論争術」を安倍総理に言上す   乙氏
③諸悪の根源「官僚政治」の打破を      丙氏
④北朝鮮には圧力をかけ続けるしかない  丁氏
⑤戦略眼を持った「主張する外交」を貫け  戊氏
これを次のようにシャッフルしてみる。
1「外交的論争術」を安倍総理に言上す   丁氏
2戦略眼を持った「主張する外交」を貫け   甲氏
3北朝鮮には圧力をかけ続けるしかない  丙氏
4諸悪の根源「官僚政治」の打破を     戊氏
5年金」を政争の具にする愚かさ      乙氏
 「執筆者」と「「タイトル」のシャッフルの「前」と「後」で、余り違和感がないというのは、どういうことであろうか。
 これが「保守論壇」の勢いの失速の一因であろう。
 要するに、「①の原稿は、甲氏でなければ書けない原稿である」ということはないのである。故に、「誰が書いても違和感がない原稿」が蔓延ることになる。執筆者は、「誰が書いても違和感がない原稿」を「その他大勢」の一人として請け負っているだけの存在でしかなくなるのである。こうして、言論の「質」も低下する。
 このような「その他大勢」のライン・アップの中に、自分の原稿を紛れさせることに耐えられるのか。
 雪斎は、耐えられないと思ったから、「保守論壇」から撤退した。
 「右」とか「左」とかの議論ではない。

■ 参議院選挙は、どうも盛り上がっていないような印象がある。
 選挙カーというものを公示以後、眼にしていない。
 自民党への逆風は、止んでいない。
 台風、地震と連続すれば、「それどころではない…」といったところなのかもしれない。
 それにしても、此度の選挙における雰囲気は、1989年を髣髴させる。
 消費税、リクルート、宇野宗佑のセックス・スキャンダルが重なった選挙である。
 今は、余りにも、細々としたネタで自分の印象を悪くしている事例が、自民党には多すぎるのである。
 ところで、もし、参議院選挙が与党惨敗という結果に終わるならば、この選挙の後、公明党とともに衆議院の三分の二を押さえている自民党が、参議院の選挙制度改革法案を出してくるかもしれないと想像する。
 それは、議員定数の大幅削減、選挙方法の修正を含む劇的なものである。
 おそらく、野党が優勢になった参議院は、徹底して抵抗するかもしれないけれども、衆議院で公明党を説得した上で再議決すれば済む話である。そうすれば、野党が優位を握った参議院の「影響力」は切り崩される。今後、事あるたびに、参議院が自民党の政権運営に抵抗するということになれば、自民党が、それを考えても不思議ではあるまい。
 雪斎ならば、それを提案するであろう。
 また、「悪魔の囁き」か…。

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Comments

僕ならば、参議院における党議拘束の禁止を提案しますね。これなら「参議院を政党間の争いから解放して、良識の府として再生させる」という大義名分が立ちますし、いざというときは野党議員を個別に切り崩すこともできます。(逆に野党から切り崩されるリスクもありますが、参院では少数与党になる可能性が高いので、メリットの方が大きいでしょう)

Posted by: Baatarism | July 19, 2007 at 11:46 AM

朝日新聞はもっと「落ちてる(堕ちてる)」から黙ってろ、というのは置いておいて
「そこまでゼニが欲しいか。言説もただの消耗品か?けど、読者の欲求・要望からはどんどん離れて行っているぞ。あんたらが勝手に『これが大衆の欲しているものだ』と妄想しているそれは、実際に求められているものとはズレてるんだぞ」、と。そういう感じがしますね>セイロン茶

外交戦略については卓越した洞察力をもつ某N教授が、こんな記事を書いたのか、とあっけにとられました。>年金
年金を政争の具にするな、という結論・主張はわかりますが、分析内容が現実からかけ離れていて、世論の感情というものを読んでいない・読み誤っていると感じました。

彼の外交に関する分析からは多くのものを学ばされますが、しかし、世論との対話という観点からは、安倍政権は彼の意見はアテにしない方がよさそうです。

Posted by: 妖怪 | July 19, 2007 at 06:01 PM

安倍ちゃんの国民に対する「言葉」って、あまりインパクトがないですよね。何が言いたいの??思っちゃう。これでは参院選は盛り上がりませんよ。
 ところが・・いまだ・・小泉さんが行くと大フィーバーだそうです。

Posted by: SAKAKI | July 19, 2007 at 10:06 PM

初めまして。いつも拝読させて頂いています。

保守言論の劣化は自分も最近感じ始めていましたが、
(1)批判を恐れず好き勝手言える言論勢力は衰弱する
(2)「政権与党」を担えるほど層の厚みがつかないうちに、うっかり表に出てしまった
という2点が原因じゃないかと考えています。前者は朝日新聞に代表される左派言論、後者は前世紀終盤に社会党が踏んだ轍です。(一般的には右派的思考が浸透しているとは言い難いですが、少なくとも言論世界の中では勢いがあると感じます)

特に前者について言えば、自分たちが少数派であるという意識を持っていれば「考えの違う相手を説得しよう」というモチベーションが生まれます。そういった感覚が、かつての左派と現在の右派にはどうも見出し難い。敵を倒そうと頑張りすぎて、敵に似たのでしょうか。

Posted by: Djinn | July 19, 2007 at 11:36 PM

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