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June 20, 2007

何という展開か…。

■ この話にも、内心、「オヨヨ…」と思っている。
 

□ 米下院、26日に慰安婦決議案採決…賛成多数で採択見通し
                6月19日12時44分配信 読売新聞
 【ワシントン=五十嵐文】米下院のトム・ラントス外交委員長(民主党)は18日、本紙の取材に対し、旧日本軍のいわゆる従軍慰安婦問題で日本に公式謝罪を求める決議案を、26日に同委員会で採決すると明らかにした。
 決議案への支持は与野党に広がっており、賛成多数で採択されるのは確実な情勢。今後は下院本会議でも採択されるかどうかが焦点となる。
 決議案は1月にマイケル・ホンダ議員(民主党)が提出し、当時6人だった共同提案者は18日時点で、140人に上っている。当初は早期採決を目指していたが、安倍首相の4月の初訪米を受けて延期していた。
 日本政府は、決議案は事実に基づいていないとして反対する一方、首相が訪米時にペロシ下院議長やラントス委員長らと会談して元慰安婦へのおわびを表明するなどして沈静化を図ったが、議会の動きは止まらなかった。

 □ 「強制性否定」が逆効果=採択濃厚の慰安婦決議案-米下院
                6月19日17時1分配信 時事通信
 【ワシントン19日時事】米下院外交委員会が26日に採決する従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議案は、賛成多数での可決と、本会議での採択が濃厚となっている。ここまで支持が拡大した要因の1つに、安倍晋三首相が「狭義の強制性」を否定する論陣を張り、米議員の反感を買ったことが挙げられる。日本の国会議員らによる最近の強制性否定の意見広告が駄目押しとなったとの見方も広がっている。 

 この下院決議案を巡るゴタゴタは、既に収束していたのかと思いきや、この展開とは、いかがしたものであろうか。時事通信記事は、「ワシントンポスト意見広告が駄目押しになった」と紹介しているけれども、同じ趣旨の記事が、韓国メディアに載っている。
 

□ 日本の慰安婦関連広告、米副大統領や議員が猛反発
          6月18日13時7分配信 YONHAP NEWS
【ソウル18日聯合】日本の国会議員ら63人が14日にワシントン・ポストに全面広告を出し、慰安婦の動員に日本政府や軍の強制はなかったと主張したことについて、米政府と議会の一部が「厚顔無恥な行動」として強く異議を唱える方針のようだ。
 ワシントンのある市民団体関係者は現地時間の16日、チェイニー副大統領をはじめとする米国の右翼勢力が日本側が出した広告内容に激しい怒りを感じていると、現地の雰囲気を伝えた。特にチェイニー副大統領は広告を見て「非常に腹が立つ内容」と述べ、関係者に対し経緯を把握するよう指示する一方、副大統領室関係者が韓国の市民団体側にチェイニー副大統領の不快感を伝えたという。この市民団体関係者は、広告が「米議事堂に大きな逆作用をもたらしている」との見方を示した。慰安婦決議案を支持・署名する米議員も増え続けており、今月中に150人を超える見通しだという。 
 また米海軍は、広告の文面のうち、米軍が1945年の日本占領後に「慰安所」設置を日本政府に要請したケースがあるとの部分を「事実無根」とし、反論の声明を準備中だとされる。

 実際のところは、この意見広告が本当に決議採択に向けて「寝た子を起こす」効果を示しのたかは、まだよく判らない。
 ただし、件の意見広告には、「占領後の日本で慰安所が開設された」という趣旨の一文がある。問題の記述は。以下の通りである。

 実際、一般市民の強姦を防止するため多くの国が軍用の売春施設を設置していた。(例えば、1945年、占領軍当局は日本政府に対し米軍兵による強姦を防止する目的で衛生的で安全な「慰安所」を設置するよう要請していた。)
  Many countries set up brothels for their armies, in fact, to prevent soldiers from committing rape against private citizens. (In 1945, for instance, Occupation authorities asked the Japanese government to set up hygienic and safe "comfort station" to prevent rape by American soldiers.)
 

 雪斎は、「馬鹿なことを書きおった…」と率直に思った。それは、暗に米国に対して「お前にも、身に覚えがあるだろう」と噛み付くのと似た印象を与えるものになったかもしれないからである。説得し共感を得ようとする人々に対して、わざわざカチンと来るような物の言い方をする馬鹿はいない。
 この意見広告を報じた日本のメディアは、産経新聞を含めて、この「反米」的記述のことを紹介していない。だから、「保守・右翼」層には、意見広告発表に快哉を叫ぶ向きが多かった。「遂に日本も反撃だ・・・」という気分の反映であろう。
 しかし、日本の「自主独立」を何よりも切望する「保守・右翼」層には、「反米」的気分が抜け切らない。その「反米」的気分を反映した一言が、この意見広告の総ての意図をぶち壊した。「正しいこと」を言ったつもりでも、言い方が拙ければ、その価値はゼロである。時事通信記事が伝えたとおり、この意見広告が慰安婦決議案採択への動きを加速させたとすれば、その最大要因は、この「反米」的記述への反発であろう。愚かというしかなくぃ。

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Comments

進駐軍に対する慰安所は、終戦直後、米軍の進駐を前にした内務省通達によるものであり、即ち、日本政府の発案だったと思っておりました。それを米軍がこんなものは不要だと辞めさせたと。

意見広告にあるような米軍から要請によるというのが本当ならば、アメリカとしても痛いところを突かれたとなるのでしょうが、通説にあるように日本政府から提案なのであらば、これはアメリカが怒り心頭になるのは当然です。

今回の意見広告は、日本の国策として、馬鹿なことをしたものです。「憂士が国を滅ぼす」という良い見本なのかもしれません。

Posted by: sal | June 20, 2007 at 09:38 AM

私もこの話には驚いてます。

 なぜこのようになったのか分析ができてませんが、安倍首相に対する何らかの圧力のようにも思えます。

 進駐軍とともに、大本営などの大量の文書が焼却されたと云われてますが、同時に接収された文書も大量にあるそうです。
 90年代に、ナチス関連の文書がかなり公開されましたが、それらはアメリカの情報部に大量に保管されており、ごく僅かな情報管理の人間のみがその情報を知っていたとのことです。
 慰安婦に関して、反論の余地がないような、なんらかの情報文書がアチラにはあるかも知れません。
 厄介な話なのですが・・・

Posted by: SAKAKI | June 20, 2007 at 09:54 AM

少し前に産経の古森記者が、占領後の日本で慰安所が「占領時、米軍も「慰安婦」調達を命令 ホンダ議員言明」という記事を書いて、「命令」の事実はないと指摘を受け、「許可」に書き換えた話もありました。そのときのはてなブックマークのページを貼っておきます。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070505/usa070505005.htm

だからこれは事前に問題点が指摘された話だったのにねえ。「事実」を訴える意見広告で、事実をねじ曲げちゃ台無しでしょうに。

Posted by: Baatarism | June 20, 2007 at 10:29 AM

雪斎さん

こんにちは。

すっかり、この問題、収束したのだと思っていました。

決議案が可決されるのは、致し方ないとしても(驚いてますが)、この意見広告は、あんまりですね。

雪斎さんが以前、仰っていた通り、本来、この問題、謝罪という文脈ではありませんし、このようなやりかえし方は、ナショナリストを高揚さえるだけだと思いますが・・・。

Posted by: forrestal | June 20, 2007 at 12:29 PM

暗闇の中で手探り状態で歩くような論説ではある。

ならばどういう方法が良いのか雪斎様の御説をお伺いしたいです。

Posted by: 憂国者 | June 20, 2007 at 12:56 PM

国益の点から考えるならば、決議を通させるのはマイナスではないでしょうか。
はっきりと言えば、「従軍慰安婦」なるものが事実だったか真実だったかなどという神学論争はどうでもよいのです。

今回この決議に対して沈黙を貫き、罪を認めたかのように米国民にとられるのはデメリットしかありませんし、それを基に今後何らかの日本に不利益を被る法案が通る可能性もなくはないです。
もちろん決議が通っても、すぐに米国民の大多数が日本を非難するようなことになる可能性が極めて低いのは承知です。

不利益しか生まない決議である以上、あらゆる手段を使ってつぶしに行くのは国益の面からみても当然のことではないでしょうか。
その方法が紙面を使った広告であることが良いことであるかどうかは微妙なところですが。

Posted by: ぬねね | June 20, 2007 at 07:20 PM

 拙論の意図を誤解している向きがあるようなので、補足を。
 拙論の意図は、「米国の政治家を説得するつもりで打った広告ならば、少なくとも『占領軍』云々の記述は余計である」というものです。おそっらく、意図したものと完全に逆の結果を生み出すようだという点で、この意見広告は、決議採択をとめる政治的トライアルとしては、完全な失敗でしょう。
 折角、安倍総理が訪米時に、このネタを「店ざらし」状態にすることで沈静化できていたはずなのに、随分と余計なことを書いたものだと思います。日本の「保守・右翼」層というのは、「正しいことは、何処でもいつでも正しい」と信じている点で、昔日の共産主義者と何ら変わらない。冗談じゃねえなと思います。

Posted by: 雪斎 | June 20, 2007 at 08:01 PM

なるほど。 米軍の件が余計だったわけですか。
説得するということが最終目的であることを忘れているというところでしょうかね。
しかし、このまま相手に、”お好きなようにどうぞ”、というわけにもいなかないでしょうね。 
今後、雪斎さんは、日本は具体的にどのようにすればよいとお考えでしょうか。

Posted by: 山川 | June 21, 2007 at 12:15 AM

私は中東情勢で動けず、ブッシュがレームダックな今が歴史論争でアメリカともめるには最適な時期だと思います。とりあえず正論をぶつけるのは間違いではない。そして大統領が変われば手打ちをすればいい。今回の慰安婦決議案はライスや国務省が裏で謀っている。拉致問題で頑なな安部総理に慰安婦という過去の人権問題で揺さぶりをかけて、日本は人権問題のダブスタだと非難する。そして日本に北朝鮮援助をさせるつもりなのでしょう。だから慰安婦の強制連行は事実ではないと日本の保守層が主張するのはタイミング的にもいいと思います。

Posted by: ぴざ | June 21, 2007 at 02:06 PM

結局、アメリカも本音は、何でもネタさえあれば、それを梃にして自国の利益だけを計算して動くということに過ぎない。 逆にいえば、自分たちに不利益となることは、すぐに拒絶反応を示して排除するようさっさと動くだけのことだ。 
だからと言って、今回の件について黙ってまっていては、日本が罪を認めたかのようになるだけだ。 そういうアドバイスは西欧の国はせず、黙って見ているだけだ。 ”危なければ自分で自分の身を守るのは当たり前” と思っているから。
だから、日本は、他人にがたがた言わせないよう、さらに事実を発言すべきでしょう。 
ただ、その場において、言うべきことと、言う必要の無い事は、厳しくかつ正確にコントロールできないとだめですね。

Posted by: 山川 | June 21, 2007 at 09:55 PM

急に「やること」ができたので、エントリー更新を月内は手控えますが、とりあえず所見と補足を。
「件の広告は、それ自体が非難されるべきだ」とは、拙者は、何処にも書いていませんな。拙者が問題にしたのは、「米国を説得する時に,、米国がカチンと来そうなことを言ってはいけない」ということですな。
もっとも、あの決議案が採択されたところで、日米関係の大勢には何ら影響はないと思います。

Posted by: 雪斎 | June 22, 2007 at 01:34 AM

”毎朝牛乳を飲みましょう”と同程度の決議ですからね。
意見広告も、こういう事実でした、それを事実と異なる趣旨で非難したら、あなた方の権威に傷がつきますよ。でやめておけばよかったのに、お宅のおじいちゃんだって同じ事やってたんですから、はほんとに余計な一言。

日常でもこういう一言をいって、話をややこしくする人って居ますよね。
まぁ通ったら通ったで、無視してればいいんじゃないでしょうか。

Posted by: horten | June 22, 2007 at 02:37 PM

そんな細かい点まで熟読し、是々非々でやっているわけないでしょう。選挙と金目当ての学級会に過ぎないのだから、最初から中韓の工作にまんまと乗ってやろうと確信的にやってるんでしょ。仮にその一文がなかったとしても、賛成票が数票減る程度で可決は最初から決まっていたことは疑いない。

Posted by: 海部 | June 28, 2007 at 07:23 PM

そう、諸悪の根源は、中韓の工作グループ。
米下院がどうのこうのより、この馬鹿どもが馬鹿だと観客にちゃんと理解してもらえるよう、うまーく事実説明をびしびしと続ければいいのさ。

Posted by: yoshi | June 29, 2007 at 12:20 PM

「保守」の方々が、またもや稚拙な行動に出たようです。抗議書に名を連ねている方々の中に、121号決議案を読んだことがある人はいるのでしょうか。

米下院外交委員会への抗議書
http://www.ch-sakura.jp/files/top/ianfu-kogisho.pdf

賛同文化人・国会議員・首長一覧(平成19年7月10日現在)
http://www.ch-sakura.jp/files/top/ianfu-sando.pdf

地方議員賛同者一覧(平成19年7月10日現在)
http://www.ch-sakura.jp/files/top/ianfu-giin.pdf

Posted by: むうみん@ぶたぢる | July 14, 2007 at 12:17 AM

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