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June 21, 2007

何という展開か…。続

■ 「自立ということが西側同盟諸国との不和を意味するならば、第五共和制のフランスは疑いなく、昨日までの共和国が望まなかった自立を享受していることになる」。
   ―レイモン・アロン 『ル・フィガロ』(1963年10月3日)―
 昨日のエントリーは、「憂国」系ブロガーの神経を逆撫でしたようである。わざわざ、こういうことを書いたメール・マガジンを紹介された方もいる。
 けれども、このメール・マガジンの記事のような話は、雪斎にとっては、「どうでもよい」ことである。
 昨日紹介の時事通信記事が伝えた通り、、「ワシントン・ポスト」の意見広告が、米国連邦議会下院での従軍慰安婦決議案採択に際して「寝た子を起こす」結果を招いたのであれば、その「現実」を直視しなければならない。

  「それでは具体的に何をすべきであったのか」という問いがあるけれども、既に「従軍慰安婦」案件を含めて歴史認識案件では幾たびか書いているので、繰り返さない。ブログで書くものである以上、精緻さに欠けるのは致し方ない。
 ◆: 「従軍慰安婦」案件を考える視点 2007年03月19日
 結局、件の意見広告は、誰に向けて語った言葉かということが大事である。「アカデミズムの検証の材料」を提起したものなのか。慰安婦決議案採択を止めるための「政治文書」なのか。もし、前者ならば、米国の歴史関係の学術誌に載せれば宜しい。そこでは、外界での喧騒から離れた地道な作業があるのみである。もし、後者ならば、意図したことと逆の結果が生じていることには、この意見広告を実際に作成した人々は自省すべきである。「デートの最後の最後に口にした余計な一言が災いして、彼女に平手打ちを食らった阿呆な男」を弁護しても、仕方がない。件の意見広告は、政治家が何人も名前を連ねているけれども、それぞれの政治家が総ての文面にまで眼を通して署名したと考えにくい。政治家の事務所には、様々な案件に関する賛同・反対を求める色々な働きかけの文書が大量に出回ってくるのだから、それに一々反応していたのでは身が持たない。多分、意見広告の趣旨だけを視て賛同した政治家が多いのではないであろうか。だから、雪斎としては、この意見広告の「草稿」を誰が書いたのかということが、誠に気になる。「文責・○○」と断り書きぐらい入れて欲しいものである。
 それにしても、冒頭に掲げたレイモン・アロンの言葉は、誠に味わい深い。やはり、自主独立ということの意味を考える折には、第二次世界大戦後のフランス軌跡は、多くの示唆を含んでいると思う。雪斎のフランス語修練も、一ヶ月目に突入である。そういえば、件の意見広告も、「ワシントン・ポスト」ではなく、「ル・フィガロ」に出してくれれば、何の問題もなかったかもしれないのになと想像する。

■ 今朝の一枚
 ○ ブゾーニ、リスト、レーガー、W.ケンプ編曲 「J.S.バッハ作品トランスクリプション&変奏曲」
①レーガー:バッハの主題による変奏曲とフーガOp.81
②リスト:カンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」の主題による変奏曲
③同:バッハの名による前奏曲とフーガ
④W.ケンプ編:シンフォニアBWV.29,主よ人の望みの喜びよBWV.147
 いざ、来たれ異教徒の救い主よ659a,審判の日は来たれりBWV.307 & 734
 わが心の切なる願いBWV.727,主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶBWV.639
 目覚めよ、と呼ぶ声ありBWV.645,シシリエンヌBWV.1031
⑤リスト編:幻想曲とフーガ ト短調BWV.542
⑥ブゾーニ編:トッカータとフーガBWV.565 / シャコンヌBWV.1004

   ゲルハルト・オピッツ(P)

■ 諸般の事情により、エントリー更新は暫時、休止します。

■ 追記、更新再開は、来月初頭の予定です。

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Comments

「理解は能力ではない願望である」といのうは山本夏彦氏の言葉だったでしょうか?
いい機会だし、いつかやらねばならない喧嘩なのでしょうから、始まったのを機会と思っていくとこまでいってしまえばいいんではないかと思います。
店ざらしで「認めて黙ったじゃんか」と歴史的事実として認定されるとか、あるのかないのかわからない「米軍の接収文書」とやらの幽霊に怯えたり、それが「あるかもしんないぞ」とほのめかして脅す手合いが蔓延るより、よほどマシでしょう。

日本にとっての「平和のための瀬戸際戦略」発動がよりによってこんなつまらん話かよ^^;、とは思いますが、それは相手も同じでしょう。

Posted by: KU | June 21, 2007 at 07:43 AM

こちらをご覧になっている人の大半はもうご存じなんでしょうけど、
「経緯」については、以下のwebページを始めとする一連のページで語られていますね。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/y/64/

Posted by: MUTI | June 23, 2007 at 12:00 AM

拙者も、この件では「脱力」しましたので、確実に今月一杯は、エントリーを書く気が失せました。
 「ドーハfの悲劇」、リレハンメル五輪、原田雅彦の失敗ジャンプ」、さもなくば、「ジネディーヌ・ジダンの頭突き一発退場」という風情ですな。
 段々、「ブログも、やってられん・・・」と思い始めてきたのは、拙者も、ダーク・サイドに落ちてきた兆しかな思います。

Posted by: 雪斎 | June 23, 2007 at 07:44 PM

世の中には観念世界を戦っている人と、現実世界を戦っている人と、2種類あるということなんでしょう。後者の住人は忙しいし、あまりに健全なため、大きな声は出しません。そして世の中の大多数は後者の住人です。

雪斎先生を前にこんなことを書くのはもう完全に「ナンチャッテ」ですけど、後者の世界に働き掛けるのが政治の仕事ではないかと思います。ということで、ここは雪斎先生に是非とも鈍感力を発揮していただき、書き込み復活を願っております。

このエントリーに刺激されて、バッハのカンタータをCDからパソコンに落として聴いております。

Posted by: うめもと | June 24, 2007 at 01:22 PM

「災い転じて福にする」方法は、何かないもんですかね。

Posted by: MUTI | June 24, 2007 at 07:53 PM

 ブログ復活をお待ちしております。
 雪斎殿はグレートムタの毒霧攻撃、アブドーラ・ザ・ブッチャーの地獄突き(笑)と謙遜されていますが、我々にとっては大きな楽しみなのです。
 たくさんの人々の労苦があってここまで来た日米関係です。その重要性は、両国のスタッフとも、理解している筈。アチラの軍事関係者にも、その傾向は強いと聞いております。
「ドーハの悲劇」も「原田雅彦の失敗ジャンプ」も、次の大会では感動へと導かれましたから・・。ジダンは「キャプテン翼」の大ファンですし。(関係ねぇ~か)

PS
 当方は「脅す」つもりなんて全く無かったのですが、気を悪くされた方がいたようで申し訳ありませんでした。
 ただご理解願いたいのは、「幽霊に怯えるな」と言われましても、多くの交渉当事者にとっては、毎日が「薄氷の思い」のようなものです。ご理解ください。

Posted by: SAKAKI | June 25, 2007 at 09:43 PM

この件については、無邪気で傲慢なアメリカの態度は許せない。
という感情をまず確認した上で、しかし、知恵を絞らないといけない。
アメリカは日本を遥かに陵ぐ強大国であり、核武装した場合の日本でさへも黙らせることの出来る、世界で唯一の国だ。

この件でアメリカと「徹底抗戦」するのならば、日本国は泣き虫やダダっこの類ではなくて、同盟の責任や痛みや苦しみを進んで引き受ける覚悟のある、真実に信頼できる同盟国であるということを今以上に提示しなければならない。

「これほどタフで度胸があって痛みを惧れず約束を必ず守るようなホンモノの同盟国に対して、わざわざ侮辱をもってこれに応じるようなことがあったとすれば、これは日本側の恥ではなくアメリカ合衆国の側の恥であると考えるが如何?」

アメリカに対して真実に意見を訴えたいのであれば、こういう方向しかないように思います。

事実誤認を指摘することは絶対に必要なことですが、日本国の致命的な国益が、(主要)民主主義諸国の相互結束ということから離れてはありえないことを想うとき、人間関係というものが最後には「信頼」や「仲間意識」で決するものであるという現実を知らないでは済まされないと想います。

Posted by: 妖怪 | June 27, 2007 at 06:23 AM

もっとハッキリといいますと

「日本列島のすぐ近くや、自衛隊艦船のすぐ近くで、アメリカ軍が攻撃を受けた場合、日本国政府および自衛隊が、これを黙って見過ごしているということは同盟国の選択としてありえない」

「日米同盟において、撃墜できる可能性がごくわずかでもあるようなミサイルが迎撃可能圏内に入ってきた場合、これに対して撃墜を試みないで済ませる、などというようなことは同盟国の選択としてはありえない」

↑せめてこのぐらいのことは言えるのかどうか。
そこが問われると思います。

Posted by: 妖怪 | June 27, 2007 at 06:36 AM

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