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April 22, 2007

安倍総理のインタビュー

■ 訪米への準備は、出来ているといったところであろうか。
 

□ 訪米で日米同盟のさらなる強化に意欲-安倍首相=官邸筋
                    4月21日15時23分配信 ロイター
 [東京 21日 ロイター] 官邸筋によると、安倍晋三首相は、26、27日の訪米を控えて17日に米メディアとのインタビューに応じ、訪米で日米同盟をさらに強固なものにする意欲を示すとともに、ブッシュ大統領との会談では北朝鮮政策について突っ込んだ話し合いをしたいと語った。また、日本経済を力強く成長させ、世界に貢献したいとも述べた。 
 インタビューで安倍首相は、訪米の狙いについて「今回の訪米を機に、さらに信頼関係を強め、日米の同盟関係を揺るぎないものにしたい。より幅広く、深いものにしていきたい」とし、大量破壊兵器の拡散や地域紛争の頻発など安全保障環境が変化するなかで「日米同盟をより強化していくことが、日本や地域、世界の平和と安定に資する」との認識を示した。
 また、安倍首相は従軍慰安婦問題について「当時の慰安婦の方々に対し、人間として心から同情する。そういう状態に置かれたことに対し、日本の総理として大変、申し訳ない」と謝罪。その上で「われわれは、歴史に対して常に謙虚でなければならないし、常に私たち自身の責任に思いをいたさなければならない」と日本の責任に言及した。     
    …中略
 経済政策については「私は日本経済を力強く成長させていくことを約束している」とし、そのためにはイノベーションやFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)の拡大などオープンな姿勢が不可欠と強調。5年間で対日投資を倍増させたいと述べるとともに、5月からの三角合併の確実な実行を強調した。
 その上で「幸い景気は回復基調にある。力強く経済を成長させていくことによって、さらに世界に貢献していきたい」と述べた。 
   …後略

 この『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙とのインタビューは、「慰安婦案件での責任を認めた」という点がクローズ・アップされて紹介されている。
 振り返れば、シャルル・ド・ゴールは、アルジェリア独立問題に際して、往時のフランス政府と「保守・右翼」層の矛盾する期待が交錯する中で政界に復帰した。フランス政府は、「ド・ゴールならば、うるさい右の連中を懐柔してくれるであろう」と読んだし、「保守・右翼」層は、「ド・ゴールならば、アルジェリア独立への動きをを止めてくれるはずだ」と期待したのである。ド・ゴールは、実際には、そうした「保守・右翼」層の期待を裏切る選択をして、アルジェリア独立への道筋を付けた。戦後のアジア・アフリカにおける植民地独立の流れの中で、フランスがアルジェリア植民地をを維持することの根拠は、薄弱であったからである。ド・ゴールは、その政治選択の故に、「保守・右翼」層の過激派からは命を狙われ続けたのである。映画『ジャッカルの日』は、そうしたフランス社会の緊張を題材にしている。
 この伝でいくと、雪斎は、此度のインタビューで安倍総理が訪米に際しての懸念材料を潰したことは、評価できると思っている。日本の「保守・右翼」層は、この対応に失望するであろうけれども、そうした層の満足を得るのが、執政の目的ではない。こういう対応をきちんと取り続ける限りは、雪斎は安倍総理の執政を支持できるというものである。

■ 下掲は、『月刊自由民主』に寄せた原稿である。安倍総理訪米直前に発表できたのは、良かったと思う。
  □ 日米両国の相似た「歴史の記憶」
 「従軍慰安婦」案件に関して「狭義の強制はなかった」という趣旨の安倍晋三(内閣総理大臣)の発言は、「河野談話」からの後退を示唆したと受け止められた結果、米国国内での反発を招いている。ジョージ・W・ブッシュ麾下の米国政府の対北朝鮮政策が「宥和」に傾斜しているという印象は、特に日本の「保守・右翼」層における対米懸念を膨らませつつある。しかし、こうした対米感情の揺れを前にして冷静に確認すべきは、「そもそも、日本人は、どのように米国を認識してきたか」ということである。日米における対米認識が豊かかといえば、決してそうとはいえないのである。
 日本人にとっての「米国認識」は、「黒船」と「戦争・占領」という二つの出来事に決定的な影響を受けている。それは、「圧倒的な物量」を誇示する米国というイメージと必ず結び付いている。しかし、「ハイパー・パワー」である米国にも「貧しい時代」があったという事情を諒解している日本人は、余り多くない。
ジャック・ラーキン(博物館学芸部長)が著した『アメリカがまだ貧しかったころ』(杉野目康子訳、青土社、二〇〇〇年)は、一八三〇年代の米国社会の一断面を次のように描写している。
 「…オーガスタやヨークのような比較的小さな町でも、あるいは大きな都市でも、、貧しい女性たちが、邪悪で、酷薄な性を売る世界に引きずり込まれることは珍しくなかった。売春婦の多くは、貧しさや家庭に起こった不幸な出来事がもとでこの世界に入った」。
 ラーキンの書には、他にも、伝染病が広がって一家が全滅した無残な光景が記されている。マラリアや結核が往時の米国では「脅威」だったというのである。・
 実際、米国が「富裕な国」になったのは、南北戦争終結以降である。一八七〇年には、ジョン・D・ロックフェラーが「スタンダード・オイル」を設立し、「鯨油から石油へ」の流れを加速させた。同じ時期に、アンドリュー・カーネギーが鉄鋼事業に乗り出した。米国が「豊か」であったのも、一六二〇年のメイフラワー号のプリマス到着から数えて四百年の歴史の中でも直近の百三十年のことでしかないのである。
 因みに、一九三〇年代の世界大恐慌期の米国の風景を描いたのが、ジョン・スタインベックの傑作『怒りの葡萄』である。ジョン・フォード監督の映画は、ヘンリー・フォンダ演じる一家の息子が、結局は殺人の故に官憲に追われて家族と別れるという結末を迎える。それは、一家にとっての「不幸」を意味するのは間違いない。同じ時期、日本の東北地方では、折からの凶作と金融恐慌に伴う生糸価格暴落が農家の困窮を深めた結果、年間数千名規模で「娘の身売り」が行われた。『怒りの葡萄』が描いたオクラホマの農民にも東北地方の農民にも、それぞれの苦難の時間が流れていたのである。このように、日本と米国は、実は似たような「歴史の記憶」を持っている。日米関係の紐帯を強める上では、その相似た「歴史の記憶」を想起させることが、「自由と民主主義」といった観念に拠るよりも、遼かに有益であろう。
 筆者は、自由民主党機関誌『月刊自由民主』(二〇〇六年七月号)に次のように書いた。
 「筆者は、後世の人々が、『〈ブッシュ・コイズミ同盟〉の時期が日米関係の最良の時期であった』と懐かしむことがないようにと願っている。『ブッシュ・コイズミ同盟』は、小泉とブッシュという二つの個性が築いた『人間関係』に依るものであったけれども、そうした『人間関係』が小泉、あるいはブッシュの後継指導者にも成立するのかは定かではない。…日米関係が良好であるという予断は、『ブッシュ・コイズミ同盟』の終焉を機に一旦は御破算にすべきものなのである」。
 四月末の安倍の訪米を機に、日米両国における相似た「歴史の記憶」を見つけ出す作業が意識的に始められるべきであろう。日米関係の当面の「陽」と「陰」に一喜一憂するのは愚かであるけれども、「自由と民主主義」の理念を共有するが故に日米関係が磐石であるという予断を持つのも愚かである。日米関係を支える地道な努力の「縁」としては、「歴史の記憶」を確認する作業こそは、誠に相応しいものなのではないか。
    『月刊自由民主』(二〇〇七年五月号)掲載

■ 今朝の一枚
 ○ 鈴木重子 『プルミエール』

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Comments

心配です。
いや、日本の保守とかではなくて、韓国・北朝鮮です。
慰安婦の件で謝罪するとまた滅茶苦茶な保障問題を突きつけてきて大混乱になるのではないでしょうか。
今回、中国の方はあくまで「勘定」を前面にだした外交でしたが、朝鮮半島のほうは感情こそ感情とばかり、反日を扇動し、これから日本は相当なカネを搾り取られ、それこそ日本国内のナショナリズムが高まりかねません。

訪米から悪夢が始まらなければよいのですが・・・。

Posted by: ペルゼウス | April 23, 2007 at 03:15 AM

>ペルゼウスさん
韓国の感情は慰安婦問題からバージニア工科大の事件に移ってしまった感がありますね。安倍総理訪米時の抗議運動も中止されてしまいましたし。感情に基づく反日の弱点はこういうところにあるんでしょうね。

この際、安倍総理がバージニア工科大を訪問して犠牲者を追悼するというのも良い手かもしれません。それをやれば、米国内の安倍総理に対する感情は改善するでしょうね。韓国もさすがにそれには抗議できないだろうし。

Posted by: Baatarism | April 23, 2007 at 12:15 PM

 週刊誌の記事に対して安倍首相がまたも激高してマジレスしちゃってますが・・・。「荒らしはスルー」という教訓を慰安婦の件で得ていたと思ったのですが・・・、心配です。

Posted by: ささらい | April 25, 2007 at 12:10 AM

>ささらいさん
週刊朝日側は一応お詫びしたようですね。
http://www.asahi.com/national/update/0424/TKY200704240366.html

この件は安倍総理の勝ちでしょう。w

Posted by: Baatarism | April 25, 2007 at 10:42 AM

結局、慰安婦問題のデモはやったようですね。
約100人ということなので、あまり大きなデモではなかったようですが。
http://www.asahi.com/politics/update/0427/TKY200704270157.html

Posted by: Baatarism | April 27, 2007 at 07:23 PM

戦地売春婦(所謂従軍慰安婦)の実態
http://www.youtube.com/watch?v=5jOuVPbDMxY
本当のことを動画で知っておこう。

韓国は“なぜ”反日か?
http://3.csx.jp/peachy/data/korea/
よくまとまった資料です。

Posted by: 戦地売春婦(所謂従軍慰安婦)の実態 | May 02, 2007 at 06:26 PM

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