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March 23, 2007

城山三郎作品と「戦後」

■ 誠に残念な訃報である。
 

□ 「落日燃ゆ」「男子の本懐」作家・城山三郎氏が死去
             3月22日20時4分配信 読売新聞
 経済小説のパイオニアで「落日燃ゆ」「男子の本懐」など、近代日本の指導者像を描いた作家の城山三郎(しろやま・さぶろう=本名・杉浦英一=すぎうら・えいいち)氏が22日午前6時50分、間質性肺炎のため、神奈川県茅ヶ崎市の病院で死去した。79歳。
 告別式は親族のみで行い後日、お別れの会を開く予定。喪主は長男、杉浦有一(ゆういち)氏。
 名古屋市生まれ。愛知学芸大(現・愛知教育大)講師の傍ら小説を書き始め、1959年「総会屋錦城」で直木賞を受賞。「官僚たちの夏」「小説日本銀行」など組織と個人の生き方を問う経済小説を開拓し、歴史小説「黄金の日日」や本紙連載「毎日が日曜日」などのサラリーマンものが次々にドラマ化され、流行語にもなった。吉川英治文学賞、菊池寛賞などを受賞。

 雪斎は、城山三郎作品を真面目に読んでいた。特に思い入れの深いのは、次の三つである。
 ① 『男子の本懐』
  / 濱口雄幸、井上準之助の二人の足跡を描いた作品である。「男子の本懐」と呼べるものを手掛けられれば、それは、男子にとっては「最たる幸福」である。そうしたことを教えてくれた。
 ② 『雄気堂々』
  / 若き日の青淵翁・渋沢栄一を描いた作品である。武州・血洗島の農民だった栄一が、縁を持って徳川御三卿、一橋家に仕え、フランスに渡り、帰国するまでが描かれる。
  印象深かったのは,一橋家に仕官した当時の渋沢が、「建白魔」であったということである。若輩の故に微々たる禄しかもらえず、家内の鼠を捕って食する生活をしていた渋沢が、その一方では一橋慶喜に一生懸命に「建白」を続け、それが評価されてフランスに渡る機会を与えられた。そのフランスでの見聞が、後の大実業家・渋沢の下地を作ったのである。
 そういえば、二十歳代の後半に愛知和男代議士に仕えたばかりの雪斎も、そういう風情であった。若き日に、やるべきことは、古今、変わっていないということである。
 ③ 『落日燃ゆ』
  / 広田弘毅の生涯を描いた作品である。
 他にも、『官僚たちの夏』、『鼠』、『硫黄島に死す』といった作品が印象深い。
 城山氏の作品世界は、司馬遼太郎の大掛かりな作品に比べれば、誠に小ぶりなものであったかもしれない。ただし、それは、「経済」によって成った戦後・日本の思潮をヴィヴィッドに反映していたといえるであろう。NHK大河ドラマにもなった『黄金の日々』は、戦国時代の英雄ではなく、「商人」を主人公にした作品なのである。
 雪斎は、城山作品からは、かなりの影響を受けた。そのことを感謝しつつ、城山氏の御冥福をお祈りしたい。
                      合掌

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Comments

山作品は子供の頃、テレビドラマ化された『落日燃ゆ』で知ったのが最初でした。当時のNET(現・テレビ朝日)で、
廣田弘毅・・・滝沢修、妻静子・・・高峰秀子、吉田茂・・・フランキー堺、東條英機・・・若宮大祐
と言う配役だったのを記憶しています。
放送されたのは1976年7月29日・・・つまりその前々日の27日は、ロッキード事件で田中角栄が逮捕されたあの歴史的な日でした。
子供にとってはちょっと難しい、よくわからない内容だったのですが、処刑される前に廣田1人だけが「天皇陛下万歳」を唱えなかったシーンなどは強く印象に残っています。できればもう一度見たいドラマですが・・・でも、もうテレビ局にもテープが残っていないかもしれませんね。
ちなみに、wikipediaには、廣田が「万歳」を「マンザイ」と言ったというのは「小説のフィクション」となっているのですが、これは本当なんでしょうか。
「マンザイ」の件は児島襄氏の『東京裁判』(廣田の遺族にも取材している)にも書かれている話なので、まさか城山氏の作り事とは思えないのですが・・・。
長文失礼しました。

Posted by: who | March 24, 2007 at 12:14 AM

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