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March 12, 2007

「華麗なる一族」の虚実・続

■ TBS系テレビ・ドラマ『華麗なる一族』は、「竜頭蛇尾」のドラマになりそうな雰囲気である。木村拓哉さん演じる鉄平が海に落ちた港湾労働者を海に飛び込んで助けるという演出に接して、雪斎は、このドラマに見切りを付けた。「安易な演出だ」と思った。
 もっとも、こうしたドラマが描いた「華麗なる一族」関係は、現実に存在する。
 たとえば、とある既に閣僚経験を有する自民党衆議院議員の一族は、次のようにつながっている。

祖父  貴族院議員 国策企業総裁
父   衆議院議員 大臣
母   武官系勲功華族(男爵)の孫
叔父  衆議院議員 大臣
叔母  戦前期 財閥家出身 母は子爵家出身、伯父は全国紙社主
伯父  都道府県知事 
義兄  都市銀行会長(万俵大介のモデル)の孫

 こういう事例は、「永田町」にいれば、掃いて捨てるほどにあることが察知できる。ただし、こういう話は、世に強調されることは余りない。真っ当な政治家ならば、自分が「華麗なる一族」に連なっていることを表向き語ることはない。米国では、「たとえ資産を持っていても、世間で無名な人々」は、「セレブ」とは呼ばれない。「セレブ」には「虚飾の言葉」という趣きがあるけれども、実際に「華麗なる一族」に連なる人々は、「セレブ」と呼ばれるものとは完全に異なる生き方をしているのである。
 こうしてみると、山崎豊子さんの小説『華麗なる一族』は、相応の取材や思索の裏付けを持っているにせよ、結局は、どこまでいってもフィクションに過ぎないものであることが判る。
 昔、市原悦子さん主演のテレビ・ドラマ・シリーズに、「家政婦は見た」というのがあったはずである。それは、世間では社会ステータスの高いとされる家庭に派遣された家政婦が、その家庭の無茶苦茶な内幕を知り、「正義の鉄槌」を下すという筋書きであったはずである。ドラマ『華麗なる一族』は、「市原悦子が登場しない『家政婦は見た』」と考えても、差し支えないのではなかろうか。「豪勢な生活」に憧れる庶民感情を刺激することと「でも、無茶苦茶な家庭だよね…」と庶民の道徳的優越感を満足させることの両方の役割を果たしているという点で、この種のドラマは、「一粒で二度、おいしい」ものなのである。
 とはいえ、雪斎は、山崎豊子さんの文学世界のファンである。雪斎は、日本の文学作品には「個人的な話をぐだぐだ書いている」と偏見を抱いていた時期があったので、そうした偏見を破ってくれた山崎作品には少しばかり思い入れがある。

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Comments

以前 私の大叔父 島村喬こと百瀬三郎( 満日東京政治部 東條内閣国策研究会講師 戦後は作家)が山崎豊子さんと剽窃盗作に関して裁判になったことがあります 戦前人格形成を終えた人と 戦後売り出した人の間には深い溝があり 特に小説などの世界では 価値感が滲みでるため 人々の心境にざらざらとしたものを残すようです 華麗ではあっても実権無きところで 戦後社会の実力者の織り成す欲望社会のなか 戦前的価値を持った階級は 生きてゆく上で自尊心を保つのが容易ではなかったと思います ドラマではその辺までは描けなかった様で 原作の 戦前は軍や官僚 華族の下にあった有産階級が政治をも私物化してゆく力を持った 開放された戦後社会のなかで 逆に自らが呪縛化して行く姿がドラマではちょっと重かったのか 万俵家が変態一家の崩壊的に描かれてしまってますね

Posted by: ryu | March 12, 2007 at 10:18 AM

雪斎さん

こんにちは。

『華麗なる一族』まったく見ておりません。。。
ただ、山崎豊子さんの作品は、好きです。
特に『白い巨搭』は、面白かったですね。

お知り合いの大阪大学の先生が言うには、現在もまさに、『白い巨搭』だそうです。

本当かは、わかりませんが。

Posted by: forrestal | March 12, 2007 at 12:10 PM

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