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February 26, 2007

「格差」の虚実

■ 「格差」を語る上で興味深い記事である。
 

□ 地域間の所得格差:「小泉政権下で拡大」実証 係数、02年から上昇--毎日新聞集計
 99~04年の全国の市区町村の納税者1人あたりの平均所得に関し、格差の度合いを示す「ジニ係数」を年ごとに割り出したところ、02年を境に上昇したことが3日分かった。ジニ係数は毎日新聞が東京大大学院の神野直彦教授(財政学)の協力を得て割り出した。平均所得の最高値と最低値の差は3・40倍から4・49倍に拡大、小泉純一郎前政権の間に地域間格差が開いたことを示した。神野教授は「感覚的に論じられてきたものを初めて定量的に示せた」と指摘しており、地域間格差は4月の統一地方選の主要争点になりそうだ。以下、略
 
 因みに、総てのデータは、ここから把握できる。

 「順位」 「市町村名 都道府県」 「1人当たり額・所得(万円)」という順序で上位、下位の十傑を抜き出すと次のようになっている。

 ○ 上位10市区町村
1 港区 東京 947
2 千代田区 東京 811
3 渋谷区 東京 704
4 上野村 沖縄 695
5 芦屋市 兵庫 595
6 中央区 東京 572
7 文京区 東京 566
8 目黒区 東京 550
9 追分町 北海道 523
10 世田谷区 東京 522

 ○ 下位10市区町村
2366 山田町 宮崎 226
2367 城辺町 沖縄 226
2368 七山村 佐賀 225
2369 八竜町 秋田 225
2370 野尻町 宮崎 224
2371 波佐見町 長崎 223
2372 東成瀬村 秋田 222
2373 山江村 熊本 215
2374 球磨村 熊本 214
2375 上砂川町 北海道 211

 平均所得最上位の東京都港区947万円と最下位の北海道上砂川町211万円の間には、4・5倍近くの開きがある。確かに、この数値だけを見れば、「日本の格差も、凄いものである」と思う。ただし、この種のデータは、冷静に観察する必要があるとおもわれる。
 全国最下位にランクされた北海道上砂川町が倉本聡原作テレビ・ドラマ『昨日、悲別で』の舞台になっていたことを覚えている人々は、今では少ないであろう。このドラマは、日本テレビ系で1984年3月9日から6月1日まで放送された。世がバブルの狂騒に向かう直前の時期である。印象に残っているのが、架空の炭鉱町「悲別」から上京したダンサー志望のヒロインが、実は「愛人バンク」に身を置いていたという話である。「貧しい土地―娘の身売り」という類推が頭に浮んだ。バブル最盛期に札幌に乗り込んだ雪斎は、当時でも上砂川町や歌志内市を含む空知一帯が「うらぶれた」雰囲気であったのを思えている。因みに、北海道関連でいえば、9位に追分町、17位に猿払町が入っている。追分町は、新千歳空港の御膝元であり、猿払町は、ホタテの水揚げ高日本一の場所である。北海道随一の大都会であるはずの札幌市は、全国で501位、道内限定で何と18位である。だから、単純に、「都会=豊か、田舎=貧しい」という図式は成り立たない。
 この現状が2000年以降に生じたものであるはずはない。こういう「中央―地方」格差なるものは、それこそ数十年の歳月の積み重なりの結果ではないのであろうか。
 ところで、このデータで驚くのは、東京都港区の突出ぶりである。港区の住宅地というのは、六本木や南青山しか思い浮かばない。そいう場所に住めるのが、どういう層かと想像すれば、この結果も納得せざるを得ないといったところか。
 雪斎は、安倍晋三内閣の対外政策には色々と注文がある。ただし、雪斎は、安倍内閣の「内治」の方向性は断固として支持する。こうした格差を是正しようと思えば、経済成長の加速を軸として進める以外にないのではないであろうか。
 雪斎にとって「縁」のある場所を並べてみる。

1822  宮城県栗原市  268  出生地
1180  青森県八戸市  293  高校まで
294   宮城県仙台市  347 大学浪人時
501   北海道札幌市  327 大学時代
105   東京都江東区  384 現在まで

 「住んでいる場所」だけを見れば、雪斎も着実に出世(?)している。次は、文京区(第7位)でも目指そうか(笑)。

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Comments

これはこれで興味深く拝見しました。

小生は業種による格差にも関心があります。例えば、中央・地方の代議士、同じく公務員、天下りした官僚、大企業から零細企業までのサラリーマン、小売商、農家、等々です。税務署には相当信頼性の高いデーターが揃っている筈ですから、必ず分析できるでしょうが、こうした数値を発表している機関はあるのでしょうか?

Posted by: 赤堀 篤良 | February 26, 2007 07:33 AM

 「統計でうそをつく」という言葉があります。統計やデータは、きちんと層別しないといけませんね。最近の「格差」論議では、これが欠けている。ちなみに、時間軸でデータを処理した場合、ほとんどの場合、相関らしきものがでる。今回でいえば、時と共に格差が拡大しているというデータがでる。これは疑相関といって、何かを論じたつもりで、何も論じてないと同じです。何の格差が、何と相関しているのかみきわめること、これが大切ですよね。
 もうひとつ、所得格差の上位と下位が拡大したとして、では上位地域の人口と、下位地域の人口変化はどうだったのか、働く人の数がどうかわったのか、そこまで議論するのが格差論議ですね。それを捨象して、地域格差に目を奪われると、日本の今の本当の問題「都市の貧困」が見えなくなりますね。ひょっとしたら、それが狙いかも。

Posted by: M.N.生 | February 26, 2007 10:13 AM

>日本の今の本当の問題「都市の貧困」が見えなくなりますね。ひょっとしたら、それが狙いかも。

ついそう思ってしまいますよね。時々テレビでも取り上げられるようになってはいますけど、それでもごく少数の人々の問題と思われているフシがあります。

恐らく一番有用な種類のデータは、学歴別の追跡調査による統計的分布でしょう。高校・大学卒業後10/20年の時期の収入分布を現在と10年前、20年前で比較とか。ばらつきは確かに大きくなっているはずです。

結局良質な雇用の絶対量ということに帰着するのですが、奇しくもその現状は、上位層であまり学力低下がなく平均以下の学生で学力が急低下しているという教育の現状とマッチしています。それを積極的に語りたくないのは、まぁ理解できるのですが。

Posted by: カワセミ | February 26, 2007 08:44 PM

まったく経済学者というのはよけいなことばかりしてくれますな。平均の2倍を軽く超えていては、給料が安いと文句がつけにくくなります。

昔、「産業空洞化」関連の文献を読んでいて、80年代に愛知県の県議会か県内の市町村の議会が失業率が10%を超えるアメリカの地域を視察して、「ところでお前のところの失業率はいくつだ」と視察された側が尋ねると、「2%程度」と答えてアメリカ人には奇異に映ったようです。いまやっている格差「論争」も似たようなものかなと。

よけいですが、江東区に住みながら文京区に勤めるというのが、ベストかも。

Posted by: Hache | February 27, 2007 01:47 AM

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