「復党問題」という妖怪
■ 「寝た子を起こした」というべきであろうか。
□ 造反・衛藤氏の自民復党容認へ=「国造りの方向」同じ-安倍首相
2月23日19時1分配信 時事通信
安倍晋三首相は23日夕、郵政民営化に造反して一昨年の衆院選で落選した衛藤晟一氏の自民党への復党について「衛藤氏は基本的に同じ考え方、方向性を持っている。国造りを一緒にしていきたいという人に加わってもらうのは、わたしは当然だろうと思う」と述べ、容認する意向を表明した。これに関し首相周辺は「参院選を考えると今が復党のぎりぎりのタイミングだ」と語った。
衛藤氏は夏の参院選比例代表に同党からの出馬を求めている。首相の発言は、同氏の復党を認めた上で、参院選に公認候補として擁立する意向を示唆したものとみられる。ただ、公明党は同氏の復党に反対しており、復党が決まれば両党の選挙協力に影響が出るのは必至だ。□ 「身びいき」に広がる安倍首相批判=中川氏との不仲説も-衛藤氏の自民復党
2月27日23時1分配信 時事通信
安倍晋三首相が郵政造反組の衛藤晟一前衆院議員の自民復党を容認したことで、「身内」の復党を優先させた首相への批判が党内外に広がっている。落選組の復党に慎重だった中川秀直幹事長は方針転換で苦しい釈明に終始。首相との「不仲説」も取りざたされている。
「衛藤さん、何とかなりませんか」。首相は26日夜、笹川堯党紀委員長に電話し、党紀委での迅速な審査を求めた。衛藤氏は27日、復党願を提出し、党紀委の開催が決まった。首相の要請はこれを見越した「根回し」であるのは明らかで、党内では「首相の独走」(閣僚経験者)との反発の声が上がった。
結論からいえば、雪斎の認識は、安倍総理を批判した舛添要一氏のものに近い。こうした安倍総理の意向は、自身の政権運営にはマイナスの効果しか持たないであろう。実際、自民党大分県連サイドも、反発していると伝えられる。
無論、安倍総理にも、「造反組」復党を急ぐ論理はあろう。しかし、最たる問題は、その論理が説得性を以て伝わってこないということである。「身びいき」という批判は、安倍総理には心外なものであるかもしれないけれども、そのように観られていることが、安倍総理にはマイナスである。「『美しい国』」造りへの指向が共通している」という説明にしても、それは、「かくかくじかじかの具体的な政策を断行するためには、その政策に精通する彼の知見が必要である。従って、彼を復党させる」という明瞭な論理とは、掛け離れたものである。
雪斎は、柳沢伯夫大臣を護ったことによって、安倍内閣の失速傾向に「歯止め」が掛ったと判断していた。此度、「復党」問題が再び頭を擡げてきたことは、この判断に修正を加える必要があるのではないかという感触を抱かせる。「この内閣は、本当に大丈夫なのか…」と率直に思う。安倍総理にとっては、たとえば「拉致」解決は政治家としての看板であるかもしれないけれども、もし安倍総理の執政が頓挫するようなことがあれば、後任の宰相は安倍総理以上の熱意を以て「拉致」案件に取り組むとは思われない。此度の「造反組」前議員復党は、自らの政権失速状況の加速という代償を払って取る政治選択にしては、余りにも「価値」の乏しいものであるといわざるを得ない。安倍総理にしてみれば、今は、「拉致」案件解決という自らにとっての大業を実現させるためにも、「自重の時」であろう。にもかかわらず、安倍総理は、自らの政権運営に逆風が吹く状況を自ら作り出している。何を焦っているのであろうかと訝る。それとも、渦中の「造反組」前議員は、対朝関係打開に向けた特別なスキルを持っているというのであろうか。それならば、雪斎も、納得するのだが…。
最後に、清沢洌の言葉を紹介して、本エントリーの締めとする。諸般の事情により。エントリー更新は来週初めまで停止する。
「お前は一生の事業として真理と道理の味方になってくれ。道理と感情が衝突した場合には躊躇なく道理につくことの気持ちを養ってくれ」。
―清沢洌『非常日本への直言』「序に代えて わが児に与う」『清沢洌評論集』(岩波文庫)所収―
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Comments
ですなあ。安倍さんの明らかな判断ミスは、政権発足後はこれが初めてのような気がします。
Posted by: かんべえ | February 28, 2007 03:22 PM
首相が誰であれ、私は、静かに応援しているのですが、コレはちょっと理解に苦しみますね。畑に出ている地雷をワザワザ踏んだような・・
Posted by: SAKAKI | February 28, 2007 04:57 PM
一人だけ復党させるくらいなら、造反落選組を全員復党させる方がまだダメージは少なかったのではないでしょうか?
えこひいきと見られることだけはやっちゃいけないでしょう。
Posted by: Baatarism | February 28, 2007 05:19 PM
雪斎さん
正直、復党問題は、多くの国民がすでに、忘れかけていた頃、総理から、わざわざ、思いださせる必要はないのに。。
また、そのことに関する、丁寧かつ、適切な説明がないですね。
Posted by: forrestal | February 28, 2007 11:42 PM
私は復党問題に関する限り
国民からの支持率はもう下がりきっているので
(復党のせいで幻滅した支持者からの支持は既に失っているので)
支持率ということに関していうならば、
ダメージは小さいと思います。
ただし、たった一人の政治家を復党させることに見合うだけのコストか?といわれると、支持率のダウンが、たとい3%程度であったとしても、とても釣りあうものではないと思います。
前回の復党に関しては「落選組は除外」しなければ、支持率への打撃はこの程度では済まなかったと思います。
しかし、新たにまた復党させるというのであれば、いちど衆議院の総選挙を経た上でまとめて、というのが最低限の条件ではないでしょうか。
私の安倍政権への態度は、前回の復党問題の時点で、とても冷ややかなものとなりました。
安倍総理が「スジ違いをやった。無理と通した」という自覚があるようには見えなかったからです。「総理総裁としての当然の権利を行使したまでのこと。何が悪い?」と言わんばかりに見えました。
国民との意思疎通・信頼構築に失敗した総理が「戦後レジームの脱却」を掲げたところで、国民に訴える力が少しもありません。
こんなことで「脱却」など、本当にできるのでしょうか。
民主国家において、民意を説得する努力なくして、どうやって「改革」を実現するというのでしょうか。
Posted by: 妖怪 | March 02, 2007 10:24 AM
コメントをありがとうございます。
拙者は、安倍総理の執政を支持しますが、そこには「粗さ」が目立つのですな。この「粗さ」が気になって仕方がないわけです。
Posted by: 雪斎 | March 05, 2007 08:15 PM