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February 23, 2007

「野望」の段階

■ 尋常小学唱歌「鯉のぼり」の三番の歌詞は、次のようなものである。。

  百瀬の瀧を 登りなば
  忽ち龍に なりぬべき
  わが身に似よや 男子と
  空に躍るや 鯉のぼり

 古代中国の伝説上の聖王で夏の始祖である禹王が、山西省河津と陝西省韓域のあいだにある龍門山を切り開いて黄河の水を通じさせた。その龍門峡という名の急流を上った鯉は龍になる。この故事に依って、男児の立身出世を願う想いを込めたのが、「鯉のぼり」の習俗である。ところで、この『鯉のぼり』の唱歌の意味は、子供の頃の雪斎には、今ひとつ意味が判らなかった。「何故、広島東洋カープは、鯉なのか」という疑問が、この故事との関連で解けたと思ったのは、中学生くらいの頃の雪斎における「アハ体験」の一つである。


 高校時代には、『蛍雪時代』という雑誌が身近にあった。「蛍雪の功」の故事に因んだ雑誌である。『晋書』「車胤伝」中、「晋の車胤は、貧しいために灯火用の油が買えないで蛍を集めてその光で書を読み、また、孫康は雪の明りで書を読んだ。車胤も孫康も、後に朝廷の大官に出世した」。この故事は、若き日の刻苦勉励の意義を説いている。
 そして、「隴(ろう)を得て蜀(しょく)を望む」という言葉がある。これは、「一つの望みを遂げて、更にその上を望むことの喩え。欲望には限りがないことの喩え」として語られる。『後漢書』「岑彭伝」中、 魏の司馬懿(しばい)が隴の地方を平定し、勢いに乗じて蜀を攻め取ろうとした折に、曹操が後漢の光武帝を例に取って答えた言葉である。
因みに、曹操は、その詩「歩出夏門行」第五首で次のように詠んでいる。
 「老驥は櫪に伏すも、志は千里に在り、烈士は暮年になるも、壮心は已まず」。
 「老驥(ろうき)、即ち老いたる名馬は厩に伏していても、千里を走ることを夢み、勇者は晩年になっても、壮年の時のような気概を持ち続ける」という意味である。こうした故事に鼓舞されながら生きていると、人間は、何時までも「精気」を失わないような気がする。中国古典は、日本人にとっては大事な「教養」の一つなのであるけれども、最近は、どうなのであろうか。
 ところで、雪斎は、北海道大学学生時代、将来、何をしたいと思っていたのか。
 ① 大学の政治学系教授になる。
 ② 『中央公論』に自分の原稿を寄せる。
 ③ 自分の書を上梓する。
 ④ 誰か有力政治家の「軍師」として活動する。
 ⑤ 「ミリオネア」になる。
 ⑥ 銀座のバー「ロオジェ」で酒を飲む。
 ⑦ 夏目雅子並みの美女を妻に迎える。
 ⑧ 海外大学での三年の研究生活
 ⑨ 「バイロイト音楽祭」で『指輪』を観る。
 この内、①②③④⑤⑥は大方、既に実現した。⑦⑧⑨は、「その内、何とかなるであろう」と楽観視している。
 故に、現在は、「隴を得て蜀を望む」というのが、雪斎にとっての「野望」の段階である。既に「隴」を得た雪斎にとって、望むべき「蜀」とは何か。様々なイメージがある。齢六十を迎えるまで後十八年の時間がある。気合を入れて精進しなければなるまい。
 そして、雪斎は、齢七十五を過ぎた頃でも、曹操に倣って、「老驥は櫪に伏すも、志は千里に在り、烈士は暮年になるも、壮心は已まず」と吼えていたいものだと思っている。雪斎は、子供の頃、「騒々しいガキ」といわれた。ならば、「騒々しい爺さん」になるしかあるまい。
 何故、今日は、こういうエントリーを書いたのであろう。書き始めたときに流したのが、ベートーヴェンの交響曲第三番「英雄」(ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィル〉であった。結局、「英雄」繋がりであった。

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Comments

世平白髪多
残躯天所許
不楽復如何

Posted by: KU | February 23, 2007 at 07:05 AM

・KU殿
 御意。拙者も、その境地に憧れます。実際は、どっちなのか…。これから次第でしょう。

Posted by: 雪斎 | February 23, 2007 at 08:17 AM

100瀬の谷を上った鯉は竜になる。
広島東洋カープがなぜ鯉なのか?
この二つでアハ体験をされたというのですが、
小生どうも鈍くてアハになりません。

竜、ドラゴン?、ドラゴンズ??
中日とM&A案件でも在ったのでしょうか?
それとも、100勝して中日とようやく同じになれるほど、弱かったとか・・・。

申し訳ありません。ご教示いただければ幸いです。

Posted by: sal | February 23, 2007 at 03:19 PM

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