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February 11, 2007

「産みの苦しみ」…か。

■ 『時事通信』配信の三つの記事は、冷静に考えると中々、興味深い。

□ 北、200万キロワット支援要求=「見返り」めぐり難航-6カ国協議
2月10日14時0分配信
 【北京10日時事】韓国の通信社・聯合ニュースは10日、北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議で北朝鮮が寧辺の核関連施設の閉鎖など「初期段階措置」の見返りとして、200万キロワット相当のエネルギー支援を要求し、同措置の期限である60日内に使用できるよう求めていると報じた。複数の協議筋によると、3日目に入った6カ国協議では、北朝鮮が同措置を取った場合、ほかの5カ国がエネルギー支援などでどのような見返り措置を講じるかについて調整が難航している。

 □ 合意文書修正案出せず=対北支援で難航、長期化も-6カ国協議
                           2月10日22時0分配信
 【北京10日時事】北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は3日目の10日、議長国・中国が米朝など各国と相次いで2国間協議を開き、北朝鮮が寧辺の核施設閉鎖など「初期段階措置」を取った場合の見返り措置について集中的に議論した。日本代表団筋によると、大規模な支援を要求する北朝鮮と5カ国の間の立場に大きな開きが残っており、調整は難航している。中国は同日、合意文書の修正案を提示できなかった。
 中国外務省の秦剛副報道局長は同日夜の記者会見で「焦点は北朝鮮への経済・エネルギー支援だが、立場の相違が比較的大きい」と指摘。佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長も同夜、記者団に「解決方法が見いだせず、厳しい状況が続いている」と述べた。
 タス通信によると、ロシア首席代表のロシュコフ外務次官は同日、最も困難な点は「(北朝鮮への)経済支援の規模とその時期・期間だ」と述べた。
 日本代表団筋は「まだ調整に時間がかかる」と協議が長期化する可能性を示唆。中国は11日も各国と調整を続け、打開策を模索するが、先行きは不透明感が強まっている。

 □ エネルギー支援で「相違大きい」=受け入れ可能案を模索中-中国
2月10日23時0分配信
 【北京10日時事】中国外務省の秦剛副報道局長は10日夜の記者会見で、6カ国協議で「議論の焦点は北朝鮮へのエネルギー・経済支援だ」と述べるとともに、「各国がそれぞれ提案を行ったが、今のところ立場の相違が比較的大きい」と指摘、調整が難航していることを認めた。
 副局長は「食い違いは縮小しつつある。幾つかの個別問題に集中しているこれら相違が、重要問題でこれまで得られた共通認識に影響を与えることはない」と強調。「積極的で柔軟な態度で、各国とも受け入れられる案を模索している」と説明した。

 北朝鮮が、ごねている印象が伝わってくる。北朝鮮の「非核化」が、既存核施設を再び稼動できない状態にするという意味で合意されているのであれば、北朝鮮がその代償を高く吹っ掛けようとするのは、外交戦略上、何の不思議もない。ただし、ここで読み切らなければならないのは、北朝鮮は、此度の協議を決裂させる覚悟を持っているのであろうかということである。北朝鮮は、急に過大な要求を示すに際して、「今回、ごねて協議全体を流しても、次がある」と思っているか、それとも、「次はないのだから、この際、徹底してごねてやれ」と思っているか。この北朝鮮側の心理の見極めが、協議全体の行方を左右するであろう。
 というのも、次の記事の伝えている事実の意味は重いからである。
 

□ F22、きょう嘉手納基地へ
          2月10日10時19分配信 琉球新報
 米国バージニア州ラングレー空軍基地所属の最新鋭ステルス戦闘機「F22Aラプター」が10日午後、米国外では初めて嘉手納基地へ暫定配備される。米軍の説明によると配備期間は90―120日。当初予定の12機のうち天候不順のため6機が先行し中継地のハワイから飛来する。防衛施設庁は到着予定時刻は10日午後4時15分ごろと発表した。
 嘉手納基地への配備途中でF22A12機は現地時間の7日、ハワイ州のヒッカム空軍基地に到着した。配備に伴いパイロット20人を含む250人以上の空軍兵も派遣される。
 嘉手納に配備されるのは第27戦闘飛行隊の所属。米空軍ホームページによるとF22の海外配備に伴い太平洋地域にB1爆撃機やB52爆撃機なども一時的に配備させた。
 嘉手納基地に最新鋭機が配備される理由について、米空軍は「特定の脅威に対するものではない」としているが、専門家からは核開発問題を抱える北朝鮮などへのけん制との指摘もある。

 このF22暫定配備は、「六ヵ国協議」継続中の北朝鮮に対して、どのような心理上の効果を与えているであろうか。F22という戦闘機は、ステルス性能に加え、かなり強力な地上爆撃能力を持つことは周知の事実である。米国にしてみれば、「これ以上、ごねるようならば、何時でもF22やB1を飛ばすぞ」というメッセージが込められているのは、「言わぬが花」のj事項であろう。イラクとと異なり、米国が北朝鮮攻撃に踏み切ったとしても、火の粉を被り後始末をするのは、米国ではなく韓国、中国、日本である。米国が北朝鮮を攻撃する際に負うリスクは、攻撃対象が北朝鮮核施設に限定される限り、イラクの折に比べれば遙かに小さい。当然、こうした攻撃は、中韓両国の反発を食うであろうけれども、それも、「自分に火の粉が降りかかるから」という理由にある。もし、朝鮮半島「非核化」が成り、あるいは北朝鮮情勢に伴う混乱が局限できれば、金正日体制が潰れようと潰れまいと、どうでもよいことである。それが関係各国の「本音」なのではないのであろうか。そうした事情を北朝鮮政府がどこまで察知できているかということが問題なのである。
 故に、雪斎は、既に「六ヵ国協議」の着地点は、見えているのであろうと思う。北朝鮮の選択肢は。結局、二つしかないのである。
 ① 「過大な要求に固執して、オール・オア・ナッシングの状態に追い込む」。
 ② 「結局、過大な要求を取り下げて、着実に手に出来る支援を得る」。
 常識的に考えれば、②で片が付くはずである。ただし、これは、雪斎が金正日の補佐官ならば、そのように進言するであろうという話であって、実際の「独裁者」の頭の中など判るはずもない。
 とにかくにも、米国は、北朝鮮に宥和的な顔を示したことだけが強調されるけれども、F22の嘉手納配備という強烈な対応も採っている。国際政治は、「暴力による恫喝」、「利益による誘導」、「言葉による説得」の総合芸術である。

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Comments

こんばんは。
「"支援"なんて選択肢は、日本国内世論的にのめない選択肢だよなぁ」と、素朴な感想を持っています。
今回の交渉で本当に「決まるんだろうか」と思います。案外、「無期限で休会」なんて可能性(互いに問題先送りに過ぎませんが)はないのでしょうか?

F-22>
「矛」のF-22だけでなく、「楯」のMDもお忘れなく。開発・配備が加速すると良いですね。

Posted by: やすゆき | February 11, 2007 at 11:01 PM

 金正日が中国に亡命して権力の座から降りる事が、各国にとって一番綺麗な解決方法になると思われます。

Posted by: ささらい | February 11, 2007 at 11:40 PM

F22は嘉手納への配備が2回にわたって延期されてますが、これは単なる運用上の問題なのか、それとも六ヶ国協議とリンクしているのか、どっちなんでしょうね?

Posted by: Baatarism | February 12, 2007 at 12:44 PM

こんにちは。
私は、以前勝手にTBしたminow175です。
TBした時、実は私、雪斎様のブログの表面を少し読んだだけで、TBいたしまして。その後、貴殿のただならぬ文章を拝読するにつけ、もう一度よく確認いたしましたら、「北朝鮮制裁論の愚―『暴朝膺懲』の錯誤に陥らないために」『論座』(2005年5月号)の執筆者様だということが分かり、大変、驚いた次第であります。現在、『暴朝膺懲』論押され、北朝鮮問題を、冷静かつラディカルに論じる保守派論客が少ない中での貴殿の言論は、私にとって大変新鮮なものがあり、注目しているところでございました。今後とも御活躍を祈りつつ、まずは最初のコメントにしたいと思います。

Posted by: minow175 | February 12, 2007 at 02:06 PM

雪斎さん

こんばんは
TBさせて頂きました。すいません。

私もかなり、ごねている印象を受けました。
従来ならば、小出し、小出しにして、大きな譲歩をしたようにみせるのが、北朝鮮の外交手法だと思っていましたから。

恐らく、ベルリンでの米朝2国間協議における、誤解か、予想が外れたのでしょう。又、関係5カ国との調整もありますから。

北朝鮮にとって、ここらあたりが、まさに、着地点で、これ以上は、マイナスにしかならないんですが。。。

国際政治のエッセンスを「パワーをめぐる闘争」とすれば、、「暴力による恫喝」、「利益による誘導」、「言葉による説得」という総合芸術は、その手段になるでしょうか。

Posted by: forrestal | February 12, 2007 at 10:01 PM

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