« 安倍晋三総理の三題噺 | Main | 福澤諭吉の言葉・続 »

January 24, 2007

「華麗なる一族」の虚実

■  『華麗なる一族』を観る。といっても、現在、放映中のドラマ版ではなく、1974年制作の映画版のことである。配役以下の通りである。2007年版と比べる。

1974年板            2007年版
佐分利信     万俵大介   北大路欣也
月丘夢路     万俵寧子   原田美枝子 
仲代達矢     万俵鉄平   木村拓也
山本陽子     万俵早苗   長谷川京子 
目黒祐樹     万俵銀平   山本耕史
中山麻理     万俵万樹子  山田優 
酒井和歌子    万俵二子    相武紗季
田宮二郎     美馬中    仲村トオル
香川京子     美馬一子   吹石一恵
京マチ子      高須相子   鈴木京香 

 要するに、神戸の新興金融財閥の当主が、政官財の各界に張った「閨閥」のネットワークによって自分の銀行を護ろうとしたという話である。中核が、「銀行」と「鉄鋼会社」なので、「結局、今も昔も銀行と鉄鋼なのか…」と、銀行株と鉄鋼株のホルダーである雪斎は、思わずニヤリとしている。

 

 戦後、内閣総理大臣に登りつめた政治家は、田中角栄までは、その程度の差はあれ、学閥、門閥、閨閥のネットワークの中に組み込まれていた。吉田茂が大久保利通の孫娘を娶って、娘を九州の麻生財閥に嫁がせていたのは、周知の事実である。池田勇人は、娘を官僚と金融の世界の人物に嫁がせていたはずである。岸信介・佐藤栄作兄弟に至っては、鮎川義介との関係は書くまでもないであろう。要するに、往時の政治家にとっては、「娘を誰に嫁がせるか。誰のところから嫁をもらうか」は、自分の影響力拡大のためにも極めて政治的な関心事であった。それは、野心を持つ官僚にとっても、そうであったし、ビジネスに際して許認可権限を気にしていた実業家にとっても、そうであった。俗に、「政官財の癒着」と呼ばれるものは、往時の日本にとっては「ありふれた話」であった。『華麗なる一族』は、そうした構図を戯画的に描き出した作品である。そして、メガホンを取ったのが、共産党シンパとされた山本薩夫監督だから、そうした「欲に汚い資本主義」に対する視線も厳しいわけである。
 映画制作時の1974年は、「華麗なる一族」を持ち得なかった田中角栄の執政期である。何とも皮肉な話である。因みに、田中の後に「クリーン三木」を標榜して総理大臣になった三木武夫は、その妻が戦前の大財閥であった森コンツェルンの出身であり、「華麗なる一族」に連なっていた。政治の世界で「奇麗事」を口にするにも、ちゃんとした「裏付け」が要るのである。
 今、放映されている「2007年テレビ版」は、万俵鉄平役で木村拓哉さんが演じていることを除けば、当代の最高水準を目指したという印象はある。この配役では、「大河ドラマ」も作れる。実際、木村さんを除く俳優陣は、「大河」に重要な役どころで出演したことのある人々である。どうも、木村さんだけが「浮いている」印象がある。仲代達矢さんが演じたものと同じ役柄を演じる木村さんには、同情はするけれども…。
 ただし、「2007年版」では、どんなに頑張ったとところで、「昭和のギラギラ感」は、伝わってこない。「1974年版」には、前半に佐分利信・大介と京マチ子・相子による「情事」のシーンが一瞬だけあるのであるけれども、ちょっと怖いシーンではある。「2007年版」は、どんなに特殊技術を使って往時の町並みを再現したところで、全体が「デオドラント」化されてしまっているから、この「情事」が象徴する「権力と富と欲」の「おぞましさ」は、伝わってこないのである。「権力と富と欲」が主要なモチーフの作品には、こういう「デオドラント」化は、「ちょっとなあ…」と思うのだけれども…。
 ところで、「不二家」の藤井一族による支配は、突如、終わったようである。宮崎県知事選挙の結果が示すように、「官僚出身」も、もはや「政界行きのパスポート」ではない。「昭和も遠くなりにけり…」なのか。


|

« 安倍晋三総理の三題噺 | Main | 福澤諭吉の言葉・続 »

「学者生活」カテゴリの記事

Comments

閨閥について思うこと

政治家、官僚、あらゆる業界そして天皇家にまで張り巡らされた蜘蛛の巣のような閨閥や人事の連結網、いわゆるスーパーゼネコンで会社人生を終わった小生も、そのほんの一部しか知らないのでしょう。

狭い国土の日本では6千万位の人口が適切であるというのに、少子化に歯止めを掛けようという意見ばかりがメディアを賑わせ、「今後、毎年1%の人口減を70年間続け、徐々に人口を半減させよう」などという意見は見たことがありません。蜘蛛の巣につながっている人達から見ると、身も心も会社に捧げてサービス残業に励む一般庶民が半減してしまえば、彼らの豊かな王国が縮小してしまうからでしょう。

随分昔から指摘されていた建設業界の談合など、無くならないのが当たり前で、それを取り締まる立場にある公正取引委員会にゼネコン一族の御曹司が名を連ねていたりします。今の時代、パソコンを使って談合も不適切な安値入札も排除できる入札方式を作ることなど決して難しいことではないのです。中央、地方官庁の各調達部門と業者、更には、おそらくですが、談合を弾劾しているメディアの上層部にまで蜘蛛の巣は張り巡らされていてそれを妨げているのでしょう。

「赤い盾‐全4巻」や「地球のゆくえ」といった労作を集英社から世に出された広瀬隆氏にでも頑張っていただいて、こうした蜘蛛の巣を徹底的に解明し、インターネット上で検索が出来るようにでもしていただければ、蜘蛛の巣メンバーもさぞかし悪事がやりにくくなり、その効果たるや、フランス革命前の啓蒙運動に匹敵することでしょう。

Posted by: 赤堀篤良 | January 24, 2007 at 01:38 PM

成り上がりの三代目くらいは一番むつかしいですね 三井住友鴻池あたりを除いて 明治以来 時流による財閥の誕生は上流階級の血による クレンジングをへて 盛衰の歴史をきざんでいます 所詮は民のかまどの故事のごとく 国民大衆に支えられての 財であり権力というのを 逆に婚姻によって自覚する資産家もおおいのです 御曹司というのは おごる平氏久しからず のしゃれですかね 大経営のデオドラント化がすすみ サラリーマン経営者しか持たない旧財閥も多く 戦後成金の子弟はキムタク系が増えてます 丁度永田町のように
ドラマなので柳葉さん演ずる日銀天下りは 通産か興銀だろとか 料亭のつくりや所作が以前はもっと身分秩序があったなとか微妙な点はいただけないかも
原作の欠陥なのですが 公家の出の正妻の描写は 平民出身の作家の想像力では無理だったのでしょうか 現物は全然したたかで陰謀家か多く 高慢 慇懃無礼で旦那が太刀打ちできないタイプが多いです
西田さんの政治家はいいですね ああいうのが欲しいです

Posted by: Ld.Ryu | January 24, 2007 at 03:42 PM

>狭い国土の日本では6千万位の人口が適切であるというのに、少子化に歯止めを掛けようという意見ばかりがメディアを賑わせ、「今後、毎年1%の人口減を70年間続け、徐々に人口を半減させよう」などという意見は見たことがありません
確かにそれは正しいのかもしれませんが、仮にそのような施策がとられるとしても、その苦しみは一般庶民に押し付けられ、力を持った「閨閥」が身を守ることになるでしょうね。その不満で倒されることもないでしょうし。

Posted by: koge | January 24, 2007 at 04:08 PM

国土の大きさに対する「適正人口」などという話はどこの話でしょうか?学術的根拠はあるのでしょうか?また適正であるか否かを判断する基準は何でしょうか?
私は地方都市在住ですが、住宅地にできそうな土地なんていくらでもありますよ。
田んぼや畑のまま放置されているだけの話であって。

Posted by: 犬 | January 24, 2007 at 11:05 PM

 NY在住なので、日本の友人が送ってくれた第四話まで一気に見ました。いやあ、、マア、今の時代、あんまり格のない俳優さんが多少混じっていても仕方のないことですが、それにしても、「キムタク」ひどすぎます。私、この方、結構演技派と思っていましたが、幻想だったのでしょうか? はっきり言って、もはや彼を主役に使っては、いい作品は無理ですね。すべて、鼻につきます。視聴率は取れても、作品全体の重厚さ、華麗さを下げているのは他ならぬ「キムタク」本人です。
 幼い時に見たこのドラマ、、かすかに覚えていますが、その時「鉄平」は加山雄三さんでした。彼は見るからに御曹司でした。サラブレットでありながら、その中に見え隠れする弱さのようなものを感じさせてくれました。キムタクには、品のかけらも御曹司の持つ風格もはかなさも感じられず、、、もっとちゃんとやってよ。。と思います。いい意味で、私たち視聴者を騙して欲しいですね。それができないんなら、役者はやめて欲しいですね。
 PS,鈴木京香さんのあの憎憎しい態度、もう殺してやりたいほどです。

Posted by: 沙耶野 | February 15, 2007 at 01:35 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/13638366

Listed below are links to weblogs that reference 「華麗なる一族」の虚実:

» 安田万樹子(山田優) [華麗なる一族 ナビ]
木村拓哉主演ドラマ「華麗なる一族」を紹介します。 [Read More]

Tracked on January 24, 2007 at 09:45 PM

» 華麗なる一族 木村拓哉 [華麗なる一族 木村拓哉]
TBSドラマ「華麗なる一族」について、また主役の木村拓哉、他出演者などの情報をファン目線で紹介していきます。関係する裏話も!華麗なる一族のあらすじ・ネタバレ・最終回・結末・予告・視聴率・キャスト・再放送・感想・レビュー・批評・評価も。華麗なる一族の主題歌・挿入歌・CD・音楽(サウンドトラック)・曲・DVDの視聴や試聴。華麗なる一族のロケ地・撮影場所・イラスト・写真などは、公式ホームページやオフィシャルウェブサイト、専用サイト・ブログへどうぞ。詳細はWikipedia(ウィキペディア)へ。「華麗なる一... [Read More]

Tracked on April 06, 2007 at 12:52 AM

« 安倍晋三総理の三題噺 | Main | 福澤諭吉の言葉・続 »