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November 03, 2006

「教育再生」にまつわる話

■ 安倍晋三総理が「教育再生」を政策看板として掲げたと思ったら、「高校での必修科目未履修」、「いじめ自殺」という教育絡みの話が出てきている。
 「高校での必修科目未履修」で一番、多いのは、「世界史」だそうである。さもありなんである。ただし、「世界史」は、まともに対応しようとしたら七十時間の授業では、到底、足りない。その十倍はいるはずである。雪斎は、高校時代は、「世界史」、「政治・経済」で共通一次試験を受けたので、この科目に対応するのは、相当な勢力が要ることは判っている。もっとも、雪斎は、少なくとも旧帝国大学を含む中核大学の社会科学系学部志望者には、「世界史」は外せないであろうと思っている。雪斎は、年を取って爺さんになったら、孫を相手に、「昔、ビスマルク、ド・ゴールという偉い人がおってな…」という話をしたいと思うのだが…。おっと、孫よりも先に息子・娘、息子・娘よりも先に、嫁か…(苦笑)。

 さて、「いじめ自殺」の件である。これに関しては、雪斎は、色々と想いがある。雪斎が高校受験の折に、とある私立高校から「不合格処分」を食らったことがある。理由は、「障害を持っているから対応できない」というものであった。今なら、裁判に持ち込めば、「完全勝訴」を得られる事例であろうけれども、当時は、そうした理解は徹底されていなかった。後に、母校となった公立高校に進むことになったので、その私立高校の「入学拒否」が話題になったときには、「ざま見ろ、というところだな」と答えておいた。それは、雪斎における「力」への信仰が芽生えた瞬間である。
 さて、問題は、高校進学後のことである。雪斎は、養護学校から普通高校に進んだので、高校進学の前後で環境が一変した。それは、「白人社会に一人だけ混じった日本人」という風情である。当然、雪斎のことを気に食わないと思っていた連中は、幾らでもいた。「いじめ」の対象になりかけたことはあったけれども、結果としては未然に防いだ。何をしていたのか。
 ① 校内で最も成績のよい奴とつるむ。
 ② 生徒会上層部の連中とつるむ。
 ③ 柔道部の奴を仲間にする。
 ④ 教師の受けはよくして置く。成績その他の部分で「売り物」を用意しておく。当時の雪斎の「売り物」は社会科、特に「地理」「や政治・経済」の成績であった。
 これだけのことを知らず知らずのうちにしていた。その上で、雪斎のことを面白くないと思っていたであろう連中には、「下手に手を出したら報復するぜ」とかましておいた。当時の雪斎は、「日米安保条約」と同じ仕組を構築していたわけである。今にしてみれば、結構、笑える話である。それから、二十年後には、安全保障研究者になってているのだから…。だから、雪斎の安全保障研究は、雪斎自身の「身を護る」という関心と強烈に結び付いている。北海道大学から東京大学へ進んだ学歴も、政治家の「側近」となった職歴も、言論の世界で得た一応の地位も、投資による幾らかの金銭的余裕も、総ては「身を護る」という関心につながっている。だから、雪斎は、「自分の身を護る」ことにも役立たない観念論が、嫌いなのである。
 そういえば、アニメ『タイガーマスク』の挿入歌には、次のような一節がある。
 「強ければ それでいいんだ 力さえ有れば いいんだ ひねくれて 星をにらんだ僕なのさ」。
 雪斎の高校時代の気分の反映である。
 かくして、高校時代から三十歳前後までは、雪斎は、完全な「武闘派」として振る舞った。近年になって「穏健になった…」といわれている。ただし、「根」は変わっていないとは思う。何時までも、極道の世界の「鉄砲玉」として振る舞ってはいけないというだけのことである。
 「いじめ」の話を論じたければ、「力」の現実を教えた方がいい。厳しい話であるけれども、雪斎は、そう思う。

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Comments

なかなか味のある話ですね。小生は高校時代政治・経済は相当できて担任の教師が共通一次でも受けるだろうといわれましたが、日本史世界史を選択。世界に通用するためには世界史を外せないというのも賛同します。

Posted by: 星の王子様 | November 03, 2006 at 05:34 AM

 世界史を先史からずっとではなく、せめて近代国民国家成立以降の歴史だけでも徹底的に教える意義はあると思います。
 五賢帝の名前すべてを覚えられなくて世界史を捨てたこともあったなあ。

 いじめについては、秩序を乱す者(いじめっ子)には力の報復があるというシステムを確立しておく必要はあるかと思います。
 もちろん、それ以前に、いじめられないために何をすべきかを教え、時には一時退却することの大切さも教えることになるでしょう。

Posted by: talleyrand | November 03, 2006 at 06:14 AM

星の王子様殿
 「歴史」というのは、各界指導層の最低限の教養であるはずです。
talleyrand殿
 「世界史」から「近代史」を独立させて教えることは賛成です。
 「近代史」、「現代史」を先に教えて、「その前は、どうだったのか」ということで、古代史や中世史を教えるべきでしょう。
 「いじめ」は、「『力』の不正使用」である。「力」は「自分の身を護る」ためにある・こういうjことは、はっきりさせるべきでしょうね。

Posted by: 雪斎 | November 03, 2006 at 07:02 AM

世界史を近・現代史から教えるのと同時に平行して日本近・現代史も教えていくべきだと思います。
「いじめ」に関して、雪斎どのの処世術感心いたしました。子供たちに生きていく力・方法を仕込んでおくというのは大切なことですね。私は団塊の世代ではありますが、のんびりした地方でウドのごとく育ったものですから、いじめられたとかいじめたとかの記憶が無いんです。子供たちが伸び伸びストレスなく生きる時代になって欲しいと思う。

Posted by: 笛吹働爺 | November 03, 2006 at 07:29 AM

世界史・日本史は、特に好きでしたね。特に、その時代、時代の人々や、為政者が何を考え、なぜそうしたのか、結果、どうなったのか、いくつものパースペクティヴから、考えるのが好きでしたし、それは、今でも変わりません。

力というものは、現実的に実感しなければ、なかなかわからないものです。ゲーム・PC世代の子供達には、自分もですが、バーチャルな感覚が、現実に反映してしまうようです。この御時世、避けては通れない問題ですが、PCをしている自分を意識して、距離を置く。これ以外には、今のところいい方法がみつかりません。

Posted by: あいけんべりー | November 03, 2006 at 11:09 AM

近代史以降を重点的に教えるってのは、要するに世界史Aのことですね。世界史が必修になった一方で、中学の「歴史」は、それに対応する形で、日本史(とそこに関係する限りでの世界史)部分が大幅に増えました。

これに、地理が網羅主義を放棄したことが重なって、世界史に対する予備知識が大幅に減ってしまい、世界史敬遠の風潮がさらに強まるという悪循環が起こってしまいました。

Posted by: 中山 | November 04, 2006 at 02:57 PM

例の未履修問題もそもそもどうして表沙汰になったのかと言えば、教育基本法改正を阻止したい一部勢力のリークだったのではないか、と邪推します。

Posted by: bystander | November 04, 2006 at 03:47 PM

今朝の「めざましどようび」で
何人かのゲストを招き、テレビでありがちな「いじめ問題を考える」といった感じの企画を放送していました。

ずっといじめられてきたけど
高校生になってダイエットしてまず外見を変えて
まわりと少しずつ言葉を交わすようになり、コミュニケーションを再学習し、自分が変わっていくことで周りの認識も変えていった青年がVTR出演している一方で、
一人娘がいじめを苦に自殺したことが切っ掛けでNPOを立ち上げた女性(NPO法人「ジェントルハートプロジェクト」小森美登里氏)は、「いじめられる要素みたいなものだって、その子どもの個性なんです。それを変えていく必要なんて、ないんです」と訴える。

いつもいつも、こういう堂々巡りばかりですよね、マスコミは。

個人的には、弱いままでは生きていけないと思うから
いじめを切っ掛けにして、自分を強くしていこう、と考えるほうが
性に合ってる気がしますけど。
「それも個性だ」なんて言われると、辛くなってしまいます。

Posted by: るびい | November 04, 2006 at 05:41 PM

弱い立場にある者にも戦い方というものがあって、そこで培われた力に対する知恵というものは、世の中に出たときに、大きな力になるのかもしれないですね。
自分よりも強大な存在は、ごろごろしているわけです。
この点、付和雷同的なその他大勢の人たちは、せいぜい、事なかれ主義の大人にしかなれないのでしょうけれども。
私の場合の対処法は、今にして思うと北朝鮮方式でした。
誰にも勧められないですね・・・。

Posted by: 西田瓜太郎 | November 04, 2006 at 11:18 PM

皆さん、ありがとうございます。
 この件、もう少し別のものを書いてみたいと思います。

Posted by: 雪斎 | November 04, 2006 at 11:44 PM

政治や社会がこれだけ大騒ぎしていながら、
ならば、公教育に対しての予算やインセンティブを増やそうと
言う意見がほとんど無いですな。

正直、イジメ問題でも一クラス15人の複数担任制と
小学校からの教科専任教師の導入とか、学年毎の
到達レベル計測の全国認定試験とか、を導入すれば
劇的に改善すると思いますが。

リスクを現場教師(学校)と、子供と家庭に押しつけたままだと
何も変わらず、公教育と私立教育の格差は広がり、子供を作る
デメリットは拡大を続け、そのうち破綻するでしょう。
前原レポート(だったかな?)を無視し続けた結果のように。

私は多分終生独身でしょうから、あんまり関係ありませんが。

Posted by: TOR | November 05, 2006 at 03:14 PM

本題とは全く違う話ですが、
ダライラマの来日が全然ニュースにのらないのは何故なのでしょうか?

Posted by: 笛吹働爺 | November 05, 2006 at 11:34 PM

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