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November 10, 2006

「ネオコン」の退場

■ 昨日午前6時、ドナルド・ラムズフェルド辞任の方が流れた。
 一昨日の中間選挙の結果よりも、こちらのほうが、ちょっとした驚きであった。
 ラムズフェルドのような「ネオコン」を嫌ったジョージ・F・ケナンが存命であったならば、「やっと出て行く気になったか…」とでも言ったかもしれない。
 ケナンは、18世紀初頭、殖民地時代にスコットランドから来た「最も古い部類に属する米国人」の末裔である。ケナンは、そうしたことに誇りを持っていたので、「ネオ・コン」を「コン」するのには納得しなかったであろう。ケナンにとっては、植民地時代の「貧しいアメリカ」の中で育まれた廉直、質朴、謙虚という価値観こそが、大事にされるべきものであった。だから、ケナンは、自動車が嫌いで、齢八十を過ぎてもプリンストン大学構内で自転車を乗りまわしていた。
 ジョージ・W・ブッシュ自身も「コン」であっても「ネオコン」ではない。ブッシュの父親、祖父、曽祖父の足跡に触れてみると、そうしたことが判る。ブッシュ43代現大統領は、テキサス・ボーイの印象があるけれども、実際には「東部エスタブリッシュメント」の一員なのである。
 43代現大統領にとっての祖父、41代元大統領にとっての父親であるプレスコット・S・ブッシュというのも、興味深い人物である。プレスコットは、イェール大学時代にローランド・ハリマンと交友関係を持った。ローランド・ハリマンは、日露戦争後の「ハリマン提案」で知られるエドワード・ハリマンの息子、フランクリン・D・ローズヴェルト政権期に大統領顧問をを務めたアヴェレル・ハリマンの実弟である。プレスコットが大学に入った頃、世は第一次世界大戦の時期であり、プレスコットの父親であるサミュエル・ブッシュは、パーシー・ロックフェラー(ナショナル・シティ・バンク社主)やその腹心であるサミュエル・プライヤー(レミントン社CEO)が設立した軍需物資供給組織に関わり、「戦争産業委員会資材供給部門」を統括した。そして、自らは、オハイオで鉄道部品会社を経営したのである。
 プレスコットは、後にユニオン・バンキング・コーポレーションのような投資銀行を初めとする数々の会社の経営に携わり、コネチカット州から上院議員に選出された。
 金融、石油、武器、鉄道に関わるビジネスは、米国の産業の「核」である。ブッシュ家四代の足跡には、このビジネスのネットワークが複雑に絡み合っている。こういうネットワークの中では、政党の違いは余り問題にならないことが多いのである。
 だから、43代現大統領にとっては、民主党との「妥協」などは全然、苦でもないであろう。ブッシュは、相当に「柔軟」な対応をやるような気がする。「極論」派は、最後の最後には、結局は捨てられる。それは、古今東西、政治の世界の「準則」である。

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「国際情勢」カテゴリの記事

Comments

ラムズフェルドさんはネオ・コンというよりウォー・ホークですな。

>プレスコットは、後にユニオン・バンキング・コーポレーションのような投資銀行を初めとする数々の会社の経営に携わり、コネチカット州から上院議員に選出された。<

プレスコット.ブッシュ上院議員は、50年代のマッカーシズムに対するもっとも手厳しい批判者でもありました。ブッシュ家の血筋には現実感覚と政治的柔軟性はたっぷりありそう。そこが救いか。

Posted by: M.N.生 | November 10, 2006 at 10:00 AM

雪斎さん

何度もTBさせて頂いてすいません。

ラムズフェルドの辞任、また、大統領の指名した、後任のゲーツ氏は、民主党にも顔の利く人物ですし、民主党、下院議長になる、ナンシー・ペロシに、早速、電話で、挨拶もすませたそうです。この2年、あまり、目新しい、目だった動きは、ないと思いますが、極端に言えば、G.W.ブッシュでも変わる(強硬策からの軟化)、民主党でも変わらない(大きな政策変更のない)、妥協といえば、それまでですが、そんな2年になる気がしてます。

Posted by: あいけんべりー | November 10, 2006 at 06:20 PM

追伸:

確かにブッシュが豹変する可能性は、ありますし、これまでのような強硬なスタンスでは、進まない蓋然性は、高いと思います。

日本は、様々な想定をして、シュミレートして、対応策を講じておく必要がありますね。

北朝鮮絡みで言えば、アメリカの進めるPSI構想は、核不拡散が目的ですから、北の核保有自体は、米国の直接の脅威にはならないわけです。(もちろん、拡散の可能性がある限り、脅威にはなりますが)、一方、日本は、拡散もさることながら、日本自身が、北朝鮮の核の直接の脅威を受けます。米国と日本では、脅威の認識レベル、国益レベルに差がでますから、G.W.ブッシュが豹変して、日米の協調路線が弱まる場合などは、充分に想定しておかなければいけませんね

Posted by: あいけんべりー | November 10, 2006 at 06:36 PM

なるほど。となると、アメリカ民主党内の上にいる左巻き(通常リベラルといわれるようですが)グループが、浮いてしまう可能性がある訳ですな。
この辺を党内でしっかりやっておかないと、次のアメリカ大統領も共和党員になってしまいそうですね。

Posted by: おおみや%来年度はまた期限付き君 | November 10, 2006 at 11:06 PM

MN生殿
三代もワシントンにいれば、「判る」と思うのですよ。
あいけんべりー殿
日本の対朝強硬姿勢は、「ブッシュ恃み」なのです。この前提が崩れるとすれば、いろいろなことを考える必要があると思います。
おおみや殿
民主党は、「何故、民主党でなければならないか」をまだ、説明できていないのですな。

Posted by: 雪斎 | November 13, 2006 at 07:56 AM

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