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October 10, 2006

東アジアは燃えているか。

■ 昨日午前、北朝鮮が地下核実験を実行した。別段、驚きはない。
 ただし、今まで、「核」や「ミサイル」のカードを小出しにしてきた北朝鮮政府が、この段階で「核実験」という「最終カード」を切ったことの意味を考えなければならない。今後の情勢の推移によっても、「核放棄」というマイナスのカードしか使えなくなった北朝鮮には、もはや切れるカードは多くない。
 多分、北朝鮮政府に核実験実行を決意させたのは、日中接近という客観情勢の浮上の故であろう。要するに、安倍総理は、今まで実質的に「抵当」に入れていた対中関係を実際に使える道具にした。北朝鮮の「ストーカー行為」の対象は米国であるというのが専らの評であるけれども、此度の地下核実験に関する限り、「中国へのあてつけ」であろう。そして、対中関係を activateさせるためには、歴史認識の案件は実質的に封印した。それは、確かに大事なことである。雪斎の安倍総理への懸念は、相当程度、減殺された。

 日本にとっては、北朝鮮情勢は、キューバ危機の対応と似たものになるであろう。キューバ危機の折、ジョン・F・ケネディ麾下の米国政府が目指したのは、「ミサイル撤去」であった。日本政府の方針も、「核撤去」である。「既に現実に存在する脅威」を具体的にどのように除去するかが課題になっているのである。前に、タカ、ハト。フクロウの三類型を紹介した。この類型で考えてみる。

 ◇ キューバ危機の事例   
タカ    キューバ空爆を主張
       ・テーラー統合参謀本部議長
ハト    ミサイルの相互撤去を模索
       ・スティーブンソン国連大使
フクロウ 海上封鎖を考慮
       ・ マクナマラ国防長官
       ・ バンディ補佐官
 ◇ 北朝鮮危機の事例
タカ    武力行使による核施設の破壊
       ・これができるのは、実質上、米国一国。
ハト    援助や経済交流による「宥和」
       ・国内の反発は必定。
フクロウ  「水攻め」の徹底
       ・「抜け穴」をできるだけふさぐ必要があるl。

 日本政府が取ろうとしているのは、「フクロウ」の「水攻め」である。安倍総理は、中国や韓国が抜け穴」にならないように、色々な手を打つのであろう。これからも、当分、「待ち」の戦術が続くということであろう。

■ 午後、東京・丸の内で開かれていた「朝日新書」発刊記念シンポジウムに加わる。朝日新聞社は、この十月に新書を出すのである。パネリストは、星浩、齋藤孝、姜尚中、保阪正康の各氏である。帰り際に姜教授に挨拶させてもらったけれども、姜教授が女性客に取り囲まれて著書にサインをしていたのには、驚いた。
 ところで、何故、雪斎が「朝日新書」のシンポジウムに顔を出したのか。ただ今、雪斎が執筆を進めている書は、「朝日新書」から出るのである。題材は、安全保障であり、思いっきり雪斎テイストを充満させたものになるはずである。四百字詰原稿用紙三百数十枚分の半分程度が既に出来上がっている。著書の執筆は、マラソンとで同じ
で「折り返し点」を過ぎてからが難渋する。

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Comments

 待ってました!、雪斎さん。中韓との首脳会談が近づいても特に更新が無かったのは執筆が忙しかったからでしょうか。雪斎さんの解説心待ちにしておりました。
 以前のエントリーで新総理は「北京からワシントンへ飛ぶくらいでないと」とおっしゃってましたが、安倍首相はそれに近い事をやってのけたのではないでしょうか?。でも、これからが真の腕の見せ所ですね。安倍ー麻生ラインに期待です。

Posted by: ささらい | October 10, 2006 at 03:30 AM

・ささらいどの
お待たせ(笑)
ここから一気にワシントンに乗り込んでくれないかなと思います。
中国訪問は上出来でしょう。これで、色々な手が打てます。

Posted by: 雪斎 | October 10, 2006 at 03:50 AM

明快ですね。安倍首相への懸念は私も相当減殺されました。教育問題についてはまだ懸念してますが。

一方で、北朝鮮問題については、方針・目的についてもハト・タカ・フクロウに違いがあろうかと思います。個人的には、ハトとタカは見当がつきやすいのですが、フクロウが難しい。いずれ見解を披露して頂ければと期待しています。

Posted by: 中山 | October 10, 2006 at 04:49 AM

フクロウ策ですが、韓国(というかに盧武鉉大統領)に対しては宥和政策の停止と北主導の統一工作に乗らないこと、中国には制裁を受け入れさせることが重要となりますね。
あと、中韓両国には、北朝鮮が崩壊して難民が押し寄せた場合に、日米がきちんと対応に協力することを確約しておいた方が良いでしょうね。これを制裁を飲ませる取引条件にしても良いかもしれません。
北の戦略の基本は核とミサイルと難民による周辺諸国への恫喝ですから、せめて難民だけでも無力化しておきたいところです。

Posted by: Baatarism | October 10, 2006 at 10:18 AM

こんにちは
>「北京からワシントンへ飛ぶくらいでないと」
雪斎殿のおっしゃるとおりの動きですね。正直言いまして、驚いております。今回は中国側の焦りを感じました。
ただあまりにも首相の相場が上がるような出来事ばかりで・・私ら野次馬的日本人としては、ただポカンとしております。
新刊、期待しております!!

Posted by: SAKAKI | October 10, 2006 at 12:21 PM

雪斎さん、こんにちは。現在、昼休みですw

TBさせて頂きました。すいません。

ご指摘の通り、北の切れるカードは、もうマイナス・カードしかありません。核廃棄によって、中韓がどれだけの援助をするのかわかりませんが、これも、ほぼ、できない状況です。国際社会(特にアメリカ)との整合性に反する行為は、中韓ともに、デメリットですから。

キューバミサイル危機に関しては、皮肉なことに、ケネディーフルシチョフの間にホットラインがひかれました。
これを契機に日中のホットラインが構築するとよいのですが。

日米に関しては、北朝鮮崩壊のシナリオ・情報・作戦・計画・基地の共有が必要です。韓国に関しては、経済援助がカードになりますし、中国に関しては、難民の引き受けなどがカードになります。(中国は、多分に自国に国連を入れたくないでしょうから)。

日本単独に関しては、関係諸国への上記のようなカードのカード化とともに、難民対策、自国の防衛、米軍の支援などへの備えが必要ですね。

話題は、変わりますが、姜尚中氏のソフトな語り口、藤原帰一氏のスマートさは、抜群の女性受けです。私も大学に講演に来ていただいた折には、女子学生の多さに驚きましたw

新刊の方は、無理なく、頑張ってください。楽しみにしております。

Posted by: あいけんべりー | October 10, 2006 at 12:57 PM

安倍さんは理念優先の政治家だと思っていましたが、首相の座に付いてみると現実を優先してますね。なんというか、しなやかな方だと言う印象を受けました。悪く言えば狸親父と言うことなんでしょうが、小泉さんの後を託すにはもってこいの人物なのかも知れませんね。小泉さんと似たところがあるから後任として支持されたのかなと思っていましたが、むしろ違っているからこそ小泉さんは安倍さんを気に入っていたのだなと思いました。

Posted by: bn2islander | October 10, 2006 at 11:01 PM

はじめまして。いつも興味深く拝見させていただいております。
一つチェックをお願いしたいのですが、このサイトのフィードの設定データがおかしいようで、このブログの更新情報をRSSリーダーで上手く取得できません。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

Posted by: せー00じ | October 11, 2006 at 03:37 PM

RSSが使えるようになったみたいですね。
これで新規記事のチェックが楽になります。
ありがとうございました。

Posted by: Baatarism | October 12, 2006 at 09:41 AM

わたしもチェックできるようになりました。
対応ありがとうございました。

Posted by: せー00じ | October 13, 2006 at 12:29 AM

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