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October 31, 2006

嗚呼、「核」論議

■ 昨日、『産経新聞』「正論」欄に、「核論議における『無粋』と『洗練』 再論」という原稿を載せた。「再論」と断ったのだから、同じ題名の「初論」がある。雪斎は、「正論」欄では幾度も「核」を論じている。
 ① 核論議における「成熟」と「未熟」  1999年10月26日
 ② 「核」論議における「洗練」と「無粋」  2002年6月5日
 ③ 「核」論議における「洗練」と「無粋」 再論
 産経新聞のサイトには、既に「再論」の、全文が掲載されている。

 ①、②を読んでから、③を読んでみれば、雪斎は、この八年近く、同じことを書いていたのだと確認する。。雪斎が11年前に言論活動を始めた折、最初に書いたのが、「『唯一の被爆国』という自閉」というタイトルの論稿であった。「唯一の被爆国」という立場を強調することは、「核」に関して何らかの特権的な「道徳の高み」に立って物事を語れるかのような錯覚を日本国民に与え、結果として「核」に関するリアルな議論を成り立たなくさせている。こういう趣旨の議論であった。それは雑誌『諸君』に載った。その頃、戦後平和主義の最たる拠りどころである「唯一の被爆国」感情を批判した雪斎は、確かに「保守論客」であった。
 因みに、この論稿は、高坂正堯先生に読んで頂いた。丁度十年前の3月12日付消印で返書を頂いた。高坂先生は、その二ヵ月後、他界された。高坂先生の返書に何と書かれていたかは、私信なので、ここでは書けない。ただ一つだけいえることは、この返書を頂いた瞬間に、雪斎は、高坂先生の「弟子」になれたような気分になったということである。
 「核」の意味を考える際に雪斎が影響を受けているのは、ジョージ・F・ケナンの「核戦略」批判である。これは、『核の迷妄』という書に触れてみれば、どのようなものかが判る。要するに、「核」は外交を硬直させるという批判なのである。高坂先生も、ケナンに近い発想を持っておられたので、この認識は共通のものがあったと推測する。
 十年、雪斎は「核」を論じている。世は、余り変わっていない。

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「国際情勢」カテゴリの記事

Comments

雪斎さん
私は素人なので、専門的なことは知らず、貴論文のように先行文献を引用しての緻密な論理展開に敬服する者ですが、素人の感覚としても、お説はごく妥当で説得性があると思います。
わが国の場合、まずは戦後のねじれた安全保障と教育の環境から生じた、安全保障に対する心理的歪みを可及的速やかに是正することが必要です。

Posted by: 珈琲 | October 31, 2006 at 08:39 AM

私は、日本が核武装論議をする上で考えなければならない前提条件として、長期的にアメリカが衰退していく中で アメリカの覇権がいつまで持つか、つまり核の傘を日本に対して いつまで維持することができるか?と言う危惧と、その仮定に対する新たな安全保障の構築を 踏まえる事だと考えます。

あれだけ、国家財政に赤字を抱えているアメリカが、いつまでも現在の軍備を維持し続ける 政権が続くでしょうか?
何年後とは言いませんが、何十年後に必ず起こる「アメリカの覇権の縮小」に対して 、今から、規模は中規模でもフルセットを揃えた軍備と独自の安全保障を為し得るだけの 軍事体制構築を想定した長期プランの前提となる研究を始める必要があるのではないでしょうか?

日本と同様、海洋国家であるイギリスですが、外交力と伴わせて、空母と原潜と独自の核兵力を維持しています。
海洋国家の軍隊の機能が「通商路の安全と維持」を目的とする以上、 日本も、規模はともかく、フルセットの軍備と有事にはそれらを使用できる法整備と 覚悟の為に、今のうちから議論をしておく必要があるかと愚考します。

Posted by: TOR | October 31, 2006 at 07:31 PM

雪殿さん

TBさせていただきました。すいません。

核に関しては、論点を明確にし、法的問題をクリアにする政治指導、外交・軍事戦略における核の位置づけ、非難や警戒を弱める文化戦略が国民のコンセンサスのもと、必要なのは、言うまでもないですが、いづれ配備されるだろう、アメリカの原潜や空母も含めての日本の原潜・空母の配備についてや、非核3原則、憲法改正など、切り離さずに、ひとつのパーケージとして(議論は、各々、別ですが)扱うなら、扱った方がいいのではないかと考えます。もちろん、リスク・コストもシュミレートしなければいけませんが。なんだか、核兵器だけが、浮いてる感じですね。

Posted by: あいけんべりー | October 31, 2006 at 08:28 PM

すいません、上記のお名前の斎を間違えてしまいました。

雪斎さん、すいません^^ 

Posted by: あいけんべりー | October 31, 2006 at 09:35 PM

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